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『中村光先生』 その1

今回のまんがのチカラは、この4月よりめでたく月刊化が決定したモーニング増刊『モーニング・ツー』誌上で、『聖☆おにいさん』(セイント☆おにいさん)を好評連載中の中村光先生にお越しいただきました。詳しい人は思わずニヤリ、そうでない人もクスリとしてしまう、不思議な魅力が満載の“ぬくぬくコメディ”が、どのようにして生まれたのかなど、ここでしか聞けない話が満載です!!

『中村光先生』 その2>>

始まりはモーニングから中村先生への熱烈コール

――まずは中村先生がモーニング・ツーで『聖☆おにいさん』を連載することになった経緯を教えてください。

聖☆おにいさん

中村:ヤングガンガン(スクウェア・エニックス)で連載している『荒川アンダーザブリッジ』を読んで、モーニング・ツーの編集さんが声をかけてくださったんですよ。昔からモーニングを愛読していたので、とても光栄でしたね。

――さて、ここにその担当編集さんがいらっしゃるのですが、担当編集さんは、中村先生のどういうところに惹かれてお声をかけたんでしょう?

荒川アンダーザブリッジ

担当編集:『荒川アンダーザブリッジ』がとても面白かったからです。具体的にどこが面白かったのかを、本人の前で言うのは難しいんですが(笑)、なにかすごく伸びそうな感じがしたんですよ。突き抜けそうなものを感じたんです。

――それは、ギャグの切れ味が鋭いとかそういうことですか?

担当編集:いえ、ギャグだけではなく、まんが全体から化けそうな感じがしたんです。

中村:それ、初めて聞きました(笑)。

――ちなみにそれはいつ頃の話なんですか?

中村:モーニング・ツー創刊の少し前ですから、2年くらい前の春だったと思います。

担当編集:当時、まだモーニング・ツー(2006年8月10日創刊)はなかったんですが、すでにモーニングとは毛色の違う増刊号を出そうという話はあったんです。それで今までモーニングに登場したことのない作家さんを探していました。

――それで中村先生に声をかけたということなんですね。

中村:憧れていた雑誌から声をかけていただいたので、すごくうれしかったですよ。いつか、もう少しキャリアを積んでから載せてもらえたらいいなあ、と妄想していたのが、いきなり実現したわけですから。最近、『聖☆おにいさん』の出張版をモーニング本誌に載せてもらうことがあるんですけど、毎回緊張とうれしさでガチガチになってます(笑)。

――ちなみにモーニング本誌の中では、どんな作品がお好きなんですか?

中村:『ジパング』(かわぐちかいじ先生)ですね。ほかにもたくさん好きな作品がありますが、この作品がモーニングが好きになるきっかけになったので、特に思い入れがあります。

――さて、そこからモーニング・ツー掲載に向けて作品を作り始めることになったと思うのですが、『聖☆おにいさん』は、どういうところから発想されたんですか?

担当編集:まず、我々の方から「男っぽいもの」で、という依頼をしました。一般的にまんがって、どんなに男臭い作品でもヒロインを出せって言われるんですよ。でも、モーニングはそういうのはよそうって方針で作っているんですね。かわぐち先生の『沈黙の艦隊』が、作中にほとんど女性がでてこなかったにも関わらず、大ヒットになったことなどが背景にあるんですが。

��村:私としてはそれはすごくありがたかったんですよ。あんまり恋愛描写は得意でないので(笑)。

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そこで仲の良い男性2人が平和に暮らしているみたいな作品にしようと考えながらラクガキをしていた中に、Tシャツとジーパンをはいたイエス・キリストがいて……あ、これはキャラクターになるんじゃないかって思ったんですよ。ブッダはイエスと同じような悩みを共有できる友達として考えました。

――ある意味でとても問題になりそうな主人公たちですが、特にその辺は考えられなかったんですか?

中村:はじめは全然そういうこと(宗教的問題)に頭が回りませんでしたね。それよりも編集部から面白がってもらえるかの方が不安でした。とりあえず相談せずに4ページ(単行本冒頭掲載分)描き上げて見てもらったんですけど……。

担当編集:いや、普通に面白かったです。でも、作品としてはきわめてデリケートな題材をあつかってることは確かで、もちろん毎回細心の注意を払ってやっています。

――信者の方から意見などはあるんですか?

中村:お手紙はたくさんいただいてます。中には牧師を目指している方とかカトリックの教師の方もいらっしゃいますよ。「学校で生徒に配った」というお手紙をいただいたこともあります。

――学校で配ったって、どんなことに使ってるんでしょうね?(笑)

中村:具体的には聞いていないんですが、キリストやブッダに親しみをもってもらうとか、そういうことのために使った……んですかね。たぶん、小ネタの部分を紹介したんだと思うんですけど。

――過去にもキリストやブッダを描いた作品は多数ありましたが、その中でも特に親しみを感じさせる内容ですよね。ちなみに『聖☆おにいさん』でブッダが手塚治虫先生の『ブッダ』に感動するというシーンがありますが、先生もお好きだったんですか?

中村:『ブッダ』は家のトイレに置いてあったんですよ(笑)。父は陶芸家なんですけど、自宅で瞑想したり、お寺に頼まれて掛け軸に仏様の絵などを描いて奉納する人だったので、そういう本がそこかしこにあったんです。

――そういった家庭環境も『聖☆おにいさん』誕生のバックボーンにありそうですね。

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中村:あると思います。母が言うには、父と、その友人の作家さんとのやりとりが『聖☆おにいさん』の2人にそっくりらしいんです。子ども時代に見ていた光景が深層心理にすり込まれていたんでしょうね。

中村光プロフィール

中村光(なかむらひかる) 1984年、静岡県生まれ

2001年、月刊ガンガンWINGにて17歳で商業誌デビュー。翌年同誌においてショートギャグ連載『中村工房』をスタート。2004年からは掲載誌をヤングガンガンに移し、荒川土手に住まう不思議な住人たちの奇妙な生活を描く『荒川アンダーザブリッジ』を連載開始。2006年からはキリストとブッダを主人公にした最聖コメディ『聖☆おにいさん』(セイント☆おにいさん)をモーニング増刊『モーニング・ツー』で連載開始。新鋭ギャグまんが家として急激に注目を集めつつある。


「まんがのチカラ」次回予告
『荒川アンダーザブリッジ』『聖☆おにいさん』とギャグセンスがキラリと光る中村先生。そんな先生が最初に投稿した作品は意外にもシリアスなストーリーまんがだった・・・!? まさにアートな家庭環境から、デビューへの道のりまでを語っていただいた次回は、2008年5月19日掲載予定! お楽しみに!

2008年05月12日