まんが☆天国 TOP > まんがのチカラ >  『柴田ヨクサル先生』 その1

『柴田ヨクサル先生』 その1

これまでのまんがにはなかった独創的で力強い表現が話題の将棋まんが『ハチワンダイバー』。今回のまんがのチカラには、その作者、柴田ヨクサル先生をお招きしました。地元でも有名な天才将棋少年だったという先生が、なぜまんが家を志したのか? そして、そんな先生が『ハチワンダイバー』に込めた熱い思いを、お届けします!!

『柴田ヨクサル先生』 その2>>

原作者も大満足の
ドラマ版『ハチワンダイバー』

――まずは5月から放映開始されたドラマ化について教えてください。ドラマ化のオファーはいつごろあったんですか?

ハチワンダイバー

柴田:2月くらいにお話をいただいたんですよ。それで、そのままトントン拍子で決まりましたね。時期的にもすごく焦っていたみたいで(笑)。

――確かに、5月放映のドラマで2月に依頼というのは、とても急な話ですね。ちなみに、これまでもドラマ化のオファーはあったんですか?

柴田:ありましたが、実現しませんでした。具体的には『エアマスター』ドラマ化のお話をいただいたことがあります。主人公のマキを、グラビアアイドルが演じるという企画だったんですが、流れちゃいましたね。

だから実は今回もあまり期待していなかったんですよ。あんまり喜びすぎると、流れたときにがっかりしちゃうじゃないですか? 担当さんから「決まりそうだよ」って言われても「ホントですか? ホントですか?」って、とにかく疑ってかかりましたね(笑)。

――最終的に「決定」したのは、いつごろだったんでしょうか?

柴田:3月の中旬くらいだったと思います。プロデューサーの方が、「主演には今年ブレイクする2人を揃えました!」と連絡してきてくださったんですよ。

――主人公・菅田健太郎役の溝端淳平さんと、アキバの受け師こと中静そよ役の仲里依紗さんですね。第一印象はいかがでしたか?

柴田:とにかく仲里依紗さんがかわいかったですね。完璧でした。

――ドラマ化に際して要望をお出しになったりはしたんですか?

shibata0001

柴田:出していません。むしろ好きにやってくださいとお願いしました。ですので、脚本の直しもほとんどしていません。将棋用語に関してチェックしたくらいですね。ただ1つだけ、将棋の“手つき”についてはこだわってもらうよう、お願いしています。

――「将棋」のリアルさを大事にしてほしいということですか?

柴田:そうですね。将棋好きはそこを見ますから。たとえば駒をつまむ手つきがたどたどしいだけで、テンションが下がっちゃうんですよ。

――なるほど。それについては、ヤングジャンプに掲載されたインタビューで文字山ジロー役の劇団ひとりさんが、かなり特訓したと語っていましたね。いかがでしたか?

柴田:きちんと緩急も付けていましたし、とてもしっかりしていましたよ。感心しました。

――脚本はいかがですか? 先生が「好きにやってほしい」とおっしゃられたわりには、かなり原作に忠実な展開になっているようですが……(注:インタビュー時点では第5話まで放映済みでした)。

柴田:そうですね。でも後半からは、完全なオリジナルになりますよ。今、僕が描こうとしているものとは、全く別のところに落ち着くことになるはずです。

だいたいの流れは聞いているんですが、僕では思いつかないような展開になりますね。いろいろな真剣師が出てきて、どんどん過激になっていくみたいです。ドラマなりのメイドさんの秘密も明かされるようで。

――そのあたりの「秘密」はまんが版と同じなんですか?

柴田:原作の裏設定はいくつかお話していますが、脚本家の方がいろいろと手を入れているそうなので、基本的には別物になります。その展開についてはだいぶ苦労しているようで、一度ギブアップしかけたとか、そんな話も聞いています(笑)。

――どういった形で完結するのか、楽しみですね。

柴田:全11話という枠の中で全部終わらせるというのは、かなり難しいですよね。まんがなら、なんとかなると思うんですけど、ドラマらしく終わらせるのは本当に大変だと思います……。期待してます。

――ここまで見て、ドラマに「やられた!」と思った部分はありますか?

柴田:もういろいろな部分で原作を超えられている感じがしますね。あのスピード感はすごい。動きのある映像とか音楽とか、まんがでは絶対にだせないじゃないですか? そこには素直に勝てないって思いますね。盛り上がったところで音が出ると「いいな」って思いますよ。

――キャスティングはいかがでしょう?

柴田:やっぱり京本政樹(キリノ=斬野シト役)さんですよね(笑)。感動しました。知らされたときはズッこけたんですけど、考えれば考えるほどすごいキャスティングだな、と。大杉漣さん(二こ神=神野神太郎役)も素晴らしかったですね。あと、繰り返しますが劇団ひとりさんが本当に良かった。

――作者から見て、幸せなドラマ化だったということですね。

柴田:そうですね。もう、視聴者の1人として皆さんと一緒に楽しませてもらっていますよ。 先日、ドラマの撮影を見学させていただいたんですが、主演の溝端君がものすごく一生懸命やってくれていて感動しました。何度も何度も同じシーンをやらされているんですけど、テンションがぜんぜん落ちないんですよ。本当にすごかった。

shibata0002

そして彼に限らず、スタッフの皆さんが本当に真剣で圧倒されました。あの熱気を見ちゃうと、原作者だからといって軽々しく口出しできないですね。

あと、プロ棋士の方が4人、監修として参加してくださっているんですが、こちらも朝から晩まで一所懸命にやってくださっていて……そのせいで対局に負けたりしないか、見ていてハラハラしましたよ(苦笑)。

――原作者としては、ドラマが原因で不調になられると困りますよね。

柴田:そんなことになったら、本当にショックですよ。特に、親分的な立場の鈴木八段が心配です。今、タイトルに挑戦できそうなのが3つくらいあるのと、なにより「名人戦」ですね。鈴木さんは10人しかいないA級棋士の1人なんですが、その10人の中で勝ち抜けば名人に挑戦できるんですよ。そういう大事な局面にいるんです。

この10人になるためには、C級2組、C級1組から始まって、B級2組、B級1組、そしてA級と勝ち上がっていかないといけないんですが、それには最短で5年かかる。級を勝ち抜けるだけでもハンパないくらい大変な戦いなんですよ。そうやって勝ち上がってきた鈴木さんがドラマのせいで負けたなんてことになったら、僕はもう、どうしたらいいのか……。

――そ、それは心配ですね……。

柴田:ところが、鈴木さんはできた方なので「いやぁ、そんなことないよ」って言うんですよ。そんな人だからこそ、僕はもう……絶対に勝ってほしい!!

――ところで鈴木八段というと、原作に鈴木八段をモデルにしたキャラクターが登場しますよね(菅田の師匠)。ドラマではベテラン俳優の小日向文世さんが演じておいでですが、そちらについてはいかがですか?

柴田:良いと思いますね。雰囲気ありますもんね。小日向さんが出るとバーンと上ずっている感じが、キュッと締まりますよね。

――「将棋を1つ終わらせてしまったよ」というセリフとか、めちゃくちゃかっこよかったですよね。

柴田:あのシーンで使われている新戦法(新・石田流)は、鈴木さんが著書で発表したものなんですよ。今、少しずつ流行ってきているんですけど、その本(『決定版 石田流新定跡―ライバルにひとアワ吹かす必勝戦法!』 鈴木大介八段/創元社)も売れてほしいですね。

――まんがやドラマがきっかけで、将棋自体への注目が高まっているのは間違いないと思いますよ。

shibata0003

柴田:ありがとうございます。本当にそうなってほしいと思います。ゲーム機などでも良い将棋ゲームがたくさん出ているので、相手がいないという人でも大丈夫ですから。とにかく何度も何度でも、何百回でも言うんですけど、皆さん将棋を指してみてください!

柴田ヨクサルプロフィール

柴田ヨクサル(しばたよくさる) 1972年、北海道生まれ

1992年、ヤングアニマルにて『谷仮面』でデビュー。学園ギャグまんがの主人公がなぜか仮面をかぶっているという独特の設定が話題となった。その後同誌で格闘まんが『エアマスター』を約10年にわたり長期連載し、テレビアニメ化もされた。現在は活動の場ををヤングジャンプにうつし、将棋まんが『ハチワンダイバー』を連載中。魅力的なキャラクターやスピード感のあるテンポの良い展開が、将棋を知らない層からも支持を集めている。


「まんがのチカラ」次回予告
『エアマスター』、『ハチワンダイバー』で話題を呼んでいる柴田先生独特の表現手法。それを生み出すきっかけは『谷仮面』連載時のある"気づき"にあった!? 将棋少年だった北海道時代から、『谷仮面』、『エアマスター』を経て人気まんが家へとなっていく経緯をたっぷとお話しいただいた次回は、2008年7月22日掲載予定! お楽しみに!

2008年07月14日