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『楳図かずお先生』 その1

今回のまんがのチカラは、「恐怖まんが」のパイオニアにして、SFやギャグなど幅広い作品を手がける、天才まんが家・楳図かずお先生が登場!! 今月9月より公開される映画『おろち』の見どころから、ファン待望の「最新作」に関するお話まで、たっぷりお伺いしてきました!!

『楳図かずお先生』 その2>>

映画『おろち』公開! そして初監督映画も進行中!?

――まずは、9月20日から公開される、先生原作の映画『おろち』について聞かせてください。試写をごらんになって、どのようにお感じになられましたか?

おろち

楳図:大変良くできた作品になっていると思います。私の作品はこれまで何回か映画化されていますが、今回が一番映画らしい映画になっているんじゃないでしょうか。実際、周りの方もそのように仰ってくださいます。

――先生のお気に入りポイントはどこですか?

楳図:撮影前に私からお願いしたことなんですが、舞台となるおうちが大きいことですね。おうちが大きくないと、中のドラマがちゃちくなってしまうんですよ。役者が十分に動けなくなって、ドラマのバリエーションも狭くなってしまう。

でも、おうちが大きいと、それに合わせていろいろなことができるようになります。屋根裏部屋のお母さんも喜んでいるんじゃないかな(笑)。

――たしかに予告編を見る限り、かなり大きなおうちですよね。ちなみに、あれは実際にある建物なんでしょうか? それともセット?

楳図:私は実物を見ていないんですが、鎌倉に実在するおうちらしいです。人の住んでいない、記念碑的な場所だと思うんですけど。原作の雰囲気がよく出ていると思いました。ただし屋内はセットで撮っているそうですが。

――ストーリーはいかがでしたか?

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楳図:実のところ当初は原作をきちんと理解した上で映画化してもらえるか不安だったんですよ。これまでも、しっかり打ち合わせをして、脚本をきちんとチェックしたのに、できあがった映画を観てみたら肝心のポイントを外してしまっていたということが何度もあったものですから。

その点、『おろち』の鶴田法男監督は、そのあたりをきちんとつかんでくださっていましたね。

――なるほど。それは楽しみです。しかし、全9話の原作を2時間にまとめるというのはかなり大変な作業だったのでは?

楳図:さすがに全部を映像化するのは時間の関係でムリですから、今回は『姉妹』という話を中心にして、そこに『血』という話を足した内容になっています。

――最初のエピソードと最後のエピソードですよね。そういう組み合わせにしたのはやはり先生の指示だったんですか?

楳図:いえ、それは僕の指示ではありません。実は、僕はこういう風にするのはちょっとだけ反対だったんですよ。僕個人としては、『姉妹』の話をやるんだったら、それだけを掘り下げてほしかったんです。

赤んぼ少女

ただ、映画には映画のノウハウがあるんでしょうね。同じく私の作品を原作にした『蛇娘と白髪魔』(1968年公開)という映画も、『赤んぼ少女』と『紅グモ』、『ママがこわい』など、いろいろな作品を合体させたような内容になっていましたし。

――複数作品のエッセンスを合成するっていう手法は、読み切り形式のまんがを映画化するときに多いですね。

楳図:そうですね。きっと“盛りだくさんにしたい”ということだと思います。ただ、方向性がクッキリした話に、いろいろな要素を追加しすぎると、ピントがずれていってしまうおそれがあるんですよ。

本当は、原作が狙ったポイントをさらに深く掘り下げていくべきなんです。でも今の日本映画はそれができていない。業界が未成熟なんでしょう。

――多くのお客さんを呼ぶために、ウケるポイントを増やそうとしている面があるかもしれませんね。

楳図:そうですね。でも、その姿勢は良くない。今の映画界が抱えている課題ですね。ここを乗り切れないと世界に打って出て、みんなを驚かせるようなすごい作品は作れないと思います。

――たしかにそうかもしれませんね。ところで、風の噂で聞いたんですけど、そんな楳図先生が映画を撮るという話があるそうですが……。

楳図:そうですね、今やっている最中です。

――え! もう始まっているんですか?

楳図:はい、まだ脚本の段階ですけど。こちらはもうほとんど仕上がっているんですよ。今は、プロデューサーが最後の念入りチェックをしているところです。

――おお、それは楽しみです。ところで、そもそも先生に「映画を撮らないか」というオファーが来たのはいつ頃なんですか?

楳図:話が来たのは去年ですね。

昨年、NHKの『わたしが子どもだったころ』という番組に出ることになった際、その打ち合わせの場で、もう私がまんがを描くことはないだろうというお話をしたんですよ。それで、この先どうするのか聞かれて「映画監督をやってみたいな」という話をしたら、急遽、番組の中で監督をやらせてもらうことになりまして……。

それが終わったあと、今度は映画を撮りませんかということになったんですよ。

――それは、先生の過去作品の映像化ということですか?

楳図:いいえ。過去の作品は、ほかの皆さんに撮っていただければそれで十分でしょう。私が撮るべきなのは、やっぱりオリジナルではないかと。

――ですよね!

楳図:ですよね!(笑)

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そう言っていただけるとプロデューサーもすごく喜ぶと思います。私はもう10年以上まんがを描いていませんが、それでも新作を期待してくださる方々がいます。この映画はそんな方々への回答ですね。まんがの代わりに映画を撮ります、と。

――いや、ファンにとってはとてもうれしい回答ですよ! ちなみに、どういったお話なんですか?

楳図:ホラーの範疇に入る話だと思います。人間心理の恐怖を描いたものなので、タイプで言うと『おろち』に近いかな。日本の現代社会のちょっと病んでいる部分をえぐるような内容なんですよ。

ちなみに主人公は女の子で、ほかにも女の子がぞろーって出てきますよ。

――それはまた、別の意味でも楽しみですね。ちなみにキャストはもう決まっているんでしょうか?

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楳図:キャスティングはまだです。でも、すごい魅力的な女の子にやってもらいたい。頭の中に思い描いている人がいないわけではないんですが、こればっかりは僕の一存では決められませんね(笑)。

楳図かずおプロフィール

楳図かずお(うめずかずお) 1936年、和歌山県生まれ

高校卒業後の1955年、中学生時代に描いた『森の兄妹』で貸本まんが家デビュー。その後、1960年代に独自の「恐怖まんが」というカテゴリーを確立し、『赤んぼ少女』(1967年/少女フレンド)や『おろち』(1969年~/週刊少年サンデー)は映画化もされた。「恐怖まんが」のほか、SF作品も積極的に発表しており、『漂流教室』(1972年~/少年サンデー)や、『わたしは真悟』(1982年~/ビッグコミックスピリッツ)、『14歳』(1990年~/ビッグコミックスピリッツ)などが人気を博した。1976年~1981年まで週刊少年サンデー誌上にて連載されたギャグまんが『まことちゃん』も人気が高い。


「まんがのチカラ」次回予告
ファン待望の楳図先生の「最新作」は、先生自らメガホンを取っての映画であることが発覚! 脚本も書き下ろしで、正に、先生の「最新作」です。次回(2008年9月16日掲載予定)は、今回に引き続き、その「最新作」のお話を伺うとともに、作品を作る上で最も大切だという「オリジナリティ」についても教えていただきました。お楽しみに!

2008年09月09日