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『種村有菜先生』 その1

少女まんが誌『りぼん』にて、女の子の夢や希望、恋、悩みをパワフルに描く作風でたちまち人気を博した種村有菜先生。現在では同誌を代表する作家として、幅広い層の読者から絶大な支持を得ています。『紳士同盟†』の4年間の連載を終え、ひさびさの休暇でリフレッシュされたばかりの種村先生に、新連載のことや創作現場の裏話、少女まんがの魅力などについて、お話を伺ってきました。

『種村有菜先生』 その2>>

新連載『桜姫華伝』の舞台は平安時代!?

――『紳士同盟†』の連載が終了したばかりですが、りぼんの1月号から新連載がスタートするとお伺いしました。どんな作品になるのでしょうか?

種村:新連載は、平安時代を舞台にしたファンタジーなんです。内容としては、妖怪退治ものになるかな、と思います。タイトルは『桜姫華伝』。長期連載になる予定です。これまでの連載作品は、当初から長期連載を想定したテンポで物語を展開していたんですが、新連載では展開をすごく早くして、目まぐるしく、スピード感あふれる作品にしたいと思っているんです。出し惜しみせずネタをどんどん出して、物語も、伏線を次々と張っては拾うジェットコースター的な展開で、常に緊張感を持った作品にしたいですね。

桜姫華伝

――平安時代とは驚きました! 和モノは初めての作品になりますよね?

種村:そうですね。でも、和モノで十二単(じゅうにひとえ)を描きたいな、とはずっと思っていたんです。実は私、デビュー前から着物や十二単を描くのが大好きなんです!

デビュー当初も、毎年恒例のりぼん付録カレンダーで、なぜか私は1月を担当することが多くて、ずいぶん十二単を描いていたんです。風にひらひら舞うような、華やかな十二単姿で、私も描くのが楽しくて、読者の方にも好評だったみたいです。当時の編集さんがそのことを覚えていて、今回の新連載の話が出たとき、最初に和モノを薦めてくださったんです。最初は無理です!と言ってたんですけど、だんだんその気になりまして......思う壺に嵌りました(笑)。それに、いざ漫画家になって、これまで描いた作品を振り返ると、洋風なモノばかりなんですよ。こんなに和服を描くのが好きなのに!

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あと、りぼんは私自身20年以上愛読している大好きな雑誌なんですけど、これまで平安時代を舞台にした連載を見たことがないというもの大きいですね。

――りぼんにとっても珍しい連載になるわけですね! どんなお話になるのかお伺いしてもいいでしょうか?

種村:おとぎ話「竹取物語」のかぐや姫が絡んで来ますね。『桜姫華伝』の主人公・桜姫は、かぐや姫の孫に当たる女の子という設定なんです。『桜姫華伝』の中では、一度月に帰ってしまったかぐや姫が、その後、地球に戻ってきたということになっています。「竹取物語」にはさまざまなバージョンがありますし、かぐや姫を取り巻く男性もたくさん登場するので、その辺りを考えつつ、どうやって自分ならではのかぐや姫像を作っていくか、が重要ですね。

――すごくユニークなキャラクター設定ですね! そんな『桜姫華伝』のテーマは何なのでしょうか?

種村:私、連載が始まる前には、テーマを決めないようにしているんです。テーマを決め込んでしまうと、私の場合、どうしても説教じみた作品になってしまうので。その代わり大切にしているのは、キャラクターの心情。さまざまな感情のパターンを、キャラクターを通して読者さんに伝えたい、というのはありますね。ただ、たとえば「この作者が何を伝えたいと思いますか?」という国語の問題がよくありますが、答えはひとつ��ゃないし、答えが合っているかも分からないと思うんです。そこから何を読み解くかは、読者の受け取り方次第だから。

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――なるほど。ちなみに平安時代だからこその心情、というのもあるのでしょうか?

種村:現代に比べて、平安時代には男女の不平等や身分による差別など、社会的な拘束が激しかったと思うので、当然、人々の物事に対する執着も激しかったでしょうね。男性なら出世、身分が違えば恋愛さえできないわけですから。その恋愛に関しても、恋のしかたからして現在とは違う。男性が女性のところに通うのが恋だったわけですから。男性が通わなくなったら、男女関係は自然消滅が当たり前の時代、だったわけですよ。

――相手が来るのを待っているだけというのは切ないですよね。

種村:でも作家としては、こうした障害や拘束があればあるほど、話が面白く描けるんですけどね(笑)。わりと簡単にもどかしさを表現できる。平安時代のそういうところは利用していきたいな、と思いますね。

ただ、こうした時代考証をどこまできっちりと紹介するか、まだ決めかねているところではあります。小~中学生の女の子が読む雑誌なので、専門用語を並べすぎると、ちょっとハードルが高くなっちゃう。なるべく時代に沿うような、平易な言葉に置き換えて......専門用語を使わなくちゃいけないときは、必ず注釈で補足するとか、配慮は必要ですね。その点で、わりとネーム作りには苦労しています。私も現代人なので、英語の表現をナチュラルに使ってしまうんですよ(笑)。あと、時代を考慮すると「お医者さん」という言葉が使えなかったりします。平安時代では一般的には医師、か術師。術師だと読者から離れすぎちゃうので、それなら「お医師」かな、とか。そんなふうに言葉一つひとつを意識的に使うようにしています。

――現代とはまったく違うんですね。そうした知識は元々もっていらしたんですか?

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種村:担当編集さんと、平安時代に関する書籍や研究書などを、片っ端から読み漁っている状態です。もう毎日が発見ですね。たとえば平安時代の人もデザートを食べてたんだ!とか(笑)。意外と食生活は豊かだったみたいですよ。今、十二単や襲(かさね)についての本なども読んでいますが、作品中ではあまり縛られずに自由に着物姿を描いていきたいな、と思っています。それに京都に取材旅行に行く予定もあるんですよ。

――お話を聞いているだけで、もりだくさんの贅沢な作品になりそうですね。

種村:どうなるでしょうね(笑)。ただ読者さんに応援いただければ、いくらでも描き続けることのできる作品だと思うので、どうぞよろしくお願いします!

種村有菜プロフィール

種村有菜(たねむらありな)、愛知県生まれ

りぼんオリジナル(集英社)1996年6月号掲載の2番目の恋のかたち」でデビュー。翌年、りぼん6月号より初連載『イ・オ・ン』スタート。以降、同誌にて数々の連載、読みきり作品など、執筆活動を続けている。代表作に『神風怪盗ジャンヌ』『時空異邦人KYOKO』『満月をさがして』『紳士同盟†』『絶対覚醒天使ミストレス☆フォーチュン』など。『「紳士同盟†」種村有菜イラスト集』ほか、イラスト集も多数。2008年5月より、インターネットラジオサイトのS-ラジにて、ラジオ番組『種村有菜のラジオDEシャキン☆』のパーソナリティを務める。りぼん2009年1月号から『桜姫華伝』連載開始。


「まんがのチカラ」次回予告
次回は、種村先生がDJをされている、集英社ラジオステーション「S-ラジ」にて大人気配信中のインターネットラジオ番組「種村有菜のラジオDEシャキン☆」のお話をお聞きしてきました。公開予定は2008年12月8日(月)。お楽しみに!

2008年12月01日