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『種村有菜先生』 その4

少女時代から『りぼん』が大好きで、プロまんが家となった今でも同誌の大ファンだという種村先生。インタビュー最終回では、種村流キャラクター作り術と少女まんがへの熱い想いを語っていただきました。

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読者さんはみんな私のカワイコちゃん

――種村先生は作品作りに取り組む時、掲載中のほかの作家や作品との差別化など、配慮されるのでしょうか?

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種村:その点は、私はすごく意識しますね。今のりぼんにないものを常に探しています。新連載を始めるに当たっても、ヒーローやヒロインを決める時も、現在の誌上にないキャラクターをどんどん提供していかなくては、と思っています。でないと、雑誌として内容にバリエーションがなくなってしまいますから。

――昔と今では、少女まんがに求められるニーズが大分違いますよね? その点はいかがですか?

種村:女の子が好きなものって、いつの時代でも永遠に変わらない「核」のようなものがあると思うんです。私は作家として、その「核」に訴えかけたいタイプなんです。ですから、自分のスタイルはあまり変えずに、女の子なら誰でも好きだろうというものを描き続けていきたいですね。それに自分自身、今の時代で生活している人間ですから、あえて意識しなくても現代のニーズは自然と身についているんじゃないかな、とは思っているんですが(笑)。

――なるほど。先生の作品にはたくさんの魅力的なキャラクターが登場しますが、彼らはその「核」を意識して作られているんですか?

種村:私はキャラクターには、必ずトラウマとコンプレックスを付けるようにしています。どんな言葉を一番言われたくないか、何に対していつも負けてると思っているか、苦手にしているのか......。でもキャラクターがどうしても定まらない時は、紙の上でキャラクターに、一問一答のインタビューをしてみるんです。たとえば主要メンバー6人を決めたら、ずらっとキャラクターを描いて、「好きな食べ物は何ですか?」と紙に質問を書く。で、それぞれのキャラクターにそれぞれの口調で答えてもらうんです。他にも質問欄に「あなたのことが好きです」と書いてみて、どのキャラクターが反応するかを考えたり、そうではなくて「あなたのこと嫌い」と書いてみて、どんな反応をするかをイメージしたりします。この時にすぐ「じゃ、私もあなたのこと嫌い!」って返してくるキャラクターもいれば、「ふふふ」って笑っているだけのキャラクターもいるし、「なんでなんで?」って返答に困る人物も出てくるんですね。それを繰り返して、キャラクターのディテールを詰めていくんです。

――ユニークな方法ですね! 昔から実践されていたのでしょうか?

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種村:登場人物のその子のことをもっと知りたい、と思って始めた方法ですね。昔からやっていました。他には各キャラクターの一番の特徴を、5文字以内の簡単な言葉で箇条書きにしていくというのもあります。たとえば「まじめ」とか「女好き」とか......。

――それは面白そうですね。ちなみに先生ご自身を5文字以内で表すと、どんな言葉になりますか? 

種村:「せっかち」、または「生真面目」ですね(笑)。

――(笑)そうやってキャラクターを作っていくんですね。他にもキャラクター作りで配慮されていることはありますか?

種村:主人公をあえて美人でない設定にしたり、不幸な目に合わせるような展開は、しないように心がけています。主人公が幸せな目にあったり穏やかな日常が続いたりするとリアリティがないという意見もありますが、私は逆に不幸が日常に続くことのほうが、リアリティに欠けると思うんです。現実ではそんなに不幸なことって、続かないでしょう? 主人公の顔も普通かな、という感じで......それで普通に幸せだけど、それでも起こってしまう理不尽なことのほうを、むしろきちんと選んで描くようにしています。

――そういったリアリティに対する意識は強いんですか?

種村:そうですね。ただ、こだわり過ぎてしまって、「ここを描かないと、話のつながりがおかしくなっちゃうし、ここにフォロー入れないと気になってる読者もいるし......」となかなかネームが進まなくなってしまったことがあったんです。そんな時、初代の担当編集さんが「種村さんね、描きたくないことは描かなくていい! 描かなくちゃいけない、じゃなくて、描きたいものだけを描けばいいんだよ。描きたくないものは、読者も気にしてないよ」って言ってくださったんです。それでふっと肩の荷が降りたってことがありましたね。

――それはすごいアドバイスですね。

ロッキン・ヘブン
チョコレートコスモス

種村:今でも、これちょっとやだなぁって思ったら、その言葉を思い出して「あ、描かなくていいんだ」と思うと、すごく気が楽になるんです。確かに小学生くらいの女の子って、別に脇キャラのおじさんがどうなろうと、気にしないですからね(笑)。

――読者の目線でということですね。ちなみに、いまのりぼんでは、どんな作家さんに注目していますか?

種村:今のりぼんには、多種多様なジャンルや作風の作品・先生がいらっしゃるので安易には申し上げにくいんですが......酒井まゆ先生(『MOMO』連載中)や春田なな先生(『チョコレートコスモス』が11月号で完結)などにはとても注目していますね。

――どういった点で注目されているのでしょうか?

種村:ストーリーの作りこみが、みなさんとても上手ですよね。少女の気持ちをわくわくさせるような展開なんです。ちなみに私にとって読者さんは、みんな私の彼女、カワイコちゃんだと思っているんですよ。作家は女ったらしな彼氏だと思っているので(笑)。かっこいい男の子を描いて読者を虜にしているわけですから、作家というのは女ったらしなんですよ! ほんと私も読者にモテたいです! だから自分が描いたヒーローが好きって言われるのは、妙な感動がありますね。

――ちなみに先生の過去作品で、最も人気のあった男性キャラクターというと?

神風怪盗ジャンヌ
満月(フルムーン)を探して

種村:私の場合、女の子のキャラクターのほうが人気があるんですが、男の子キャラだとツートップで、『神風怪盗ジャンヌ』の千秋くんと、『満月(フルムーン)を探して』の托人くんですね。とくに『フルムーン』の托人くんは主人公を差し置いて人気を集めたので私の中では托人くんが1位かな。ちょっと口の悪い、子どもっぽい、いかにもクラスにいそうな思春期の男の子というイメージで描いてました。

――では最後に、まんが家を目指している小・中学生の読者にメッセージをお願いします。

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種村:今ではまんがのハウツー本がいろいろ出ていますが、まんがにはいまだに方法論というものが確立していないのが本当なんです。だから、どんな描き方をしても自由! そして純粋な実力勝負の世界なので、とても厳しいけれど、自分の成功のイメージが描けたときの幸せ、読者に喜んで頂いた時の感動は、ほかのどの仕事でも得られないような大きなもので、私はすごくやりがいのある仕事だと思っています。だから少しくらい迷っても、決してあきらめず、夢を追い続けてくださいね!

種村有菜プロフィール

種村有菜(たねむらありな)、愛知県生まれ

りぼんオリジナル(集英社)1996年6月号掲載の2番目の恋のかたち」でデビュー。翌年、りぼん6月号より初連載『イ・オ・ン』スタート。以降、同誌にて数々の連載、読みきり作品など、執筆活動を続けている。代表作に『神風怪盗ジャンヌ』『時空異邦人KYOKO』『満月をさがして』『紳士同盟†』『絶対覚醒天使ミストレス☆フォーチュン』など。『「紳士同盟†」種村有菜イラスト集』ほか、イラスト集も多数。2008年5月より、インターネットラジオサイトのS-ラジにて、ラジオ番組『種村有菜のラジオDEシャキン☆』のパーソナリティを務める。りぼん2009年1月号から『桜姫華伝』連載開始。


2008年12月22日