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『魔夜峰央先生』 その1

今回のまんがのチカラは、日本最長=世界最長の少女まんが作品として、性別年代の壁を超えて広く愛されているギャグまんが『パタリロ!』を30年以上連載し続けている魔夜峰央先生にお話を伺ってきました。大きなトラウマを残したという下積み時代から、『パタリロ!』最終回の予定まで、本邦初のエピソード満載でお届けします!!

『魔夜峰央先生』 その2>>

魔夜峰央先生のこだわりはココ!!

――まずは『パタリロ!』などの作品が、どのような環境から産み出されているのかを教えてください。先生は、毎日どれくらいの時間を執筆にあてているんですか?

パタリロ!

魔夜:いつも、だいたい昼の2~3時から夜の11時ぐらいまで働いています。週の初めは私1人で作業をして、週の後半、ある程度描きためたところでアシスタントさんに入ってもらって仕上げてもらう感じですね。

――アシスタントさんは何人くらいいらっしゃるんですか?

魔夜:今は3人ですね。私が描いた下絵をペンでなぞってもらったり、ベタを入れたり、背景の模様を入れたりする作業をお願いしています。

――模様と言えば、先生の作品って余白がないですよね。隙間という隙間にみっちりと何かが描き込まれています。何か理由があるんでしょうか?

魔夜:空間恐怖症なんですよ。白いと怖いんです。何か描いてないと不安になっちゃうんですね。なんででしょうね。貧乏性なのかな。描けるスペースがあるんだから描いちゃおうみたいな。

――その際、「背景」ではなく「模様」なのには何か理由があるんですか?

背景に描かれる模様 背景に描かれる「模様」
(『パタリロ!』第81巻 p.36より)

魔夜:具体的な背景よりも、想像を喚起するような模様の方が良いかなって思うんですよ。もちろん、作業速度的にそっちの方が早いってのもあるんですけど(笑)。

――なるほど(笑)。ところで作業速度と言えば、ものすごい量の作品を描かれていますよね、今。お休みとか取られているんですか?

魔夜:基本的に土日は休みにしているんですが、最近は忙しくなって日曜日も働いてますね。今やってるのが、「別冊花とゆめ」、「メロディ」、「Silky」、「COMICリュウ」、「YOU」、それと「ロマ×プリ」で、とくに「ロマ×プリ」がやたらページ数多いので、合計すると毎月130ページくらいかな。

――それはすごいですね!! ちょっと多すぎたりしませんか?

魔夜:私は大丈夫なんですが、アシスタントが追いつかない(笑)。

――たしかに、アシスタントさんが大変ですよね。ちなみに先生はピーク時でどれくらい描かれていたんですか?

魔夜:若い頃は130~140ページくらいだったと思います。最近は減らしていたんですが、昨年の10月くらいから急激に増えて、それに近づいてきていますね。

――先生は描くのは速い方なんですか?

魔夜:いや速くはないですよ。ページが多くなるほど手を抜くんです(笑)。

――ぜんぜんそうは見えませんが......具体的にはどんな風に手を抜くんですか?

魔夜:絵を簡単にしていくんですよ。たとえば『パタリロ!』だと、構図をバストアップにしちゃうと服の細かい勲章とかを描かないといけなくなるから、顔のアップにするとか。あと、横顔を描くにしてもコマの端にもっていって後頭部をかかないで済むようにするとか(笑)。

そういう細かいところで手間を省いていくと、全体としてはかなり速くなるんです。

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――それは気がつきませんでした(笑)。

魔夜:だから、単行本の1巻とかと比べると違いが分かって面白いと思いますよ。最初の方は全て自分1人で描いてましたからものすごく細かいんですよ。

――やはり自分1人で描いた方がクオリティは上がるんですか?

魔夜:それはもちろんそうですよ。本当は仕事量を毎月16ページくらいに抑えて、徹底的に描き込みたいって思っているくらいです。投稿時代なんかは、1コマに15時間かけたこともあるんですよ。砂丘の向こうから3隻の宇宙艇が飛び出してくるっていう構図なんですが、気がついたら1日が終わってたという(笑)。

――絵に強いこだわりがあるんですね。

魔夜:絵を描くのが好きでまんが家を目指したようなもんですからね。実のところ、投稿時代はストーリーなんかどうでもいいとすら思っていたんですよ。だから、投稿作品に対する編集部からの評価シートも絵に関しては高得点なのに、ストーリーについてはひどい有様でした(笑)。

ストーリーの重要性を認識したのは、プロになってしばらくしてからですね。デビュー後しばらくは怪奇まんがばかり描いていたんですが、すぐに「これじゃダメだな」って思いました。同業者の知り合いにも「お前は怪奇まんがで単行本を1冊出したら消えるよ」とまで言われていたくらいなんですよ。

幸い、途中でストーリーがさほど重要ではないギャグに転じたんで何とか生き延びることができましたが(笑)。

――いやいや、先生の作品はストーリー面でも素晴らしいと思いますよ。ちなみに、「絵」以外にこだわっている点はありますか?

魔夜:「間」ですね。

――「間」ですか?

魔夜:コマとコマの間のことですね。隣り合ったコマの間にどれだけ時間が経過しているか、それが「間」です。あと、1つのコマの中の時間経過というのもありますね。

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ちょっと説明しにくいのですが、自分の中では明確に「間」があって、それを常に意識していますよ。

私の作品じゃないんですが、『Dr.スランプ』(鳥山明先生)で、アラレちゃんが「んちゃー」って口から衝撃波を出して、「ちゅどーん」って山を吹き飛ばすシーンがあるんですね。これ、ちゃんと時間の経過があるんですが、1コマで描かれているんです。

これが、「間」ですね。当時、そのコマを見たときはすごい衝撃を受けましたね。私にはマネできないと思いました。分析不能でした。もちろん、私の「間」も誰にもマネできないとは思うのですが。

――「間」に限らず、先生の作風は「オンリーワン」ですよね。このオリジナリティがどこから生まれてくるのかはすごく気になります。子どもの頃に影響を受けた作品がもしあれば、教えてください。

魔夜:なんといっても『墓場鬼太郎』(水木しげる先生)ですね。「ああ、こんな世界があるんだ」ってすごく影響を受けました。デビュー当初、妖怪まんがを描いていたのもそれがあったからだと思います。ちなみに私の「草」の描き方は、明らかに水木先生の影響を受けていますね。

実はほかにもいろいろな作家さんから影響を受けているんですよ。たとえば、フキダシの形は萩尾望都先生(『ポーの一族』など)ですし、横顔の輪郭は池田理代子先生(『ベルサイユのばら』など)、洋服のシワはさいとう・たかを先生(『ゴルゴ13』など)です。こどものころに好きだったところを全部合わせると、ああなっちゃうんですよ(笑)。

魔夜峰央プロフィール

魔夜峰央(まやみねお) 1953年、新潟県生まれ

1973年、デラックスマーガレット掲載『見知らぬ訪問者』にてデビュー。当初は妖怪まんがをメインに展開していたが、1978年『ラシャーヌ!』でギャグまんが家に方向転換、その後、『パタリロ!』シリーズを連載開始し、現在も別冊花とゆめにて連載中。『パタリロ!』は2度のアニメ化や劇場版公開、舞台化などマルチに展開。熱狂的なファンが多いことでも知られている。なお、『パタリロ!』の単行本巻数は外伝なども含めると少女まんが界最長となる。


「まんがのチカラ」次回予告
今回は、魔夜先生流まんがの作り方やこだわりを教えていただきました。しかし、そんな先生にも下積み時代はあっ��のです! 先生がプロまんが家を目指された経緯から、貧乏時代のトラウマまで、面白エピソード満載でお届けする次回は、2009年3月9日(月)公開予定。お楽しみに!

2009年03月02日