まんが☆天国 TOP > まんがのチカラ >  『諸星大二郎先生』 その3

『諸星大二郎先生』 その3

前回は『妖怪ハンター』誕生にまつわるお話をお伺いしましたが、今回はその連載時エピソードについて語っていただきます。そして後半では現在モーニングで連載中の『西遊妖猿伝』(単行本6月23日発売!)の今後の展開予定を大公開。必見ですよ!!

<<『諸星大二郎先生』 その2

『諸星大二郎先生』 その4>>

『西遊妖猿伝・西域篇』の見せ場は火焔山!!

――今回は前回に引き続き『妖怪ハンター』の話から聞かせてください。
 師匠も仲間もなく、まんがを描き始めた先生が、いきなり連載で、しかも週刊誌というのは大変な負担だったと思うのですが、そのあたりのご苦労はいかがでしたか? どのような体制で、何人がかりでやられたのでしょうか?

morohoshi0007

諸星:連載第1回目と2回目は30ページくらい、その後が16ページだったと思うのですが、最初は旅館にカンヅメにされて、編集部が探してきてくれた若いアシスタントさんと2人で作業しましたね。でも、それも最初の週だけで、あとはほとんど1人でやったように覚えています。16ページくらいだったら何とかなったのかなあ。

――でも、1人で16ページというのはかなりの分量ですよね。やっぱり徹夜の連続だったんじゃないですか?

諸星:徹夜よりも、ネーム(注:まんがのストーリーとコマ割りを分かるように書いた下書きのようなもの)が通らないのに参りましたね。ただ、連載は5回で終わったので、それほどキツかったという印象はないです。そのまま続けていたら大変だったんでしょうけど。

――そんなふうにして産み出された『妖怪ハンター』。読者の人気はいかがでしたか?

諸星:うーん。5回で終わっちゃったんだから、あんまり人気は出なかったんだと思いますよ。順位とかも結局教えてもらえませんでしたし。当初から5回で終わりという話だったんですが、人気があったらその後も続いていたはずです。

――なるほど。ファンレターはもらったりしたんですか?

諸星:まあ、ちょっとは来ましたね。面白いというのもあれば、つまんないという手紙も来ました。子供だから悪口書いてくる人もいるんだよね(笑)。

西遊妖猿伝 大唐篇

西遊妖猿伝 西域篇

――読者は厳しいですね(苦笑)。
 しかしその後先生は、いくつかの連載を経て、1983年から双葉社スーパーアクションにて『西遊妖猿伝』を連載開始、熱心なまんがファンを中心に絶大な支持を集めるようになります。そして現在はモーニングで『西遊妖猿伝』の第2部を連載中です(2008年47号より)。1997年の掲載誌休刊から、約11年もの間中断していた作品を再開することになった経緯を教えてください。

諸星:編集部から続きを描かないかというお話が来たからですね。編集長が『西遊妖猿伝』をすごく好きだったそうで......。声をかけていただいた時に、僕も続きを描いても良いかなぁと思っていたのでちょうど良かったんですよ。

――それは具体的にはいつ頃だったんでしょうか?

私家版魚類図譜

諸星:『私家版魚類図譜』(2004年��2006年にかけて別冊モーニング、モーニングに不定期連載された連作まんが。2007年に描き下ろしを加えて単行本化)が終わったころだったかなぁ。西荻窪のお寿司屋さんで具体的に依頼されました。

第1部の連載が終わった時、第1部「大唐篇」完、みたいな形にしておいたんですけど、一応、第2部「西域篇」、第3部「天竺篇」という漠然とした流れは考えていたんですよ。ただ、これを描くのは大変だなぁと、ずっと放置していたんですね。

でも、このまま放っておくと、結局最後まで描けないんじゃないかって思ったんですよ。やるならこれが最後のチャンスだよなぁ、と。

――それで再開ということになったんですね。ちなみに「西域篇」は今月(2009年6月23日)、単行本第1巻が発売されますが、この先どのような展開を予定しておられるのでしょうか? 見どころなどを教えてください。

諸星:第1部「大唐篇」が長くなりすぎたので、あそこまでは長くしないつもりです。単行本で5~6巻で終わらせるようにしたいですね。見どころは火焔山になると思います。玄奘は史実では中国を出て砂漠を越えて、ハミ(伊吾)からトルファン(吐魯番)に入っていくんですが、トルファンにしばらくいたという記録が残っているので、そこを火焔山の舞台とするつもりです。そこで牛魔王が出てきますよ。

――おお、それは楽しみです。5~6巻というと、3~4年といったところでしょうか?

諸星:1年で1冊から1冊半くらいは単行本を出していけるペースで描いていきたいですね。ですので、(現在休載している)モーニングの連載も夏くらい、遅くとも秋には再開したいですね。

――そして、その後はもちろん「天竺篇」もお描きになられるんですよね!

諸星:いやあ、ちょっと分からないなぁ。まあ、描くとしてもかなり間を飛ばす可能性がありますね(笑)。

――ファンとしては気長に待たせていただくことにします(笑)。ちなみに先生、現在、ほかに描きたいまんがというのはあるのでしょうか?

グリムのような物語 トゥルーデおばさん

諸星:漠然と考えてはいるんですが、うーん......。そういえば、ここのところグリム童話をモチーフにした話をやっていた(朝日新聞出版『グリムのような物語 トゥルーデおばさん』など)ので、ああいう感じのものをもっと描いてみても良いかなとは思っています。

――これまで描かれて来なかったような作品は考えていない?

諸星:そうですね、そんなに外したいとは思っていないです。ごく自然に描きたいものが出てくれば、全然違うものでも描くかも知れないですが、今のところ、特にそういう欲求はありません。

morohoshi0008

――これまでの作品も、そういう「ごく自然に描きたいものを」というスタンスで描かれてきたんですか?

諸星:そうですね。「何か描かなくちゃ」とか「新しい路線に行ってみよう」とか、そういう風には考えないですね。あんまりムリはしない方針なんです。

諸星大二郎プロフィール

諸星大二郎(もろほしだいじろう) 1949年、長野県生まれ

1970年、COM掲載『ジュン子・恐喝』にてデビュー。その後、1974年に第7回手塚賞を受賞し、同年『妖怪ハンター』で週刊連載開始。代表作は1983年から数度の中断を挟み続けられている『西遊妖猿伝』で、現在はモーニング誌上にて第2部・西域篇を連載している。伝奇・SFまんがを得意とするが、時折、ユーモア感覚にあふれた作品も執筆。『妖怪ハンター』や『栞と紙魚子』など、多くの作品が映像化されている。


「まんがのチカラ」次回予告
最終回となる次回は、先生の好きなまんがから、どのようにして作品を生み出しているかについて。"あの先生"の作品を愛読しているなど、ファンでもビックリな(ある意味納得?)な、エピソード満載でお届けします。更新は2009年6月29日(月)の予定です。

2009年06月22日