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『諸星大二郎先生』 その4

全4回でお送りした諸星大二郎先生インタビューも残念ながら今回が最終回。そこで、最後に諸星先生の「まんが」ライフについてお聞きしてみました。先生はふだんどんな作品を読んでいるのか、どのようにして作品を発想するのか、個性的な諸星先生作品の秘密がちょっとだけ分かるかも?

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超常現象的なものは信じていません!?

――最終回となる今回は、諸星先生の作品以外のことについて聞きたいと思います。まずは、先生が最近注目しているまんがについて教えていただけますか?

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諸星:最近ですか? 最近ではないけど、何年か前に楳図かずおさん(『まことちゃん』『漂流教室』など)を集中的に読みました。あと、伊藤潤二さん(『うずまき』など)とか、ごくごく最近だと五十嵐大介さん(『海獣の子供』など)も。

――楳図先生の作品を集中的に読みはじめたのはなぜですか?

諸星:もともと気になってはいた人なんですよ。実はその頃、もう少しまんがを読んでおこうかなと思いだして、手始めに楳図さんの作品を読みはじめました。『漂流教室』や『わたしは真悟』など、有名なのをきちんと読んでなかったんですよね。それで、この際だからまとめて読んでおこうって感じで。

――楳図先生の作品の中で一番気に入っている作品はどれですか?

諸星:昔読んだ作品なんですけど『おみっちゃんが今夜もやってくる』がすごい怖かったという記憶がありますね。もちろん『漂流教室』『わたしは真悟』なども面白かったですよ。

――楳図作品の魅力はどこにあると思いますか?

諸星:うーん、そういう質問は困るなあ(苦笑)。ホラー系の作品でいうならあの細かい絵かな。ジワジワ来るよね。あと、ストーリーも良いですよ。

あ、そうそう、楳図さんの話とは全然違うんですが、小田扉さん(『団地ともお』など)のまんがも読んでいます。小田さんが私の作品を好きなんだそうで、担当さん経由で単行本をいただいたんですが、それで読みはじめたんですよ。

――小田扉先生は、まんが家からの人気が高いですよね。諸星先生はどのあたりを面白いと思われたんですか?

諸星:のほほんとした雰囲気かな。

――そのほかに注目されている作品はありますか? 例えば『西遊妖猿伝』を連載しているモーニング誌上で今一番注目している作品はなんでしょう。

諸星:一番ですか? 一番楽しみにしているのは『誰も寝てはならぬ』(サライネス先生)ですね。あれをまず読みます。

それ以外だと『ひまわりっ ~健一レジェンド~』(東村アキコ先生)がけっこう面白い。どういうところが面白いのかと言われると困っちゃうんだけど、とにかく面白いね。

キョウコのキョウは恐怖の恐

蜘蛛の糸は必ず切れる

――ご自身でコメディ系のお話も描かれるだけあって、ギャグまんが系もお好きなんですね。
 さて、次にまんが以外の創作活動について聞かせてください。先生は2004年に発売された短編集『キョウコのキョウは恐怖の恐』(講談社)のほか、2007年には『蜘蛛の糸は必ず切れる』(講談社)で小説を発表していますよね。

諸星:ちょっと前に、趣味で小説まがいのものを書いていたのを、つい双葉社の雑誌に載せてしまったんですよ。そうしたら、その後もたまに注文を受けるようになっちゃって......。

――それはどういった内��のものを書かれたんですか?

諸星:当時夢ノートをつけていたんですが、その中の1つの話をちょっと味付けしてホラーっぽくしたようなものですね。

――夢ノートですか?

諸星:十何年か前に、2~3年だけやってたことがあるんですよ。面白い夢を見ても忘れてしまうので、忘れないために書いておこう、と。実際、それを元にいくつか話を書きましたよ。具体的には、どっか外国の荒れ地の中に水たまりがあって、そこに子供がいるみたいな夢を見て、そのまま短編まんが(『沼の子供』)にしました。

でも、そのうち面白い夢を見なくなったのでやめちゃいました。めんどうだったし(笑)。

――小説とまんがを両方描かれている方は非常に少ないと思うんですが、両方をやってみていかがでしたか? 小説とまんがではやっぱり違うところがあるんでしょうか。

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諸星:まんがはなんでもいちいち絵にしないといけませんが、小説は文字でイメージを伝えられるので、そこが違いますね。絵で描いちゃうとばれちゃうような部分をあいまいなまま進められたりするので、そういうトリックをやるには便利かも。

でも、まぁ、今後は趣味ぐらいでやっていくのが良いんじゃないかと思ってますね(笑)。

――自作の映像化についてはいかがでしょうか? 先生の作品のいくつかが映画やドラマになっていますよね。あれを見て、自分でも撮ってみたいと思われたり、自分ならこう撮るとか思ったりしたことはありますか?

諸星:うーん。そっち方面はやろうとも思ったことがないからなんとも言えない。自作のドラマ化や映画化に関しても、全くの別物と思って観ているので、原作と全然違っていてもあんまり気になりませんね。

――先生の作品は超常的なものをモチーフにしていることがとても多いですが、先生個人としてはそういったものをどのようにとらえているのでしょうか? 霊を見たりとか、そういう経験はありましたか?

諸星:それはよく聞かれるんだけど、全くないですね。霊感はまるでないし、UFOとかも見たことない。霊能者が出てくるテレビ番組なんかもあまり興味ないですね。心霊まんがが流行っていたころにちょっとだけ見たりしましたけど、ぜんぜん信じてない(笑)。

――では古代史に関してはいかがでしょうか? 古墳や神社などに取材に行かれたりはするんですか?

諸星:旅行に行くとしたらそういうところ中心になりますけど、取材のために積極的に行くってことはあまりないですね。出不精なので、資料とか想像とかで済ませちゃう。モーニングの担当編集者にもそれで驚かれました(笑)。

――確かにそれは意外ですね! 私も驚きました。たぶん、多くのファンも驚いているんじゃないでしょうか。
 さて、それでは最後の質問です。先生にとって「まんが」とはいったい何でしょうか?

諸星:そういう「テレビチャンピオン」みたいな質問は困るんだよね(笑)。うーん。何だろうなぁ。

――すいません(笑)。でも、数ある職業の中から、まんがを選んだわけですから、それなりにお考えになるところがあるのではないかと思ったんですが......。では、まんが家という仕事の良いところはどこでしょうか?

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諸星:まず、時間が自由になるところは良いかな。その上で、何かをぼーっと考えて、変なことを思いつくと、それが飯の種になるという夢のような仕事です。毎日ばかな、そんなことあるわけないなんてことを考えていれば良いんだから素晴らしいですよね(笑)。

――では、諸星先生にとって「まんが家」は天職であったと。

諸星:そうですね。大変なこともありますけど、たぶん天職だったんだろうなと思います。

諸星大二郎プロフィール

諸星大二郎(もろほしだいじろう) 1949年、長野県生まれ

1970年、COM掲載『ジュン子・恐喝』にてデビュー。その後、1974年に第7回手塚賞を受賞し、同年『妖怪ハンター』で週刊連載開始。代表作は1983年から数度の中断を挟み続けられている『西遊妖猿伝』で、現在はモーニング誌上にて第2部・西域篇を連載している。伝奇・SFまんがを得意とするが、時折、ユーモア感覚にあふれた作品も執筆。『妖怪ハンター』や『栞と紙魚子』など、多くの作品が映像化されている。


2009年07月06日