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『一条ゆかり先生』 その1

痛快なアクション、身の毛もよだつホラー、謎が謎を呼ぶミステリーなど、あらゆる要素をゴージャスに盛り込んだ少女まんがの超名作『有閑倶楽部』が待望のテレビドラマ化! 今回はそれを記念して、作者・一条ゆかり先生にインタビュー。ドラマの感想から、気になる「有閑倶楽部」の今後までを語ってもらいました!!

『一条ゆかり先生』 その2>>

『有閑倶楽部』は豪華じゃなくっちゃ!

――今日はお忙しい中、ありがとうございます。

有閑倶楽部

一条:ホント、大変なのよ! 明日、『有閑倶楽部』DX版あとがきの締め切りなのに全然手を付けてないの。普通はこういうのって1ヶ月に1冊じゃない? それなのに、1ヶ月に3冊も出すってどういうこと? こんなことなら出すの「うん」って言うんじゃなかった!(笑)

――まだ手を付けていないんですか?

一条:あとがきには「ここはこう描いていたけど、実は間違いで本当はこう」とか、「この話を描いた時、実はこんなことがあったの」とか、そういうものをそれぞれ1ページずつ描いてるんだけど、そのためには、もう一度、掲載されているお話を読み直さないといけないじゃない? 今は、当時を思い出すために、必死で掲載されているお話を読み直しているところ。

――それは間に合うんですか?(笑) ちなみに、今はどのあたりを読んでいるんですか?

一条:今は、蛇様のところ(「幽霊なんかこわくないの巻」文庫版4巻に収録)ね。

――蛇がダーッと海を渡っていくところが印象的なエピソードですよね。

一条:あれ、子供の頃におばあちゃんから聞いた実話なのよ。瀬戸内海に大槌・小槌っていうだれも住んでいない島があるんだけど、島で山火事が起きた時、山に住んでいた大量の蛇がわーーーっって隣の島に逃げて行く様子が橋のように見えたって。

その話が記憶のどこかに残っていて、あのお話を描いたのよね。

――とても怖い話でした......。

一条:でも、あの蛇の絵はよく見ると笑えるのよ。蛇の絵を3人か4人で手分けして描いたんだけど、それぞれ描いた人のクセがすごい出ているの。メカ好きの男の子が描いた蛇はロボットみたいだし、別の女の子が描いたのは妙にクネクネしてる。

――単行本を持っている皆さんは、ぜひ確認してみてくださいね。......さて、蛇の話はこれくらいにしておいて、ついに放映開始された待望のテレビドラマについてお話を聞かせてください。ドラマ化に際しては、注文などされたんでしょうか?

一条:ドラマ化にあたって、最初に監督にお願いしたのが「豪華にしてください! 絶対に貧乏臭くしないでください!」ってことね。とにかくそこをうるさく言いました。

――キャスティングや脚本よりも、豪華さ重視で?

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一条:うん。とにかく豪華にしてくれって。あと、過去、何度も映像化でイヤな思いをしてきたので、それを全部ぶつけて、「それ以上ひどくしなければOK」って(笑)。

それとお話は変えてもいいから、キャラクターの性格を変えるのだけはやめて欲しいってお願いしたの。ストーリーは仕方ないけど、私が作ったキャラクターの性格が変わるのはイヤなのよね。

――実際に放映されたものを見てどう感じられましたか?

一条:とにかく豪華になっててビックリ。それはもう、想像以上でした。特に有閑倶楽部の部室がすごいわよね。「なんなのこれはっ!」って(笑)。あと、多摩と富久と男山がナイス! 細かいことを言えば、男山の耳は、狼のように立っていてほしかったんだけど、純粋のコリーでそんな犬はいないので、これはまぁ、仕方ないわよね。

――有閑倶楽部の面々はいかがでしたか?

一条:一番注文がなかったのが可憐さん役の鈴木えみさん。あの子は見た瞬間に「合格!」って。でも、ちょっと細すぎる感じはしたわね。可憐さんはグラマーで売っているのに、鈴木さんの太ももと私の腕が同じくらいの太さなんだもん(笑)。

美波さん演じる悠理くんもそっくり。ただ、背が足りないのが惜しいわ~。可憐さんの背を10cm渡してほしい!

――もう1人の女性キャラ、野梨子(香椎由宇さん)はどうでしたか?

一条:映画『リンダ リンダ リンダ』を見ていたので、彼女の演技力については心配していなかったのだけど、髪の毛の長さに注文をつけさせてもらいました。私のイメージに近づけるために、「もう少し短く」とか「前髪も眉出して下さい。」とか、かなり細かくお願いしました。彼女にしてみたらもう大人だし、おかっぱ頭にはちょっと抵抗があったみたいだけど、最終的には切ってくれて、それでとてもイメージに近くなったんじゃないかしら。

――男性陣はいかがでしょう?

一条:美童役の田口淳之介くんは、ウチの仕事場では「癒し系」ってことになってます(笑)。でも、スタッフの反応は彼が一番良いのよ。「偉い! なり切ってる!」って。

私も彼が一番キャラクターをつかんでいると思いました。プロデューサーさんから、田口くんが作品を読み込んでいるって話は聞いていたんだけど、本当にそうみたいね。でも、すごく良いと思う反面、あまりに美童になりきっていて気持ち悪い気もするのよね(笑)。

――主演の赤西くんはどうですか。

一条:赤西くんは赤西くんね(笑)。

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魅録くんって族系のツッパリ兄ちゃんで、パンク系で、ロック同好会じゃない? だから赤西くんのイメージと結びつかなかったのよ。実際に会ったときも、どう見てもパンクに見えなくて......それにあの髪形は、頬の面がシャープじゃないと似合わないのよ。

だから、彼に関しては無理に原作のイメージを押し付けるんじゃなくて、彼の良さを活かす方向で考えて、「赤西くんは髪を切らずに、そのままの方向で」ってお願いしたの。そもそも赤西くんには赤西くんの魅力があるのだから、魅録くんをやれって言っても無理だと思うのよね。

私、まんがのドラマ化って、自分の作品が嫁に行くようなものだと考えているの。嫁に行った先でいじめられたら帰ってこいって言うけど、そこの家訓に従って楽しくやれるなら、今までのやり方を変えても良いと思うのね。だから、本当はあまりうるさく言いたくないのよ。

『有閑倶楽部』がテレビに嫁に行ったと考えれば、魅録を人気のある赤西くんがやるのは良いことだと思いました。彼には華があるし、なにより若い子に人気があるし。これで10代の読者が増えてくれれば最高よね(笑)。

――主演以外のキャスティング......例えば鹿賀丈史さん(警視総監・松竹梅時宗役)とかはいかがでしたか?

一条:鹿賀さんは、ものすごくうれしいキャスティングだったんだけど、実際に演技を見たら、あまりにもナチュラルで......。演技が上手すぎるのよね。もうちょっと、大仰に構えて、もったいつけた演技の方が良かった。もっと舞台っぽく、「あんた、どこの国の人よ?」みたいな感じで。大見得切ってやってほしかったかな。

――なるほど。ところで、ストーリーはどうでした?

一条:ストーリーは最初の打ち合わせで、「1回目と2回目くらいまではチェックさせて」って言ったのよ。さっきも言ったように基本的にはあまり口出ししたくないんだけど、最初のうちは、こちらが何を望んでいるか伝わりにくいだろうから、って。

そしたら、1回目が、もろに赤西くんのファン向けな内容だったのよね。魅録が女の子に恋をするって話で......。で、その女の子に弁の立つ弟と妹がいて「お姉ちゃんをいじめるな!」とか「告白しろよ、おめー」とか、なんというか、こざかしい感じ?(笑) それが私的にすごくイヤでね、「お願いだから、この弟と妹を犬にしてください! ペットにしてください!」って。

――えええ、犬ですか?(笑)

一条:動物相手だったら、魅録くんは真剣に命を懸けて立ち回ると思うのよね。それに、今は変なガキよりもペットの方が人気出ると思うのよ(笑)。

で、それに合わせて、きちんとつじつまがあうように私の方でストーリーを作って......彼女も高級な犬を飼っているとか、こういう風に出会って、ああして、こうして、こうなるみたいな展開を提示したんですね。そうしたら、きちんとその通りにしてくれました。

――ほとんど脚本家ですね(笑)。2回目以降も、そういう形で参加されているんですか?

一条:1回目でだいたいのところは分かってもらえたみたいだから、2回目以降は、ほとんど口出ししてません。まぁ、こんな感じで良いかなって。

――おお、原作者お墨付きですね!

一条:またね、第1話で出てくるドラマオリジナルキャラの女の子が上手いのよ。赤西くんのファンが見たらムカつくほどの美人ではなく、普通の女の子にしてるの。ファンのカンに障らないようにしてるところが上手いのよ。さすが日本テレビ、できるわね! って感心しました(笑)。

一条ゆかりプロフィール

一条ゆかり(いちじょうゆかり) 1949年、岡山県生まれ。

1968年、読み切り『雪のセレナーデ』が第1回りぼん新人漫画賞に準入選。1981年、りぼんにて『有閑倶楽部』を連載開始。1986年、同作が第10回講談社漫画賞少女部門を受賞。現在は活躍の場をコーラスに移し、オペラをモチーフにした『プライド』を連載中。『有閑倶楽部』に代表されるコメディタッチ作品と、『砂の城』に代表されるシリアスタッチの作��を描き分ける幅広い作風を誇る。『デザイナー』『プライド』では特に、女性同士の友情や憎悪の描写が高い評価を受けている。


「まんがのチカラ」次回予告
次回(2007年11月26日頃掲載予定)は、一条先生のゴージャスな交友関係に大注目!ハードボイルド小説家、北方謙三先生とのマル秘エピソードも飛び出します。さらに一条先生流のキャラクターの作り方にまで話は及んで、まんが好きには見逃せません。お楽しみに!

2007年11月19日