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『尾田栄一郎先生』 その2

今回は、もはや大河ドラマと言っても過言ではない超大作『ONE PIECE』、その原点ともいうべき読み切り作品『ROMANCE DAWN』の話を口切に、物語に巧みに張られた伏線の真実や物語がいったいどれくらいで完結するのかなどの制作秘話を先生自ら大激白です。ファン必見の内容をお届けします!

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ゴムゴムのストーリー? のびてのびて目指すは100巻!?

――尾田先生が『ONE PIECE』で連載デビューされるまでのお話を聞かせてください。まず、パイロット版とも言える読み切り作品『ROMANCE DAWN』(ファンブック『ONE PIECE RED』および、短編集『WANTED!』に収録)ですが、これはどういうふうにして生まれた作品だったのでしょうか?

『WANTED!』

尾田:海賊をモチーフにしたまんがを描きたいということは、中学生くらいの頃から考えていました。ただ、それを短い読み切り作品ではやりたくなかった。絶対に話のスケールが小さくなるし、伝えたいことが描ききれませんから。やるなら連載でってこだわっていたんです。

でも、どうしてもそこ(連載)にたどり着けない。連載以前の読み切り作品のネームで片っ端からボツを食らうという状況で......。

それでもう本当にどうしようもなくなって、「これでダメだったら、諦めるしかない」と覚悟して描いたのが『ROMANCE DAWN』です。僕にとっては、背水の陣で出した伝家の宝刀だったんですよ。

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だから、内容も壮大なストーリーの入り口部分だけを描いたというか、明らかに続きがあるようなものになってますよね。「僕はこういう作品を描きたいんです」ってお知らせみたいな(笑)。

結果として、それが連載にしてもらえることになって『ONE PIECE』になりました。

――基本的な設定とかは『ROMANCE DAWN』の時点で完成していましたよね。

尾田:そうですね、ルフィがいて、ゴムゴムの実があって......。ちなみに「ゴムゴムの実」は最初「ゴムの実」だったんですよ。でも担当さんに「ゴムの実って実際にあるんじゃないの?」って言われて、「じゃあ、ゴムゴムの実にします」と。けっこう軽い気持ちで変えちゃったんですけど、今にしてみると、ナイスアイディアでしたね(笑)。

――とはいえやはり、中学時代からの壮大な構想があってこそ、でしょう。

尾田:いやいや、構想ってほど大それたものではないんですよ。実際、内容についてはほとんど何にも考えてませんでしたし。決めていたのは最低限の設定と壮大なストーリーにしたいってことくらいです。

――それは意外です。読者としては、鯨のラブーンのエピソード(単行本12巻に収録)で張られた伏線の意味が、最近ついに明かされたことなどから、ものすごく緻密な設定があると思っていたんですが......。

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尾田:あれは、結果的に秘密が明かされるのにものすごい時間がかかっただけですよ(笑)。もちろん、ラブーンを描いた時点で「ガイコツの音楽家」が登場するということは考えていましたけど、デザインは考えてませんでしたし、いつ出すかも決まってませんでした。気持ち的にはもっと早く出したかったんですけど、どんどんのびのびになっていって、最近やっと出せたという、それだけの話ですね。

僕はおおまかなストーリーを途切れ途切れのお話しで考えているので、どの順番で出して、どれくらいの時間をかけて語っていくかとか、そのへんは適当なんです。連載のネームでボツを食らって別の案を考えないといけないときとかに、「あ、ここであのネタを使おう」とか、そんな感じで作っているエピソードも多いんですよ。

――それはたとえば?

尾田:「魚人」がそうですね。実は魚人は第3話で登場する予定だったんですが、その時点ではボツになってし��ったんですよ。でも、そのアイディア自体はずっと僕の頭の隅っこにあり続けて、アーロン編(単行本8巻~)でやっと使えた。これもホントはもっと早く出すつもりだったんですけどね。

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とにかく、描いていると話がどんどんのびていっちゃう。読者としては「こんなに遠くのことまで考えていたのか!」って印象を受けるかもしれませんが、僕にしてみれば「こんなに遠くのことになるとは思わなかった!」って気持ちなんですよ(苦笑)。

だから、当初の見込みではもっと早く完結させる予定だったのが、気がついたらこんなことになってる。1年半くらいで仲間が全員そろって大冒険をして、5年くらいで終わるつもりだったのに。

――ちなみに、完結まではあとどれくらいかかる見込みなんですか?

尾田:それは気が遠くなるのであんまり聞いて欲しくない質問ですね。うーん、半分は行ったと信じたい。......いや、もうそういうことを考えるのはやめよう!(笑)

尾田栄一郎プロフィール

尾田栄一郎(おだえいいちろう) 1975年、熊本県生まれ

高校生時代に執筆した短編まんが『WANTED!』が第44回手塚賞(1992年)に準入選。その後、アシスタント経験を経て、1997年に『ONE PIECE』で週刊少年ジャンプ連載デビュー。魅力的なキャラクター、躍動感のあるアクション、感動的なストーリー描写などによって、老若男女幅広い層から絶大な支持を集め、単行本の累計部数は1億部を突破している。アニメ化、ゲーム化、映画化などのマルチメディア展開も好調。海外にもファンが多い。


「まんがのチカラ」次回予告
次回(2007年12月25日頃掲載予定)は、先生の下積み時代の願いが偶然叶った『ONE PIECE』アニメ化時の奇跡、子どもの頃からの想いを胸に、こだわり続ける単行本読者コーナーのお話、そして『ONE PIECE』にかける意気込みと作品完結後のちょっと意外な夢など盛りだくさんの内容でお届けします。さらに次回が尾田先生編最終回。お見逃しなく!

2007年12月17日