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第30回 『萌えとか言ってる場合じゃないぜ』

木村カナ(文筆業)

 こんにちは、木村カナです。

 内心はデレデレしているのに照れてツンツンしてしまう、普段はツンツンしているのに突然デレデレに変わる......「ツンデレ」とは、そうした二面性のある性格、そういう性格のキャラクターのことを指します。

 元々はゲームのキャラクターの魅力を説明するための用語だったそうですが、今ではゲーム以外でも使われるようになっています。一般的になったことで、もはやすっかりベタなネタになってしまった感もありますが、そうなったらそうなったで、メタ、つまり、そのネタのベタさをわざとネタにする作品が登場してくるものです。いわゆる「ツンデレ」なヒロインが大暴れして、屈折した笑いを読者に提供してくれる、そんなまんがを今回はご紹介したいと思います。「ツンデレ」だからかわいいとか、萌え萌え~とかを期待して読んだら、きっと後悔しちゃうんだからっ!!

『笑うかのこ様』(辻田りり子/白泉社)

笑うかのこ様
●辻田りり子・著
●白泉社
●花とゆめコミックス 既刊2巻
●定価 410~420円(税込)
LaLaスペシャル連載中

 黒髪のおかっぱで眼鏡っ娘な中3女子、苗床(なえどこ)かのこ。地味で目立たない、一見したところではおとなしそうなルックスの彼女は、転校先のどの学校でも単独行動が基本。どうしていつも一人でいるの? 実はかのこの趣味は人間観察。「完全なる物語の傍観者」であろうとするそのポリシーに従って、中立的で冷静な観察眼を保つために、わざと誰とも仲良くしないようにしているからです。毎日、クラスメートの言動を徹底的に観察して、その記録を笑いながら秘密ノートに書きためる......うわあ、苗床かのこったら、どんだけ暗い子なのよ!
 苗床かのこの目を通して描かれている、シニカルな思春期レポートが本作の面白さの1つ。特に女子文化に対する鋭い洞察には思わず納得! かのこのクラスメート観察ノートによれば、「女子の8割は友人のダイエットを阻止しようとする」。その理由とは?......そりゃあ、自分と同じか、自分以下のレベルを維持させるために決まってるじゃないですか! 女の子同士のコミュニケーションに特有の、そういう底意地の悪さを、かのこ様はしっかり見ている。
 「ただ面白い事を見ていたい」から「完全なる物語の傍観者」を標榜し、口癖は「ばっかじゃなかろうか!」、ひたすら斜に構えた態度が基本のかのこなのですが、とっても義理がたく、情に厚いという面も持っています。そして、許せない!と思った状況に対しては、傍観者だからとスルーせずに、決然と立ち上がる。転校先で起こる事件をかのこ様が次々と斬り捨て御免!
 そんなかのこに一目置いていて、彼女を何かとサポートするのが、第1話から登場している、超俺様な性格の美少年・椿初流(つばき・はる)。自分のことには鈍感なかのこはともかく、椿君はかのこのことを相当気に入っているみたい、いや、もしかしたら、もしかすると......? この2人の関係、その後の展開がかなり気になります......!

『百舌谷さん逆上する』(篠房六郎/講談社)

百舌谷さん逆上する
●篠房六郎 ・著
●講談社
●アフタヌーンKC 既刊2巻
●定価 550~560円(税込)
アフタヌーン連載中

 このまんがはとにかくヤバイ......!!
 ヒロインは金髪ツインテールでお嬢様風美少女の小学生・百舌谷小音(もずや・こと)。彼女はいわゆる「ツンデレ」、正式病名「ヨーゼフ・ツンデレ博士型双極性(そうきょくせい)パーソナリティ障害」の患者です(という病名はもちろんフィクション)。本作中での「ツンデレ」はいわば、愛情が暴力や破壊への衝動に変わってしまう病気であるとされています。好きな人や物を好きだと素直に言えない、そ��どころか、自身の気持ちとは裏腹に、全国各地で暴力事件を起こしては転校する、を繰り返してきた百舌谷さん。とんでもなく聡明で純粋な彼女には、そんな自分自身が耐えがたい。「ツンデレ」の自分をどうにかうまく取り扱おうとする周囲の言動すべてが許せない。「ツンデレ」が遺伝すると知りながら彼女を産んでおいて、しかも彼女を手元に置いて育てず、どこか知らない場所で暮らしている両親も、とにかく何もかもが許せない。
 「ツンデレ」をすでに完全にこじらせていて、屈折してしまった自意識過剰がいつだって崩壊寸前、この世をガンガンに呪っている凶暴な百舌谷さんは、誰のことも信じられず、誰ともまともな関係を築けません。
 そんな百舌谷さんの前に現れたのが同級生の樺島番太郎(かばしま・ばんたろう)。クラスメート男子に「カバ夫」というあだ名をつけられ、いつもいじめられている彼は、7月初旬のある事件をきっかけに、百舌谷さんの「下僕」にさせられてしまいます。そして「僕の人生はこの日を境に彼女とともにでんぐり返っていったのでした」......あれれ?なんで過去形なの? 百舌谷さんと樺島君の夏休みを異様なハイテンションで描いている2巻、その最後の樺島君のモノローグも過去形。ということは、この物語は、樺島君が回想している過去の出来事、として描かれているのです。不穏な雰囲気が漂う第2巻。百舌谷さんと樺島君の奇妙な関係に一体、これから何が起こるのでしょうか......?
 1巻の巻末には『げんしけん』(木尾士目/講談社)の9巻特装版に収録された、今どきの大学生のおたく事情を題材にした「おまけマンガ」が掲載されているほか、1巻・2巻ともにカバー下の本体表紙には作者の「近況漫画」がついています。「おまけマンガ」&1巻の「近況漫画」に描かれている母校訪問のエピソードを読んで、現在のおたくの若年層ってこんなにぬるいのか!?と心配になったというか、なんだかものすごく悲しくなってしまいました......。

 それでは、また次回!

2009年05月27日