まんが☆天国 TOP > まんてんセレクション >  第31回 『キミとボクのまんが道』

まんてんセレクション

第31回 『キミとボクのまんが道』

木村カナ(文筆業)

 こんにちは、木村カナです。

 少し前にテレビでトキワ荘記念碑の除幕式のニュースを見ました。

 手塚治虫、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄......まんが界の巨匠たちが若い頃に住んでいた伝説のアパートが「トキワ荘」です。アパートの建物自体は取り壊されてしまって現存しないのですが、跡地に近い南長崎花咲公園にトキワ荘記念碑が完成、まんがの聖地・トキワ荘のあった街として地域を盛り上げていこう!という熱気が伝わってくるニュースでした。

 トキワ荘での日々を描いたまんがとして有名なのはなんといっても藤子不二雄(A)の傑作『まんが道』! 自身をモデルにした満賀道雄と藤子・F・不二雄をモデルにした才野茂、彼らのまんがにすべてをかけた青春を描いた、自伝的な作品が『まんが道』です。満賀道雄と才野茂というまんが家をめざすふたりの少年はやがて見事にまんが家となって上京。憧れのまんが家・手塚治虫が住んだトキワ荘に、彼らも入居することになるのでした。

 主人公ふたりのまんがへの愛と情熱、そして彼らの友情が、読者の胸を熱くする『まんが道』。今回はその精神を受け継いで、まんが家をめざす男の子ふたりを描いた作品をご紹介します。

『ビアティチュード BEATITUDE』(やまだないと/講談社)

ビアティチュード
●やまだないと・著
●講談社
●モーニングKC 既刊1巻
●定価 650円(税込)
モーニング・ツー連載中

 汗まみれになりながら、その才能を存分に原稿用紙にぶちまけつづけるアフロヘアーの天才まんが家、花森ショータロー。そして、いつも憂い顔、でも時々見せる笑顔がとんでもなくチャーミングな美少年、ショータローの親友のクボヅカフジヲ。ふたりが暮らしはじめたトキオ荘は、憧れのテヅカ先生がかつて住み、今もまんが家の仲間たちが集まっている「漫画梁山泊」です。

 トキワ荘をモデルにしたこの物語、いわば、『まんが道』リミックス、やまだないとバージョンと言えるでしょう。昨年亡くなった赤塚不二夫は、『天才バカボン』を大ヒットさせた中年以降のイメージが強いですが、若い頃にはすれ違う人みんながふりかえるほどの美少年だったそうです。若き日の赤塚不二夫がモデルのフジヲがこっそり描きためて、押入れの天井に貼っているまんがは......あれれ? これはまさしく、アメリカのアウトサイダー・アーティスト、ヘンリー・ダーガーが描いた戦闘美少女たち「ヴィヴィアン・ガールズ」!

 いつだってまんがに夢中だったかつての若者たちの生活。現実のトキワ荘ヒストリーを下敷きにしつつ、やまだないとならではのセンスとテイストによって、新たに構築されていくトキオ荘ストーリー。その物語に与えられたbeatitude=至福というタイトルに、作者のまんがに対する思いが凝縮されている、そんな気がします。

『バクマン。』(大場つぐみ・小畑健/集英社)

バクマン。
●原作:大場つぐみ
●著者:小畑健
●集英社
●ジャンプコミックス 既刊3巻
●定価 420円(税込)
週刊少年ジャンプ連載中

 『DEATH NOTE』を大ヒットさせたコンビが描く最新型の「まんが道」、それが『バクマン。』!

 サイコーこと真城最高(ましろ・もりたか)とシュージンこと高木秋人(たかぎ・あきと)。サイコーは中学校で同じクラスだったシュージンに誘われて、サイコーが作画、シュージンがネーム原作というコンビでまんが家デビューをめざすことになりました。そのきっかけとなったのがサイコーが初恋の相手・亜豆(あずき)とした約束。18歳までに「週刊少年ジャンプ」の連載まんが家になる、そのまんががアニメ化されたら声優になった亜豆にそのヒロインを演じてもらう、そして、そうなったら結婚しよう! なんてでっかい夢、なんという困難な目標!!

 しかし、それも決して不可能ではないのでは......と思えてくるのが、サイコーの画力とシュージンの文才、そして彼らがそれを磨きあげるために必死で努力する姿が描かれているから。結果、すでに故人であるサイコーのおじさんがまんが家で、その仕事場を自由に使えるというアドバンテージもあり、コンビを組んで1年経たないうちに早くも、まんが家としてデビュー!

 でも、そこはあくまでもスタート地点、新たな茨の道のはじまりでした。ひとつ年上の天才少年まんが家・新妻(にいづま)エイジというライバルが現れ、連載を先にスタートさせたのです。まさに天才タイプのエイジに対して、考えて描くタイプであるサイコー&シュージン。エイジに負けたくない、早く連載を持ちたい、でも恋愛も......という彼らの「まんが道」はまだまだこれからです!

 まんがについてのまんが、まんがの描き方を描いたまんがであり、「週刊少年ジャンプ」で連載されている上に「週刊少年ジャンプ」ついてのまんがでもある、そういう批評性があるから『バクマン。』は面白い! 原作段階と作画前のネームの両方が単行本に収録されていたり、編集者の仕事や「週刊少年ジャンプ」独自のシステムがくわしく紹介されていたり......まんが家をめざす人にとって役立つのはもちろん、まんがというのはこうやって作り上げられているんだ!と読者も知ることができる。そして、まんがの世界は21世紀もきっとますます面白くなっていく!

 それでは、また次回!

2009年06月15日