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第34回 『少女は妖怪に恋してる』

木村カナ(文筆業)

 こんにちは、木村カナです。

 前回(第33回)ご紹介した『百鬼夜行抄』(今市子/朝日新聞出版)の律と『夏目友人帳』(緑川ゆき/白泉社)の夏目。遺伝的に妖怪が見えてしまう特異体質の彼ら、律は青嵐という護法神と、夏目はニャンコ先生という用心棒と、一つ屋根の下で仲良く暮らしています。

 いつでもそばにいてくれて、自分だけを見守っていてくれて、困ったときには必ず助けに来てくれる、頼りになる存在がいる、という、そのシチュエーション!

 それがもし、守られているのが男の子ではなく女の子で、守っているのが年上の(人間よりもはるかに長生きであるとされる妖怪に「年上の」という表現も変ですが......)男性、しかも超絶美形だったら......? そう、少女まんがだったら、そんな状況で恋がはじまらないわけがない! 人間と妖怪という種族の違いなんて気にしている場合じゃないのです。それどころか、ラブストーリーならば、むしろそれぐらいの障害があった方が、大いに盛り上がります!

 ということで、今回は、ヒロインが自分を守ってくれる妖怪と、恋に落ちてしまうまんがをご紹介したいと思います。

『神様はじめました』(鈴木ジュリエッタ/白泉社)

神様はじめました
●鈴木ジュリエッタ・著
●白泉社
●花とゆめコミックス既刊3巻
●定価:410~420円(税込)
花とゆめ連載中
■第4巻は9月18日発売!

 ギャンブル好きの父親を支えて、ボロアパートでつましく暮らしていた女子高生、桃園奈々生(ももぞのななみ)。ところがある日、学校から帰ると、書き置き1枚を残して父が失踪! アパートから追い出され、行くあてもなく、ひとりぼっちで途方にくれていた奈々生は、公園で犬に追いかけられていた男性を助けます。奈々生の身の上話を聞いたその風変わりな人から「ではあなたに私の家を譲りましょう」と言われ、半信半疑ながらも、藁にもすがる思いで、渡された地図に書かれている場所に行ってみた奈々生が見たものは、廃神社、そして妖怪だった......!?

 実は、奈々生が公園で出会った男性は、家出中のその社の主、土地神のミカゲ。ミカゲから土地神の印を額に託された奈々生は、何の力もない普通の女の子なのに、いきなり神様になってしまったのです! 奈々生の前に現れたお化けたちは、ミカゲに仕える神使(しんし)で白狐の巴衛(ともえ)と、社の精霊である鬼火童子(おにびわらし)たちだったのでした。

 狐と言っても、頭に耳がある以外は、人の姿をしている巴衛。白い髪に神使の衣装である白装束や、羽織袴や着流しなどの和服がよく似合う美青年です。強い妖力を持ち、妖(あやかし)としても神使としても一目置かれている巴衛。ミカゲならともかく、こんな小娘にこの俺がお仕えするなんて!とブツクサ言いながらも、神様になった奈々生の神使として、奈々生にかしずくことになりました。

 こんな美形と一つ屋根の下で暮らす! 主人として奉って誰よりも大切にしてくれる! そればかりか、料理・掃除・洗濯、身の回りの世話を全部、献身的にやってくれる! 神社でも学校でもいつでもどこでも一緒、風邪を引いたら自分に化けて代わりに学校に行ってくれる! ああ、なんて素晴らしい、なんという羨ましすぎる生活......!! 

 基本的にイジワルで、憎まれ口ばかり叩いているけれど、本当は奈々生のことをいつでも気にかけ、全力で守ってくれる巴衛に、いつしか心惹かれていく奈々生。そして、素直で一生懸命、健気な奈々生のいじらしさに、神(主人)と神使(下僕)という契約関係を越えた気持ちを感じはじめた巴衛。けれども、人間と妖怪の恋路は禁忌! 奈々生と巴衛、ふたりのほのかな思いの行く末は......?

 狐の巴衛だけではなく、スーパーアイドルにして奈々生のクラスメイト、実は天狗の鞍馬(くらま)、巴衛の昔馴染みで神使仲間の白蛇の瑞希(みずき)と、奈々生を狙う美形妖怪が次々と登場。
 そして、遠い昔、戦乱の時代に大暴れしていた、野狐だった頃の巴衛の記憶にたびたび出てくる、雪路(ゆきじ)という女性はいったい何者なのか......?

 人間・妖怪・神が入り乱れて右往左往するラブコメ『神様はじめました』、今後の展開が気になります!

『BLACK BIRD』(桜小路かのこ/小学館)

BLACK BIRD
●桜小路かのこ・著
●小学館
●フラワーコミックス既刊8巻
●定価:410~420円(税込)
Betsucomi連載中

 他の人には見えないモノが見えてしまう霊感体質に、子どもの頃から悩まされてきた女子高生、原田実沙緒(みさお)は、16歳の誕生日を境に、妖怪の姿が見えるだけではなく、妖怪から襲われるようになってしまいました。実は、実沙緒は、血肉を食べれば不老不死となり、花嫁に迎えれば一族に繁栄をもたらす、と、妖怪たちの間で古くから伝えられてきた、「仙果」と呼ばれる生け贄の宿命を背負う存在だったのです。

 実沙緒にはずっと大切にしてきた幼い日の初恋の記憶がありました。自分と同じモノが見えて、いつも優しい手をさしのべてくれた着物姿の男の子。隣のお屋敷に住んでいた彼は「いつかきっとむかえにいくから」 と実沙緒に約束して、どこか遠くに行ってしまいました。
 それからずっと空き家になっていたお隣に引っ越してきた美青年、匡(きょう)に出会い、実沙緒の胸は高鳴ります。けれども、妖怪に襲われていた実沙緒を助けに来てくれた匡の背中には大きな黒い翼が......! 実は匡は人間ではなく、強力な妖怪である天狗の烏水一族、その当主だったのです。
 他の妖怪から守ってほしければ自分の嫁になれ、と迫ってくる匡に戸惑う実沙緒。ずっと待っていたあの男の子が、この強引でしかも人間じゃない匡だったの!? と最初は猛反発していた実沙緒でしたが、自分を一心に守ってくれる匡に次第に心惹かれるようになります。

 やがて、匡もまた、初恋の相手である実沙緒をずっと一途に思い続けてきて、実沙緒を嫁にするために壮絶な努力をして当主になったことが判明。ふたりは心から愛し合うようになりますが、「仙果」である実沙緒を付け狙う妖怪が次々と現れ、その上、「仙果」の娘の嫁取りに恐ろしい秘密が隠されていることがわかって......人間であり「仙果」である実沙緒と天狗の一族を率いる匡、心と心はもう何よりも強く結ばれているのに、壮絶に前途多難なふたりの恋が幸福に実る日は来るの......!?

 第26回で、ヒロインが天狗のまんがとして、『町でうわさの天狗の子』(岩本ナオ/小学館)をご紹介しましたが、『BLACK BIRD』は天狗にヒロインが恋をする物語です。ちなみに、『町でうわさの天狗の子』の秋姫が恋をするタケルくんも、妖怪に好かれてしまうという宿命の持ち主でした。天狗と人間の恋を描いているという共通点はありながらも、ほのぼのとした雰囲気の『町でうわさの天狗の子』に対して、『BLACK BIRD』は深刻で濃厚、ハラハラドキドキしてしまうようなラブストーリーです。

 匡を筆頭とする天狗の烏水一族をはじめ、登場する男性キャラクターがことごとく美形!の『BLACK BIRD』。特に匡に仕える臣下である「八大天狗」は、実沙緒曰く、「ホストクラブ天狗」。守られるにせよ狙われるにせよ、和服の似合うハンサムな妖怪たちにいつも取り巻かれている実沙緒は何度も大変な目に遭いつつも、けっこう幸せそう......? まあ、どんなに怖い目にあっても、初恋の幼なじみで、自分のことを誰よりも愛している匡が、すぐそばにいて守ってくれているのですから、どんな苦難も乗り越えられますよね!

 「この乙女心に 人も妖怪もあるものか」とは『神様はじめました』の奈々生の言葉です。
 恋する女の子が最強なのが少女まんがの世界! 奈々生も、『BLACK BIRD』の実沙緒も、あらゆる障害を乗り越えて、きっとハッピーエンドへとたどり着いてくれることでしょう......。

 それでは、また次回!

2009年08月31日