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弘兼憲史先生 その3

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弘兼流 ワインの愉しみ方

■ 実はオタク?料理とワインを語る。

— さきほど料理の腕前はなかなかだと伺いましたが、やはり学生時代からのご経験から ですか?

弘兼:実は料理は独学で誰からも習ったことないんですよ。ただただ、料理が好きなんですね。だから、たとえば和食を食べにいくと必ずカウンターで、一番腕のいい板さんの前の席を陣取って。ほとんど話をしないで、包丁さばきを見ていますよ。料理屋では、料理以外の話はしたくないですね。馴染みの店だと、私が料理好きなことは知っていますから「いかがですか?この味は?」なんて訊きにきますよ。実は、イタリア料理調理師協会の日本支部名誉副会長を拝命しておりまして。調理師免許は持っていないんですけれどね。

—— ワインおたくと自称されるほど、ワイン通としても有名でいらっしゃいますが、一番最初にワインを飲まれたのは、いつ頃ですか?

弘兼:最初に飲んだのは大学のときです。当時は代々木上原の寮に住んでいて、目の前に 外国人ハウスがたくさんあってね。留学生から英会話を学べるので、よく遊びに行ってました。 彼らはお金がないので、下宿でホームパーティをするんですが、そのときにチーズフォン デュをよく作っていましてね。チーズフォンデュには、白ワインを入れるじゃないですか。 その白ワインを飲んで「ワイン、美味いなあ!」って。

今は、ワイン仲間とよくワインを飲むんですが、そのときはワインの話ばかりしていますね。たとえば10万円のワインを飲むときにくだらない世間話なんかしたら、「このワイン様に申し訳ない!」ってなりますよ(笑)。だからワインの歴史や、シャトーの歴史なんかを語り合うんです。ブラインドテイスティングもしますね。 
夜ひとりで真剣にワインを飲むときは、必ず格付師ロバート・パーカー氏の書いたガイドを開いて、まじめに飲んでますよ。たとえばあるワインの1989年の場合、その項目を読むと「鉛筆の削りカスのにおいがする」なんて書いてある。それで香りを嗅いでみて「この香りかぁ」と思い入れながら飲むのが、楽しくて。夜中みーんな寝静まってから(笑)

■ 電機とワイン? 〜 そして、島耕作へ

—— そうしたワインへのこだわりは、作品にも表れていますね。『島耕作シリーズ』でも、彼が部長に昇進するエピソードで、題材として扱っていらっしゃいましたね?

弘兼:趣味をそのまま、まんがに描いちゃった(笑)。島耕作がちょうど部長になった頃は、非常な不況で、電機業界も「冬の時代」とかいわれて、リストラばかりでね。ちょっと景気のいい、元気が出る話にしようって。シンデレラワイン(無名のワインが質の良さを評価され、突如高価で取引され人気を呼んだ)を題材に、投機的なビジネス話として描きました。 
「電機会社とワインて関係あるの?」と思われがちですけれど、実際に電機業の貿易部門は、ワインやウイスキーの輸入買付をしたりするんです。電気製品をヨーロッパに輸出する際、バーターとして農産物を輸入していた頃の通商慣習の名残なんですよね。三洋電機などは当時、サントリーに権利を独占されるまでロマネコンティ社のワインを扱ってましたよ。たしか、1000種類ぐらいワインを取り扱ってたはずです。つまり電機業界で本当にワインを輸入しているので、島耕作がワイン部門に異動してビジネスしていても全然不思議はないんですよ。

(第2回「弘兼憲史(後編)」~世界に誇る日本まんがの魅力~」に続く)

 

ご自身のリアルな社会人経験に基づいて誕生した『島耕作』シリーズ。28歳のデビュー以来、現代に生きる大人たちの人間模様を描き続ける弘兼先生。まんがの領域にとどまることなく多方面で活躍されているチカラの源は、旺盛な探究心と類まれなコミュニケーション力のようです。次回は「世界に誇る日本まんがの魅力」をテーマに、さらに熱く語っていただきます。

(取材協力:文化放送)

 

弘兼憲史先生篇

「弘兼先生のことをもっと知りたい!」と思ったまんてんから、さらりと、でもかなり突っ込んだ質問を投げかけてみました。先生、よろしくお願いします!

無人島に一冊だけ、まんがを持っていくとしたら?

それはもう、無人島まんがですね。無人島に関することばかりを集めたまんがアンソロジーがあるんですよ(注:星新一篇著『きまぐれ博物誌・続「アメリカ一駒漫画」』角川文庫)。無人島でどう生き抜いていくか、とか詳しく描いてある。それを持っていきますね。

好きな映画は?

スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』

好きな食べ物、嫌いな食べ物は?

白い飯。日本人ですから(笑)。嫌いなのは酸っぱいものと芋類とかカボチャとか。一般的 に女性が好きな食べ物が苦手なようです。

仕事中のBGMは?

ずっと有線をかけてます。ジャズが多いかな。あと60年から70年代の歌謡曲も聞きますよ。 園まりさんとか伊東ゆかりさんとか。

仕事中の気分転換は?

料理と食材の買い出し。あと、夜中にネギとか玉ネギを大量に刻むこともあります。目も覚めるし。凝り性なので上手なネギのきざみ方とか研究したり(笑)。

学生時代の得意な教科は?

図工と国語。自慢じゃないですが、中高通してこの2科目はトップでした(笑)。

今、手塚治虫先生に会ったらどうしますか?

(間髪入れずに)サインもらいます!お会いしたことはあったのですが、サイン貰うのを忘 れてたんですよ。緊張しっぱなしで。失敗したぁ。

今、会いたいタレントさんは

井川遥さん。子どもの頃は、吉永小百合さんのファンでした。

好きな街は?

麻布、青山。ときどき新宿にも行きますね。

好きなブランドは?

以前はアルマーニが好きでよく着ていたのですが、そろそろイタリア系は卒業かなと。最近は和光やバーバーリーなど英国調の服装が多いですね。

ちなみにこの日のファッションは、ピンクの針が印象的なフランク・ミュラーのリストウォッチに、さりげなく色を合わせたピンクのステッチの入ったジャケット。かなりのお洒落上級者とお見受けしました。ミーハーな質問にも快く応えて下さった弘兼先生、ありがとうございました。

弘兼憲史プロフィール

弘兼 憲史(ひろかね けんし) 1947年、山口県生まれ。

早稲田大学法学部卒後、松下電器産業本社に勤務。25歳の時にま んが家を志し、退職。1976年、まんが家デビュー。以降、代表作となる『島耕作シリー ズ』『黄昏流星群』など、団塊の世代や現代社会に生きる大人たちの様々な葛藤や恋愛を中 心に、多様な人間模様を描き続けている。 1985年『人間交差点』で第30回小学館漫画賞、2000年『黄昏流星群』で第4回文化庁メ ディア芸術祭優秀賞、2003年日本まんが家協会大賞を受賞。

2006年11月03日