まんが☆天国 TOP > まんがのチカラ >  『柴田ヨクサル先生』 その3

『柴田ヨクサル先生』 その3

ヤングアニマルでの『エアマスター』の連載終了後、『ハチワンダイバー』をヤングジャンプで連載開始し、多くのファンを驚かせた柴田先生。そんな先生は、週刊少年ジャンプで連載していたキン肉マンの世代だそう。先生にとって週刊連載とは何なのか、そして『ハチワンダイバー』はどのようにして誕生したのかを教えていただきました。

<<『柴田ヨクサル先生』 その2

『柴田ヨクサル先生』 その4>>

『ハチワンダイバー』は往年のジャンプファン必見!!

――それまでヤングアニマルで2本の連載を成功させたわけですが、次の連載がヤングジャンプと聞いて、多くの読者が驚きました。これには何か理由がおありになるんですか?

柴田:やっぱりできるものなら、週刊連載というものをやってみたかったんですよ。僕らが子どもの頃に読んでいたまんがって、全部週刊じゃないですか。だから週刊連載が輝いて見えるんですよね。かっこいいな、と。

――子どもの頃、ジャンプの発売日を毎週楽しみにしてましたもんね。

柴田:そうなんですよ。もっとも、今はもう辛くて辛くてキュウキュウ言ってます。ツラいです、週刊。さすが週刊(笑)。

――ちなみにヤングジャンプ編集部とは、どういう形で巡り会ったんですか?

shibata0006

柴田:ヤングジャンプで『GANTZ』を連載している奥浩哉先生と友達なんです。それで、ちょうど『エアマスター』連載時だったと思うんですが、奥先生と先生の担当さんと僕の3人で飲みに行く機会があったんですよ。

――なるほど。その出会いがヤングジャンプへの連載につながるわけですね。しかし、先ほど先生も仰っていましたが週刊連載は辛いですよね。躊躇などなかったんですか?

柴田:僕らの世代からすると、「ジャンプ」って付いているだけで、ワクワクするじゃないですか? そういうレベルの高い、憧れのステージで、自分の実力を試したいって思いませんか? 週刊連載なんて若いうちしかできないですし。というわけで、『エアマスター』終了後、ヤングジャンプでの連載となりました。

――そこからトントン拍子で『ハチワンダイバー』という形になったんですか?

柴田:いや、それが、扱うモチーフが「将棋」ということで、かなり苦労したんですよ。あまりにマニアックすぎて「このままだと連載は難しい」ということになってしまいました。

――将棋まんがということは、当初から決めてしまっていたんですね?

柴田:そうですね。小学6年生で将棋のプロを目指すのは諦めていたんですが、その後も、インターネット将棋とかで、将棋自体は続けていたんでよね。それで、いつかは将棋まんがを描こうと思っていたんです。

――なるほど! 一読者としては「なんで将棋?」という感想を持ったんですが、先生からしてみたら「満を持して」という意気込みがあった、と。

柴田:ただ、難しいジャンルでしたね。僕は将棋が大好きすぎて、将棋を描きすぎてしまうんです。そうすると、将棋を知らない人に通じない内容になってしまうんですよ。このバランスを取るのにすごく苦労しました。

――私は分からないなりに面白いと思うんですけど、それだけで引いちゃう人も多い?

柴田:そうですね。格闘技まんがだと、絵を見ただけでどっちが勝っているか丸わかりなんですが、将棋まんがだと盤面を見せても、普通の人にはどっちが優勢か分からないんです。だからそこはセリフでやるしかない。

――そこに、『谷仮面』時代からのノウハウが生きてくるんですね?

shibata0007

柴田:そうですね。セリフとか、テンポとか、大コマの持ってきかたとか。盛り上がっている場所を読者に分かりやすく伝える工夫をしています。

そしてその上で、メイドですね。作品をどうするかで、かなり煮詰まっていたんですが、メイドを出すと決めた瞬間に、全てが上手く回り始めました。

――『ハチワンダイバー』最大の個性というか、見どころですよね。しかし、そんなことを思いついたのはどうしてなんですか?

柴田:それまでのネームが3本立て続けに没になって、苦し紛れに「女性キャラだしましょう」ってことになったんですよ。で、僕ももう、かなり参っていたので、おっぱいも大きくして、話題のメイドをプラスして、もうこれで勘弁してくださいって(笑)。

――考え得る「サービス」を全部入れてみた?

柴田:そうそう(笑)。そうしたら担当さんから「振り切りましたね」ってOKがもらえたんです。

本当は、3巻から出てくるキリノと、その師匠の澄野が主人公の予定だったんですよ。男2人のバディ物みたいなのを考えていたんです。『傷だらけの天使』のショーケン&水谷豊みたいなテイストを狙っていたんですけど、結果的にこういうことになりました(笑)。

――そうして連載が始まったんですね。ところで、連載当初は菅田を主人公として登場させたのではなかったという噂を聞いたのですが、本当ですか?

柴田:彼は最初、説明役のつもりでだしたんですよ。僕はテリーマン(『キン肉マン』のキャラクター)って呼んでいるんですけど。説明が必要なシーンでしゃしゃり出てきて、ぜんぶ言ってくれるみたいな(笑)、そういう位置づけのキャラにするつもりだったんです。

ところが、僕、テリーマンが大好きなんですよね。それで「もっとがんばれよ!」「もう少しやってみろよ!」とかハッパをかけているうちに、いつの間にか自ら「ハチワンダイバー」を名乗って主人公になってしまったという……。

本当は「ハチワンダイバー」というのは、真剣師全体の総称のつもりだったんですが、筆がすべりましたね(笑)。

――そんな裏話があったんですね。

ハチワンダイバー第1巻

柴田:1巻の表紙が菅田じゃないのがその証拠です。1巻を描いているときは、いつ本当の主人公であるキリノたちを出そうか、ずっと考えてましたからね。

――ストーリーに関して、気を使っていることはありますか?

柴田:視点ですね。今のところ全体を俯瞰した視点では描いていないんですよ。ほぼ全て、菅田の視点で描いています。でも、当初考えていたキャラクターがそろってきたので、そろそろ全体の視点で描いたり、別のキャラクター、たとえば澄野の視点で描いたりとかしてみても面白いかもしれません。

――仲間がそろってこれからが本番ということですね。

柴田:ジャンプ的に言うと、味方チームがそろったというところですね。やっぱり好きなんですよ、そういうのが。伝統ですよね。最初は敵だったのが味方になるとか、グッと来ますね。「あいつが味方に!?」ってのがたまらない(笑)。

――『ハチワンダイバー』はジャンプ世代にこそ読んでもらいたい?

柴田:読んでもらいたいです。でも、そのためには将棋の部分をもうちょっと落とさないといけませんね。そこが難しいところで。

――でも、やっぱり「将棋の面白さ」も伝えたい気持ちが強いんですよね?

柴田:そうですね。ただ、その気持ちが強くなりすぎて、どうにもやり過ぎてしまうんですよね。担当さんがブレーキをかけてくれるので、なんとかなっていますが……。

担当さんが将棋をあまり知らない方だったのが良かったですね。担当も作者も将棋好きなんてことになると、きっとダメになっていたと思うんですよ。どんどん深いところに沈んでいっちゃうような気がします。

――ダイブしちゃうんですね。

柴田:それこそ、将棋専門誌に連載しろって話で(笑)。

――専門誌を読むような将棋ファンの方から、何か反応はありましたか?

柴田:連載開始直後に、実際の真剣師の方からお手紙をいただきました。その方はすごく有名な方で、『ハチワンダイバー』は、その人の書いた本をかなり参考にした面もあるんですが、その人から手紙が来たんです。

――それはびっくりですね。どんなことが書かれていたんですか?

柴田:あんな真剣はないよ、って(笑)。具体的には、実際にお金を見せて真剣はしないとか、そういうことを指摘されました。いや、僕としてもあれは演出としてああしただけで、そのあたりは分かっていたつもりなんですけどね。

ハチワンダイバー「真剣」
真剣の際にお金を見せている様子
(『ハチワンダイバー』第1巻19ページより)

柴田ヨクサルプロフィール

柴田ヨクサル(しばたよくさる) 1972年、北海道生まれ

1992年、ヤングアニマルにて『谷仮面』でデビュー。学園ギャグまんがの主人公がなぜか仮面をかぶっているという独特の設定が話題となった。その後同誌で格闘まんが『エアマスター』を約10年にわたり長期連載し、テレビアニメ化もされた。現在は活動の場ををヤングジャンプにうつし、将棋まんが『ハチワンダイバー』を連載中。魅力的なキャラクターやスピード感のあるテンポの良い展開が、将棋を知らない層からも支持を集めている。


「まんがのチカラ」次回予告
駒を描いているだけでも楽しい。それほどまでに柴田先生が愛する将棋に今、危機が迫っている! 将棋人口の減少や第三の勢力の台頭…。そんな中、子どもの将棋人口増加のために、『ハチワンダイバー』で注意している点があるとか。それは一体何なのか…? 先生の将棋への思いをお届けする次回(2008年8月4日掲載予定)が柴田先生編最終回! お見逃し無く。

2008年07月28日