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『克・亜樹先生』 その2

今やラブコメの名手である克・亜樹先生の連載デビュー作は、なんとアクションまんが。学生時代からラブコメを描き続けてきた先生の連載デビュー作が何故アクションまんがとなったのか? そこからどのようにして出世作であるラブコメ『はっぴぃ直前』につながっていったのか? 先生自ら語ってくださいました。

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『まぼろし佑幻』で連載デビュー、そして……

――今回は、先生のデビュー後のお話を聞かせてください。前回、最後に「Wikipedia」の記述について触れましたが、そこには「1983年、在学中に第88回HMCトップ賞を受賞した「メアリー♥ララバイ」が『花とゆめ増刊』(白泉社)1983年5月号に掲載されデビュー、そのまま連載作品を持つ」とも書かれています。

克:そうですね。これは合ってます。

――先生はアシスタント経験なしに、いきなりプロデビューされたということですか?

克:そうですね。デビュー当初はアシスタント経験がありませんでした。ただ、その直後、担当編集者が同じ人だったという縁で、島本和彦先生のアシスタントを何回かやらせてもらっています。

――デビュー直後というと、島本先生が『炎の転校生』(少年サンデー掲載)を始められたころですか?

克:『炎の転校生』と『風の戦士ダン』(原作:雁屋哲先生)の頃ですね。

――初めて参加するプロの現場はどうでしたか?

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克:良くも悪くもメチャクチャで面白かったですよ。平気で3日くらい徹夜したり、今じゃ考えられないですね。ただ、それを乗り越えたときは「これに耐えられたんだから、俺はプロとしてやっていけるな!」って妙な自信がつきました(笑)。

もっとも、実際に連載を持ってみると、「いや、あんな苦労はしなくてもいいんじゃないか?」って思いましたけどね。最初から、早め早めにやってけばいい話で(笑)。

――島本先生のスタイルをマネしちゃいけない、と?

克:そういうわけではないんですが(笑)。でも、すごい勉強になりましたよ。島本先生は本当に、ギリギリのギリギリまで作り込むんですよ。描き終わってヘトヘトになっているところで「やっぱりダメだ!」って叫んで、やり直しだしたり……。怖いと思う反面、本当にすごいと思わされましたね。まんがの通り熱い人でした。

だから、そんなに長期間お手伝いしたわけじゃないんですけど、僕は島本先生の弟子ってことにしてもらってます。島本先生がインタビューなんかで、お弟子さんについて聞かれた時に僕の名前を挙げてくれたことがあったのですが、それは本当にうれしく思っています。

――短期間でも学ぶところは大きかったのですね。では次に、そこから連載を勝ち取るまでのお話を聞かせていただけますか?

克:ラブコメでデビューしたこともあって、その後もずっとラブコメを描いていたんですけど、当時、少年サンデー誌上には、ほかに強力なラブコメ作品が多かったんですよね。中でも一番だったのが、『人類ネコ科』(少年サンデー増刊号に掲載)のみず谷なおきさん。

それで、当時の担当に「みず谷先生を超えるラブコメを描けるか?」って聞かれたんですけど、それはやっぱりムリですよね(苦笑)。みず谷先生は、残念ながら1999年に亡くなってしまいましたが、今読んでも色あせていない、素晴らしいセンスの持ち主でした。本当に可愛い女の子を描くんですよ。

まぼろし佑幻

僕の連載デビュー作品『まぼろし佑幻』(少年サンデー増刊号に掲載)がアクション系なのは、先の問いに「ムリです」って即答した結果、「じゃあ、ラブコメ以外のものを描け」ってことになったからなんです(笑)。

――でも、『まぼろし佑幻』完結後、少年サンデー本誌で連載開始し、先生の出世作となった『はっぴぃ直前』はラブコメ作品ですよね?

克:そうですね。本当はやっぱりこのジャンルに思い入れがあるんですよ。それで『まぼろし佑幻』を描いているうちに、��っぱりチャレンジしたくなって描かせてもらいました。

はっぴぃ直前

――『はっぴぃ直前』は、意志薄弱な受験生(男)と真面目な家庭教師(女)のラブコメですが、これはどういうところから発想されたんですか?

克:増刊少年サンデーでの初掲載作品『ルピア!』が超能力学校に通う落ちこぼれの男の子と年上の女性家庭教師のお話だったので。それと、アニメの『宇宙戦艦ヤマト』みたいな、「あと○日」っていうのをやってみたかった(笑)。

――あれはヤマトが元ネタだったんですか!

はっぴぃ直前 コマ
『はっぴぃ直前』より

――さて、そんな待望のラブコメ作品をついに連載し始めたわけですが、やはりやるからには「打倒・みず谷なおき先生」みたいなことは考えておいでだったんですよね?

克:いやいや、そういう気持ちは全くなかったです。そのころには、みず谷先生とすごく仲良くなっていて、休みに一緒に海外旅行に行くとか、まんがを越えた友達関係になっていましたし。

符法師マンダラ伝 カラス

あと、みず谷先生は、『人類ネコ科』の連載終了後もずっと少年サンデー増刊号などの月刊誌で執筆していたので、直接同じ雑誌でぶつかることがなかったんですよ。少年サンデー増刊号には僕も描いていたんですが、『符法師マンダラ伝 カラス』というアクション作品だったので、やっぱりかぶることはなかったですね。

――なるほど。ちなみに、『符法師マンダラ伝 カラス』で、またアクション作品に戻っていますが、これは何か理由があるんですか?

克:やっぱり同じものばっかり描くのはつらいんですよ。週刊でラブコメ描いて、月刊でアクションを描くってのが、飽きないという意味でいいかな、と。

――ラブコメだけ描いていると飽きてしまう?

克:そうですね。いろいろな作品を描きたいと思っています。ただ、異世界ものはあんまり得意ではないので、基本的には現代劇になると思いますけど。

現実世界にこだわると表現の幅が狭くなるって思われるかもしれませんが、ラブストーリーひとつ取っても、まだ描いていない、描きたいエピソードがたくさんあります。書き尽くすということはないんじゃないかなぁ。

あと、最近、女の子を描くのが楽しくなってきました。実は、これまで女の子を描くのがあんまり好きじゃなかったんですよね。でも、歳を取ったからかな、最近では、憧憬の念を持って女性を描けるようになってきた気がします(笑)。

こないだから、スーパージャンプで『毒×恋 DOKUKOI』という新連載を始めたんですが、『ふたりエッチ』(ヤングアニマル連載中)とは、全く異なるタイプのキャラが出せるのが楽しいですね。

――先生が女性キャラを描くのが好きではなかったというのは、とても意外です。ところで、先生はまんがのキャラクターをどうやって生み出すんですか? モデルがいたりするのでしょうか?

克:モデルはいないですね。作品の流れや目的をしっかり考えていくと、自然とキャラクターの形が決まってくるんですよ。たとえば『ふたりエッチ』の場合は、お話ごとに必ずテーマがあるから、その流れにそって作っていくんです。

――ストーリーが先にありきなんですね。

克:もちろん、これまでに出てきていないタイプの女の子を出したい、とかは思うんですが、意味なく登場させることはできないんです。特に『ふたりエッチ』の場合は、その娘で何本かデータを絡めたお話が作れないようではダメですね。

星くずパラダイス

あ、でも全部が全部そういうふうに作っているわけではないですよ。『星くずパラダイス』(少年サンデー掲載)のころは、とにかくムチャクチャな芸能人を出したいって、あまり後先を考えずに出していたようにも思います。

――『ふたりエッチ』のヒロイン、優良さんはどういうふうに作り込んでいったのでしょうか? やはり前者のような形ですか?

克:『ふたりエッチ』を始める直前に、集英社で『ダイナマイト・ピーチ』(ベアーズクラブ掲載)という作品を描いたんですよ。僕としては初のエロコメ作品で、はちゃめちゃなお姉さんに弟が振り回されるという話だったんです。

ところが、その作品がアンケートで万年2位だったんですね。どうしても1位が獲れなかった。で、1位のまんがはヒロインが大和撫子風というか、正統派だったんですよ。それで、『ふたりエッチ』では、1位を獲るという目的のもと、意識的にそういうヒロインを狙ってみました。

――『ふたりエッチ』は、当初から1位を狙っていたんですか?

克:やっぱり悔しかったんでね。あと、当時の自分にそういう流れが来ていたというか、なんとなく狙わないとな、って気がしたんですよ。

――ちなみに、ヤングアニマルにおける『ふたりエッチ』のライバルはどの作品でしょう?

ホーリーランド

克:ライバルとは違うと思うのですが、『ベルセルク』(三浦建太郎先生)は面白いですよね。掲載誌が送られてくると、まず自分の作品より先に読みますから(笑)。あと『デトロイト・メタル・シティ』(若杉公徳先生)も楽しい。

終わってしまいましたけど『ホーリーランド』(森恒二先生)も素晴らしかった。あの作品は「��ングアニマルの魂」でしたよ。ああいう作品があるとないとでは、雑誌のパワーが変わってきますよね。次回作にも期待してます。

――ライバルというよりファンですね。

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克:そうですね(笑)。

克・亜樹プロフィール

克・亜樹(かつ・あき) 1961年、福岡県生まれ

1983年に白泉社、小学館のまんが賞に入賞。1985年に少年サンデー増刊『まぼろし佑幻』で連載デビュー。その後、少年サンデー本誌で『はっぴい直前』や『星くずパラダイス』などのラブコメ作品を連載し、ほのぼの系ラブコメの第一人者として名をあげた。現在は活動の場を青年誌に移動。1997年から連載開始した『ふたりエッチ』ヤングアニマルヤングアニマル嵐)が単行本発行部数2200万部(累計)を越えるメガヒットを記録している。


「まんがのチカラ」次回予告
週刊連載+月刊連載で月産ページ数は100ページにもなるという克・亜樹先生。さすがに休みはほとんどないものの、徹夜はせずに毎日午後6時半には必ず仕事を終えるというその仕事術に迫ります! そして100ページものまんがを描く動機である「刷り込み」についても教えていただきました。次回は2008年8月25日掲載予定。お楽しみに!

2008年08月18日