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『克・亜樹先生』 その4

克・亜樹先生編最終回となる今回、いよいよ大人気作品『ふたりエッチ』について語っていただきました。10年以上の連載になるにも関わらずネタに困ることはないという『ふたりエッチ』が、この先目指すものとは一体何なのか!? そして最後に、この先描いてみたい作品についてちょっとだけ教えてもらいました。

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『ふたりエッチ』はエッチまんが界の『○○○』!?

――今回は、最後ということで克・亜樹先生最大のヒット作『ふたりエッチ』(1997年より、ヤングアニマルで連載開始。現在も連載中)についてじっくり聞かせてください。この作品はどういうところからスタートしたものなんですか?

ふたりエッチ 第1巻

克:最初のきっかけは、ヤングアニマルの担当が「エッチなのをやりませんか?」って声をかけてくれたことですね。

でも、そのときは「エッチなのは売れないからな~」って及び腰だったんですよ。エッチなまんがはどうしても限界点があるんですね。スポーツまんがとかは当たると大きいんですが、エッチまんがはそこまでいかないんです。だって、単行本とか恥ずかしくて買えないじゃないですか?(笑)

――そうですね(笑)。

克:一番最初の打ち合わせで、担当にその話をしたら、「じゃあ、誰にでも買えるエッチなまんがを考えよう」ってことになったんですよ。そこで思いついたのが「データを入れてみよう」ってこと。

――データ要素を入れることで、手に取りやすくしようと考えたわけですね。

克:そうですね。あと、『まぼろし佑幻』の巻末にみっちりと催眠術のデータを入れているように、僕個人がもともと「データ」ものが好きだったっていう理由もあります。それと、そのときは1話16ページという依頼だったので、短いページ数でうまくまとめるためにはデータを入れていくのがいいかなって考えたんです。

それで、何となくのネームを描いたら、思いのほか担当がおもしろがってくれたので、あの形が確定しました。ただ当時は、ここまでデータが重要な作品になるとは思ってなかったですね。第1話のお見合いのデータなんかは、ギャグの一環のつもりでしたから(笑)。

――予想以上に重要な要素になってしまったんですね。ちなみに、あの膨大な量のデータはどうやって入手しているんですか?

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克:今は新聞ですね。僕が3紙、アシスタントが1紙取って、使えそうなネタを切り抜きしてスクラップにしています。もう10年くらいやっているかな。そういう情報は毎日載っているわけではないんですが、それでも年に1冊くらいの分厚いスクラップブックになりますね。

あとは、ネットで調べたり、図書館に行って勉強したりしてますよ。さすがに1行引用するために本を買っているとキリがないですからね。

――図書館の司書さんは、先生の正体はご存じなんですか?

克:いや、知らないですよ。だから変な本ばっかりコピーしているおかしな人だと思われているかもしれませんね~。あと、やっぱり自分の体験も入っていますよ。どれとは絶対言えませんけど(笑)。

――あらゆる手段を駆使してネタを集めているんですね。とはいえ、さすがに10年以上もやっているとネタに困ることが多いんじゃないですか?

克:いや、世の中の「性事情」がどんどん変わっていくので、それに合わせる形で、描きたい事も増えていきますね。

たとえば序盤の方で、主人公の真が“起たなくなる”エピソードがあるんですけど、その後「バイアグラ」が登場したことで、また別の切り口で同じ話を描けたりとか、ネタ自体にはあまり困らないんですよ。「スローセックス」のような新しいブームも定期的に発生しますし。

――なるほど。そういわれてみるとそうですね。ということは、『ふたりエッチ』は永遠に続けられる?

克:そうですね。やめろと言われるまでは描けるんじゃないかな。編集部からはエッチまんが界の『こち亀』(こちら葛飾区亀有公園前派出所/秋本治先生)を目指そうとか言われていますよ(笑)。

――なるほど、確かにそういうポジションで���よね、今や。ところで、下世話な話なんですが、『ふたりエッチ』ってどれくらい売れているんですか?

克:今は合計で2200万部くらいかな。始めた当初は「10万部を目指そう!」とか言っていたので、ここまで行くとは思いもしませんでした。1巻を出してから、5年間くらい、毎月重版がかかったってのも初体験です。結局、1巻だけで100万部突破しているのかな?

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ヤングアニマル編集部にしても初体験だったようで、お互いに「売れるってこういうことなんだ!」ってただただ感心した記憶がありますよ。もはや数字としては理解不能な域ですよね。今、ほとんどの携帯コミックサイトでも1位だと聞きましたが、ぜんぜんピンとこない(笑)。なんでも女性部門でも1位らしいんですよ。

―― 一般的な男性向けエッチまんがや、どんどん過激になっている女性向けエッチまんがと較べて、ソフトで読みやすくて、ほのぼの系なところがウケているんじゃないでしょうか? 私のまわりにも、実際、先生のそういう点を評価している女性ファンが多いですね。「先生の描く作品には、女性に対する思いやりが底辺にある」って。

克:ありがとうございます。でも、そういう話しか描けないんですよ。自分の性格は変えられないんで、どうしてもほのぼのしちゃうんです。

あと、やっぱり自分が「こんなオチはイヤだ!」って思うような話は描きたくないんですよね。スーパージャンプで連載中の『毒×恋 DOKUKOI』は、ちょっとヘビーな作品なのですが、僕の中では救いがあるようにしているんです。

――ちなみにこの先、描いてみたい作品はありますか?

克:最近、久しぶりに普通のラブコメを描いてみたいな~って思います。

――それは少年誌、たとえば少年サンデーとかに?

克:そうですね。少年誌には、もちろん描きたいです。でも一度、青年誌に描くと、どうしても少年誌が物足りなく感じるようになっちゃうんですよね。やっぱり、読者の年齢層が低いと伝えられることの幅が狭くなっちゃうじゃないですか。

――やっぱり読者層を強く意識されているんですか?

克:僕は、まんがを描く時、かなり明確に読者層を設定するんですよ。『はっぴぃ直前』は完璧に中学生。男子中学生に対する自分のメッセージをできる限り盛り込みました。対して、同じ少年サンデーでも『星くずパラダイス』は、小学生向けですね。夢見る小学生に楽しんでもらいたかったんです。

でも、そうすると、やっぱり「これは小学生にはわかんないな」とか、自分でためらっちゃう面がでてきちゃう。

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あと『ふたりエッチ』が良かったのは、そうやって自分で設定した読者層が、想像以上に広がったことですね。描き始めのころは、エッチ未体験の人とか、独身男性を対象に考えていたんですが、徐々にカップルとか、新婚さんとか、どんどん読んでもらえるようになっていったのが新鮮でした。最近では年配の方や、親子二代で読んでくださっている方々がいるとも聞いています。少年誌ではさすがにそういうことはあまりないですよね。

――なるほど。確かに、表現の幅はもちろん、より多くの人に読んでもらおうと思ったら青年誌の方が良い面はあるのかもしれません。
では、克・亜樹先生の「普通のラブコメ」を期待してますね!!

克・亜樹プロフィール

克・亜樹(かつ・あき) 1961年、福岡県生まれ

1983年に白泉社、小学館のまんが賞に入賞。1985年に少年サンデー増刊『まぼろし佑幻』で連載デビュー。その後、少年サンデー本誌で『はっぴい直前』や『星くずパラダイス』などのラブコメ作品を連載し、ほのぼの系ラブコメの第一人者として名をあげた。現在は活動の場を青年誌に移動。1997年から連載開始した『ふたりエッチ』ヤングアニマルヤングアニマル嵐)が単行本発行部数2200万部(累計)を越えるメガヒットを記録している。


2008年09月01日