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『楳図かずお先生』 その2

ファン待望の楳図先生の「最新作」は、先生自らメガホンを取っての映画であることが発覚! 脚本も書き下ろしで、正に、先生の「最新作」です。今回は、前回に引き続き、その「最新作」のお話を伺うとともに、作品を作る上で最も大切だという「オリジナリティ」についても教えていただきました。

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最も大切なのは「オリジナリティ」

――前回に引き続き、先生の「新作映画」について教えてください。
先生はこの作品で映画監督に初挑戦されるわけですよね。

楳図:はい、でも自信はありますよ。僕には映画監督としての経験こそありませんが、まんがを描きつづけてきたことで、全体の流れを考える能力は身についています。また、役者としていくつかの映画やCMに出演した経験から、演技者の立場に立った指導もそれなりにはできるんじゃないかと思っています。

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ただ、カメラの知識が全然ないんですよね。たとえば「カット割り」(ひとつのシーンを複数カメラでどのように撮り分けるか)という言葉があるんですが、NHKの『わたしが子どもだったころ』で、監督初挑戦した際、これが分からなくて困りました。そこで先日、私が出演している映画『グーグーだって猫である』(大島弓子先生原作/2008年9月公開)の犬童一心監督にそのへんを教えてもらいました。

ただ、そういう知識的なこと以外は大丈夫な気がするんですよ。事実、『わたしが子どもだったころ』での監督初挑戦は上手くいったと思いますし。

――やはり物語を作るという点では映画もまんがも同じであるということですか?

楳図:そうですね。めちゃくちゃ通じていますよ。

――気の早い話ですが、映画の公開予定はいつ頃でしょうか? またタイトルは決まっているのでしょうか?

楳図:まだ決まってないのですが、公開は来年以降になると思います。タイトルも未定なのですが、僕の中ではだいたい決まっています。まだちょっと言えませんけどね。しかるべき時期が来たらお話しできるようになると思います。

――そうすると、来年は初監督映画のプロモーションということで、今年以上に楳図先生をいろいろな場所で見られるようになりそうですね。

楳図:そうなると思います。ちなみに、プロモーション用というわけではないんですが、すでに映画のイメージが伝わるような絵は描いてあるんですよ。プロデューサーに送ってあるので、今後どこかで使われることがあるかもしれませんね。

――まんが家の監督ならではのプロモーションですね。近いうちにどこかで見られることを期待しています。ちなみに作品の客層は、どのあたりに定めていらっしゃるんですか?

楳図:なにより私の新作を待ち望んでくださっていたファンの皆さんですね。そして、それをふまえた上で、それ以外の方にも楽しんでいただきたいと考えています。できれば、海外にも出していきたいですね。

――前回、映画では日本の現代社会の病んでいる部分を描くというお話をお伺いしましたが、そのテーマは海外でも通用するものなのでしょうか?

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楳図:海外でも絶対に通用します。すべての人間に共通する心理の深い部分を表現した作品になっているので、国は関係ないと考えています。

Jホラーとか、アメリカのホラーとか、そういう枠にとらわれない、もっとオーソドックスで根源的なホラーを目指しているんですよ。「ホラーの王道」っていう感じの作品にしたいですね。

――なるほど、期待しています。ところで先生は映画はよくご覧になるんですか?

楳図:そんなにたくさんは観ないんですけど、映画は好きですよ。『インディ・ジョーンズ』みたいなアクション映画も好きですし、『タイムマシン』みたいな正統派SFも好きです。この間、電気屋さんのテレビに『キングコング』が映っていたのを観たんですが、CGの使い方を見ているだけで楽しかったですね。

――人づてに聞いた話なんですが、スタジオジブリのアニメもお好きだそうで。

楳図:ジブリのアニメは、キャラクターの動かし方が大変上手なので、その表現力にはとても感心しています。ただ、物語のオリジナリティに少々問題があるように思うんですね。もっとも、これはジブリだけの問題ではなく、日本の映画界全体が抱えている問題だと思うんですが。

――厳しいですね……。では、先生にとって「オリジナリティ」とは?

楳図:「絶対にほかにないもの」ですね。ほかにあるものを作ってもあまり意味がない。

――それはそうだと思うんですが、人間、やっぱりいろいろなものから影響を受けちゃいませんか? 完全なオリジナルを生み出すというのは大変なことだと思います。

楳図:そうですね。だから僕は映画もまんがも小説も、なるべく見ないようにしているんです。見た上でオリジナリティを保つのは難しいですし、オリジナルであろうとして既存の作品を避けた結果、世界が狭くなってしまうのが怖い。ほかの作品を見た瞬間に自由でなくなってしまうんです。

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人の作品を見て、自分風に変えようとか、どうやったら違いを出せるのかとか苦労するのってばかばかしいですよ。

じゃあ、どうやってオリジナリティを生み出すかというと、まだこの世に生まれていないもの、今はまだこの世になくて、そのうち生まれるだろう、起きるだろうってことを考えるんです。要するに「先取り」ですね。これが一番新しい。

――なるほど! そう言われてみると『わたしは真悟』も『14歳』も、当時にしてみると時代の「先取り」でした。

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楳図:みんな、まんがや映画、テレビや新聞を一生懸命見ますよね。それって単なる気晴らしでもあるんでしょうが、その裏には、そこに将来の不安を避ける「手がかり」が隠されていないかを探す気持ちがあると思うんですね。また、創り出す側も、無意識的にそういう気持ちを持って作品を創っているように思います。

人間は、作り手も受け手も、そういう「この先どうなるんだろう」ってことを心配し続けている生き物なのではないでしょうか?

――それゆえに、そうした不安を解消してくれる作品が人気を博するということなんですね。

楳図かずおプロフィール

楳図かずお(うめずかずお) 1936年、和歌山県生まれ

高校卒業後の1955年、中学生時代に描いた『森の兄妹』で貸本まんが家デビュー。その後、1960年代に独自の「恐怖まんが」というカテゴリーを確立し、『赤んぼ少女』(1967年/少女フレンド)や『おろち』(1969年~/週刊少年サンデー)は映画化もされた。「恐怖まんが」のほか、SF作品も積極的に発表しており、『漂流教室』(1972年~/少年サンデー)や、『わたしは真悟』(1982年~/ビッグコミックスピリッツ)、『14歳』(1990年~/ビッグコミックスピリッツ)などが人気を博した。1976年~1981年まで週刊少年サンデー誌上にて連載されたギャグまんが『まことちゃん』も人気が高い。


「まんがのチカラ」次回予告
今回、作品作りにおいて大切な「オリジナリティ」についてお話くださった楳図先生。その「オリジナリティ」を追求し作品を生み出すことの苦しさを、なんと小学生の頃には体験していたそう。次回(2008年9月22日掲載予定)は、そんな先生がまんがに目覚め、プロデビューに至るまでの道のりをお届けします。お楽しみに!

2008年09月16日