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『石川雅之先生』 その3

菌に関するたくさんの豆知識、単行本の個性的な欄外アオリ、他誌・他作品への出張出演と、話題豊富な『もやしもん』。そんな『もやしもん』を制作する上での、石川先生の取材術、欄外アオリを書く担当編集者の遊び心、講談社の懐の深さなど裏話を大公開です。

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『もやしもん』制作秘話

――前回に引き続き『もやしもん』について話を聞かせてください。
 先生は、『もやしもん』を描くにあたり、学生さんを中心に取材をされたとのことですが、作中に登場する専門知識については、どのように学ばれたのでしょうか? 難しい書籍などを読まれたりしたんですか?

もやしもん

石川:真面目な学生が4年かけて悩み続けるような難しい本、読めるわけないじゃないですか(笑)。それに、僕はためになるまんがを描きたいわけではないので、とにかく面白い部分だけをついばんでいくという作業に専念し、そのために必要な取材だけをしました。

面白そうなモチーフを見つけ出したら、それに詳しい人に話を聞きに行くという形ですね。『もやしもん』には、お酒とか発酵食品の話がでてくるので、バーテンダーとかソムリエとか、あと酒蔵や醤油蔵など、発酵食品関連で行けるところは全部行っています。

――取材をするときって、「まんが家なんですが取材させてください」とかお願いするものなんですか?

石川:そうしたら、何描いてるのって聞かれるじゃないですか。まだ何も描いてないのに、そんなこと言ってもなにも教えてくれませんよ(笑)。だから、こちら側の事情を聞かずに見学させてくれるところを探すというところから始めました。

――その方が取材内容がまんがにならなかった場合にも、相手をガッカリさせずに済みますもんね。

石川:いやいや、その頃にはもう連載開始まで2、3ヶ月くらいしか残されてませんでしたから、何が何でもネタを見つけ出さなきゃって、必死になってましたよ! 「まんがにならなかった場合」なんて考えてもいませんでしたね。

――そ、それは失礼しました。では、そんな切迫した状況の中、『もやしもん』のキーとなる、主人公・沢木の「菌が見える」という設定を思いついたのはどんな時だったんですか?

石川:和歌山の高垣酒蔵さんというところに日本酒の取材に行ったとき、杜氏さんが「僕らは菌の寒いとか暑いとか、そういう声を聞いてお酒を作るんだよ」と仰っていたんですね。それを聞いて、じゃあリアルに菌の姿が見えて、声が聞こえるヤツがいてもいいんじゃないか、って思ったんです。それが沢木の能力を思いついたきっかけですね。

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ちなみに余談なんですが、実は僕、それまで日本酒が大嫌いだったんですよ。高垣酒蔵さんに取材したのもあくまで仕事だからだったんです。ところが、そこで飲ませてもらった日本酒がすごく美味しかったんです。自分の認識が根本的に間違っていることを思い知らされました。

――まさに単行本2巻のエピソードそのままですよね。取材で得た知識や体験が作品に活かされているんですね。では次に、連載開始後のお話を聞かせてください。
 『もやしもん』は、連載第1話でのタイトルが『農大物語』だったのが、いきなり第2話で『農大物語 もやしもん』になり、最終的に5話までタイトルとロゴデザインが毎回変わっていきました。これは何か狙いがあったんですか? 一部では実在の農大からクレームが付いたからなんて話もありますが……。

石川:いや、単にタイトルを考え忘れていただけですね(笑)。ずっと『農大物語』という仮タイトルで進めていたのを、そのままにしてしまったというだけです。ただ、『農大物語』なんて、つまんなさそうじゃないですか? それで、もう載っちゃった後だったんですけど、変えたい、と。

――『もやしもん』というタイトルは石川先生が考えたんですね?

石川:いや、『農大物語』はイヤだったんですけど、さりとて代案はなかったので、編集部から送られてきた案の一番最初のヤツに大賛成しようということにしました。で、それが『もやしもん』だったんですよ。タイトル案のファックスが来た瞬間に電話して、「いいですよ、これです!」って(笑)。

――適当だったんですね。実は(笑)。

石川:それまで文句ばっかり言っていたので、ここらで1つ大絶賛しておこうと思ったんですよね。まあ、実のところタイトルなんてどうでも良いんですよ。大切なのは内容ですから。内容が良ければ、名前なんて後で付いてくるんです。

――確かにそうかもしれませんね。さて、『もやしもん』と言えば、欄外のアオリ文句が非常に個性的ですが、これはどういう形で作っているんでしょうか。まさか、これも先生が?

石川:欄外のアオリに関しては、編集の松下さんが担当しています。菌の説明以外は彼が書いてます。基本的にはおまかせなので、どんなことを書かれたかは、僕もイブニング発売後に読者と同じタイミングで知るんですよ。

――松下さんは、ほかの作家さんの単行本でも似たようなことをやられているんですか?

石川:いや、『もやしもん』だけだと思いますよ。それもたまたま、「本気でふざけてみよう」と彼が思った時期に『もやしもん』があったというだけで、この作品だからやったということでもないみたいです。

――単行本にまで収録されているという点も異例ですよね(注:一般的に、欄外アオリは単行本収録時にカットされる)。

石川:それも特に意味はなかったですね。なんの気なしに「掲載当時の雰囲気を残そう」ってやったら、思った以上にご好評をいただいたらしくて……。

――誤字もそのままなのは、やっぱり「掲載当時の雰囲気を残す」というコンセプトからなんですか?

(『もやしもん』担当編集者の松下さん登場)

松下:けっこうすごい誤字がそのままですからね(笑)。誤字じゃなくて、ウソなんかもありますし。「次回語ります」とか言って語らなかったりとか。たまに真面目な人に怒られるんですけど、その辺はお遊びということで。

――ちなみにお遊びというと、他の作品への「出張出演」も話題になりました。

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石川:厳密な意味での他作品の出張出演というのは、実は二ノ宮知子さんの『のだめカンタービレ』だけなんですよ。二ノ宮さんが『もやしもん』を読んでくださっているというところから始まって、二ノ宮さんの方からコラボしましょうと声をかけてくださったんですね。本当にありがたいことでした。

当時の『のだめカンタービレ』はすでに、ドラマ放送も控えて破竹の勢いでしたから、これはもうのっからせてもらおう、単行本を隣に置いてもらおうと(笑)。

その後、ほかのイブニング作品の多くにも登場させていただいたんですが、それらは基本的には私が描いたわけではなく、それぞれの先生がご自分で描いてくださったという形なんですよね。

―― 一時期、いろいろなイブニング作品をかもしてましたよね。

石川:『警察署長』(原作:たかもちげん先生/著者:やぶうちゆうき先生)や『銀座の番ねこ』(高梨みどり先生)など、いろいろな作品に登場させていただきました。『喰いタン』(寺沢大介先生)に登場した時は事前に聞いてなかったのでビックリしましたね。本当にありがたいことです。

――「他作品」ではなく、「他誌(ヤングガンガン/スクウェア・エニックス)」をかもしたこともありましたね。

石川:あれは、ヤングガンガンの編集長さんから何か描いてと言われたとき、「『もやしもん』でもいい?」と聞いたらOKがもらえたので描いたんです。

――それって講談社的には大丈夫だったんですか?

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石川:講談社はそんなことで怒るような小さな会社じゃないですよ、たぶん。松下さんはいろいろ調整が大変だったらしいですけど(笑)。

11月7日 新増刊誌『good!アフタヌーン』登場!!

モーニングから始まり、アフタヌーン、イブニングと拡大してきた講談社の青年コミック誌に新たな一冊が加わります。その名も『good!アフタヌーン』。すでに各所で大々的に告知が始まっていますから、皆さんはもうご存じですよね?

石川先生の新作『純潔のマリア』を筆頭に、全20作品=650ページという超豪華ラインナップが早くも話題に。その魅惑の作品群については公式ウェブサイトを参照のこと。「え? あの先生が?」と驚愕すること請け合いですよ!!

まんがファンならば興奮せずにはいられない、今年最大のビッグ&ニューウェーブ。 発売日は11月7日(金)。以後、隔月刊で定期刊行予定です!!

>>公式サイトはこちらから


上野の森でオリゼーたちに会える?
「菌類のふしぎ -きのことカビと仲間たち」開催中!!

現在、東京は上野公園の国立科学博物館において、菌類にスポットを当てた『もやしもん』全面協力の展覧会が実施中です。日本初公開となる太古のきのこや光るきのこなど、500点以上の標本や資料が大集合!! もちろん「もやしもん」キャラが、“リアルもやしもん”ワールドをナビゲートしてくれますよ。

開催期間は2008年10月11日から2009年1月12日まで。
「もやしもん」を通じて菌に興味をもった皆さん! これは行かねば!!

>>公式サイトはこちらから

石川雅之プロフィール

石川雅之(いしかわまさゆき) 1974年、大阪府生まれ

1997年、別冊ヤングマガジン掲載『日本政府直轄機動戦隊コームインV』でデビュー。1999年、『神の棲む山』でちばてつや賞準入選。2002年『週刊石川雅之』連載などを経て、2004年『もやしもん』イブニング誌上にて連載開始。農大という舞台や、菌が見える主人公などといったユニークな設定によって一躍人気作家に。極度にデフォルメされた「菌」のキャラクターは多くの女性ファンも獲得した(2007年にはアニメ化も実現)。2008年11月7日発売の新増刊誌『good!アフタヌーン』にて新作『純潔のマリア』を連載開始。


「まんがのチカラ」次回予告
隔週連載である『もやしもん』の月間ページ数はおよそ32ページ。それをほぼ一人で描き上げる石川先生が、なんとさらに隔月刊誌で新連載を開始します。厳しい制作スケジュールの中、先生が持ち続ける仕事へのこだわりとは何なのか。そして気になる新連載の内容は・・・。次回最終回は2008年10月29日(水)公開予定。お見逃し無く!

2008年10月24日