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三田紀房先生 その3

デビュー当時「あまり期待されていないポジション」のまんが家だったという三田紀房先生。今回はそんな状況から、いかにしてヒット作を量産し、人気作家の座に駆け上がったか、「ヒット作家・三田紀房」誕生秘話を語っていただきました。

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「1位を獲ろう」という新人編集者の熱意が産んだ名作

---- 先生のデビュー当時のお話を聞かせてください。

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三田:デビュー当初は、「ちょっと心にしみるいい話」が好きで、それが自分のスタイルだって思い込んでいた所がありました。自分でそういうふうに固定して考えていたんですね。

そして、幸か不幸か、打ち切りはわりと免れるタイプだったんですよ。なんとなくまとめて終わることを許されていたんです。これ、自分では隙を突いて生き残るテクニックを持っているつもりでいたんですけど、今にして思うと、単に期待されてなかったってことでしょう(笑)。

アンケートの人気ランキング競争にもぜんぜん興味がなくてね。まあ、最初から逃げていたってことなんですけど。とにかく、ガツガツとやるタイプではなかった。

---- 今からは全く想像できませんね。

三田:(最初のヒット作となった)『クロカン』を始めたときも同じですね。週刊誌に連載されていたんですが、月1回の掲載だったし、編集者も期待してなかったし、好きなものを描いて良いって言われたので、好きな高校野球を好きなように描かせてもらおうくらいの気持ちでした。

当然、編集長にも全然期待されていなくてね。その後、週刊連載に格上げされることになった時に初めてお会いしたんですけど、開口一番「いやあ、ああいうまんがはウチじゃウケないんだよね」って(笑)。

ところが、週刊連載化に際して担当になった新人編集者が、「1位を獲ろう」なんて言うんです。僕と組んで、何とか人気をとりたいって熱く語るんですよ。ちなみに、これは後で知ったんですが、彼は編集長に直訴して僕の担当になったらしいです。

話しているうちに僕もその熱意に負けて、じゃあどうすれば1位を獲れるのか、それを考えるようになりました。同じ雑誌で人気の作品を参考に、そのテイストを取り入れたりいろいろ試しましたね。

---- 具体的にはどんなことを?

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三田:当時、その雑誌で一番人気のあった作品を研究していたら、圧倒的にキャラクターの顔がデカいことに気がついたんです。もう、顔対決みたいな(笑)。

僕はそれまで、どちらかというと顔の小さな絵を描いていたんですが、これに気がついてからは、顔を大きく描くことを意識し始めました。そうしないとまずインパクトで負けちゃうんですよね。

もちろん、ただ大きく描けば良いってもんでもない。アップになってももつ顔でなければならないんです。ああ、魅力的なキャラクターとはそういう事なんだな、って学びました。

そして、そんなふうにいろいろやっていたら、ある時、ついにベスト3に入ったんですよ。

---- 初めてベスト3に入った感想はいかがでしたか?

三田:その回は、150km/hの剛速球を投げるピッチャーを仲間にしたはいいものの、それを捕れるキャッチャーがいない。仕方ないからキャプテンを猛特訓してなんとかしようってエピソードだったんですが、球への恐怖心を克服するために、牛のフンを球の代わりにキャッチさせるというメチャクチャな内容だったんです(笑)。

だから、こういうのがウケるのか! っていうのが率直な感想ですね。

それまでは、野球部内のもめ事とか、後援会とOB会のケンカとか、そういうものを好んで描いてきたんですが、ちがうんだな、と。もっとまんがチックなものじゃないとダメだってことが分かりました。そうするとちゃんと読者から反応がある。

---- やっぱり、読者からの反応があるってのは良いものなんですか?

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三田:反応がないと何も分からないですからね。きちんと反応があって、ランキングで数値化されると自信がつくんですよ。こう描けば支持してもらえるんだなってのが分��って、初めてスタートできる面もある。

その時の体験があったから、今の私があると思っています。当時の担当編集者が、はっきりと「1位を獲ろう」と言ってくれなかったら、今の私はなかったですね。

三田紀房プロフィール

三田紀房(みたのりふさ) 1958年、岩手県生まれ。

明治大学政治経済学部卒業後、一般企業に就職。直後、家庭の事情で退社し、家業の衣料店を兄と共同経営するが上手く行かず、賞金目当てでまんが家を志す。1988年、講談社「モーニング」で新人賞デビュー(当時30歳)。その後、高校野球まんが『クロカン』『甲子園へ行こう!』で注目を集め、2005年、大学受験をテーマにした『ドラゴン桜』で第29回講談社漫画賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞している。


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2007年03月12日