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『三田紀房先生』 その5

『クロカン』『甲子園へ行こう!』とスマッシュヒットを飛ばしてきた三田先生が、ドラマ化までされた大ヒット作『ドラゴン桜』で学んだのは、「まんがは、自分一人だけのものじゃない」ということ。大ヒットの経験を通して、見えたこと、感じたこと、それはどのようなものなのでしょうか?

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■二転三転?『ドラゴン桜』誕生秘話

---- 大ヒット作『ドラゴン桜』はどのようにして生まれたのですか?

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三田:『クロカン』が終わり、『甲子園へ行こう!』が終盤に入った頃、モーニング編集部からアプローチがあったんですよ。

モーニングと言えば、青年誌の中でも人気のある雑誌ですし、僕自身、デビューした のがモーニングだったということもあり、お話をいただいた時点で、次はモーニング でやろう、やりたいって気持ちになりました。

ただ、モーニング側にも条件があって、野球漫画以外のものをやってほしいと。『甲 子園へ行こう!』の合間を縫ってイブニングでシリーズ連載したプロ野球スカウトの 話がやや消化不良に終わったこともあって、ちょっと不安があったんですよね。

それで、編集者といろいろ打合せをした結果、あるアイディアを思いつきました。こ れなら面白くなるんじゃないかということで、さっそく資料を集めたり、専門家に取 材してコンサルタント契約までして、連載に向けて動き出したんですよ。

ところが、時間をかけて準備して、ネームも描いて、さあ、これでどうだってところ で、突然編集部から電話があってですね「すみません」と。

要するに、他の連載作品とネタがバッティングしていたらしいんです。担当と副編集 長がやってきて、あの話はできなくなったって言われて。

まあ、そこでゴネても仕方ないですから、じゃあ、どんなのだったら良いのか尋ねて みたんです。そうしたら「ゴルフ」か「学園もの」って言うんですね。それなら来週 からでも掲載できるからって。

---- その当時は、すでにゴルフをおやりになっていたんですか?

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三田:始めてはいましたけど、まんがで描くほど好きではなかったですね。でも、かといって「学園もの」にも抵抗があった。

実は当時、モーニング以外の雑誌からもいろいろなオファーを受けていたんですけど、 そのほとんどが「学園もの」をやって欲しいというものだったんですね。

要するに『クロカン』を学校に置き換えた話をやらせたかったみたいなんです。クロ カンみたいな先生がやってきて、大変な騒ぎが起きるっていう......。

ただ、僕の中には、学園ものがウケないと思う理由がいくつかあって、それを解決できないかぎり、絶対にやりたくなかった。それに、やるならもう思い切って「東大に100人いれるぞ!」って、バーンと言い切るくらい極端なものをやらないとダメだと考えていたんですよ。でも、その話をすると、編集者はみんな帰っちゃうんですよね。んなアホな、って(笑)。

ところがモーニングの副編集長はその話を聞いて「それは面白い! それで行きまし ょう!」と言う。そして、本当にやることになっちゃった。

そこで、さっそくどういう話にするか具体的に考え始めたんですが、幸いなことに、 担当者が東大卒だったんですね。それで、いろいろと話を聞いてみたんですが、彼に 言わせると「東大なんて誰でも入れる」ものらしいんですよ。彼は関西の超名門進学 校の出身者なんですが、その高校は極端なことを言えば学年でビリの人間でも東大に 入っちゃうほどの学校なんです。だから、そんなまんがは面白くなりっこない、って 言う。

でもね、そういう話を聞くと「え?」って思うじゃないですか。東大が簡単って言われるとその理由を聞きたくなる。そして、その理由を描けば単行本2巻くらいは持つかなって思ったんですよ。そこで、学校再建をテーマにすえて、最初のエピソードとして「東大は簡単だ」という話題を盛��込むことにしました。

---- そうして始まった『ドラゴン桜』ですが、初回の反応はどうでしたか?

三田:アンケートの結果を読むと、僕らが思っていた以上に「どうすれば東大に入れるのか知りたい」というものが多かった。そこで、すぐに方針転換をして、学校再建 はもう良いから、受験の話をメインにしようということになりました。

ただ、そうしたらすぐに人気が上がったというわけではないんです。週刊誌って、長 く続く人気作品が上位に定着しちゃっているので、順位を上げるのが難しいんですよ。 だから、人気を得るためにいろいろと工夫をしました。

----具体的にはどんなことをされたんでしょうか?

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三田:まずですね、担当編集者が書店の参考書売り場に単行本を置いて貰えるように交渉したんですよ。そしてその様子を新聞社や雑誌社に自分からアピールしたんです。「どうも最近、参考書売り場に置かれているまんががあるらしいぞ」って(笑)。

それで、興味をもってくれたところに取材してもらって、メディアに掲載してもらっ て、認知度を上げて行きました。結果、渋谷の大型書店に「東大に入れるま んがをください」というお母さんからの問い合わせが来るほどまでになったんですよ。

それで、これは行けるところまで行こうという話を編集者としました。雑誌でもテレ ビでも二人で出まくろうと。ブームを過熱させるべく、やれることは何でもやりまし たね。有名人とトークショウをしたり、これまでとは違う層の雑誌で「東大に入れる 子はどうやって育てるか」みたいなことを語ったり。

----ドラマ化の話もその盛り上がりを受けて?

三田:いや、ドラマ化の話自体はかなり早い段階からいただいていました。連載が始まって1ヶ月か、3ヶ月か、とにかく早かった。「学園もの」って、ドラマ化しやす いんですよね。セットとか、あんまりお金かかんなさそうじゃないですか。ですから、複数の制作会社さんから声がかかりましたね。

ただ、我々としても、どうせドラマにするなら、ある程度単行本が揃ってからにした かったので、このあたりはタイミングを図りつつ、吟味させてもらいました。

今はもう、ドラマも終わって、連載もクライマックスですから、特に何かを仕掛けたりはしていません。あ、でも、今度、ゲーム化 されますよ。

※ビーナ専用ソフト『できる子になる生活習慣 ドラゴン桜幼児編』/セガトイズより2007年3月3日発売、ニンテンドーDS専用ソフト『ドラゴン桜DS』/エレクトロニック・アーツより2007年3月8日発売

三田紀房プロフィール

三田紀房(みたのりふさ) 1958年、岩手県生まれ。

明治大学政治経済学部卒業後、一般企業に就職。直後、家庭の事情で退社し、家業の衣料店を兄と共同経営するが上手く行かず、賞金目当てでまんが家を志す。1988年、講談社「モーニング」で新人賞デビュー(当時30歳)。その後、高校野球まんが『クロカン』『甲子園へ行こう!』で注目を集め、2005年、大学受験をテーマにした『ドラゴン桜』で第29回講談社漫画賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞している。


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2007年04月09日