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『荒木飛呂彦先生』 その3

荒木飛呂彦作品と言えば、個性的なビジュアルも魅力のひとつ。
音楽や映画との関連性も指摘される、独創的な世界観はどのように作り出されているのか、その源流をたどって行くと、そこには少年時代の荒木先生が......。
そして少年から青年へ。デビュー直後の下積み時代についても回想していただきました!

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仙台の高校生を本気にさせた『キン肉マン』の衝撃

---- 先生の趣味ってなんですか?

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荒木:う~ん、趣味はないです。でも映画は好きですよ。映画館にもよく行きますし。DVDも含めると週に4~5本くらい観ています。特にホラーが好きですね。最近では『ホステル』(クエンティン・タランティーノ制作総指揮)が良かったかなあ。

---- やっぱりDVDは大きいプラズマテレビとか、ホームシアターとかでご覧になってるんですか?

荒木:いや、ブラウン管です。20年くらいずっと使ってるヤツで見てます。

---- それは意外です。高級ホームシアターとかで見ているような印象がありました(笑)。

荒木:なかなか壊れないんですよね。でも、ブラウン管の方が液晶テレビよりもぜんぜんキレイだと思います。

---- 音楽もお好きですよね。ジョジョのスタンド名などを見ている限り、かなり幅広い曲を聴いていらっしゃるようですが。

荒木:好きですね。仕事中はずっと聴いてますよ。

---- 最近だとどういう音楽を?

荒木:カントリー良いですよ。すごく良いですね。

---- やはり、まんがのアイディアを映画や音楽から得ようって気持ちがあるんですか?

荒木:ないけど、活かされているんじゃないかな。音楽なんかは、意味不明なのがたまに出てくるんですよ。自分の概念を越えたというか。

そういうのを聴いて、それが理解できた時、自分古くないな、オジサンじゃないなって思うようにしてます(笑)。

---- ファッションにもこだわりがおありのようですが......。

荒木:ファッション雑誌が好きなんですよ。VOGUEとかNumeroとか、表紙のカッコいいヤツが良いですね。あと、スティーブン・マイゼルとかピーター・リンドバーグとか、好きなフォトグラファーの作品が載ってるヤツもよく見ます。

で、見ているうちに「今年のファッションはこれだな」ってのがあって。去年と今年はやっぱ、ドルチェ&ガッバーナですね。

---- そういうビジュアルへの興味は、子供の頃から?

荒木:ああ、僕らの世代ってね、親が百科事典とか全書を必ず買うんですよ。僕も美術全集を買ってもらって、ずっとそれを見ていました。

中でもゴーギャンとピカソとかの絵が不思議で。何のためにこんな絵を描くんだろうって思ってましたね。レオナルド・ダ・ヴィンチとかは分かるんですよ。でも、彼らは「謎」だった。そこに引き込まれましたね。

音楽なんかもそうですけど、ビートルズのあとでプログレッシブロックなんかがあって......あれって今聴いても「なんなんだ??」って感じでしよ? ピンクフロイドとか、ホントにワケわかんないですが、じっくり聴いてみると良いんですよねえ。

---- 普通の子供が見るようなものにはあんまり興味がなかったんですか? 例えば『仮面ライダー』(石ノ森章太郎先生)とか。

荒木:ああ、『仮面ライダー』も謎でした。あのね、はっきり言って全然面白いと思えなかった(笑)。『巨人の星』(梶原一騎先生/川崎のぼる先生)とかに比べて、ストーリーが何を言いたいのか分からない。ずっと、うじうじうじうじ悩んでいるじゃないですか。なのに、すごい人気があって不思議だったなあ。石ノ森先生の『マンガ家入門』はバイブルですけど、あのまんがの良さはわからないですねえ、いまだに。

---- まんがはいつくらいから描かれていたんですか?

荒木:まんがは小学生の時から描いてます。ストーリー考えて、コマ割って、何ページかのまんがを描いてました。

その当時の友達がね、僕の絵を褒めてくれたんですよ。「上手いね」って。それがすごくうれしくってね。彼はまんがを描かないんですけど、編集者みたいにいろいろと助言してくれるので、描いたらまず彼に見せるようにしていました。今でも彼とは付き合いがありますよ。

---- それがまんが家・荒木飛呂彦のスタートなんですね。ところで、周りにはまんがを「描く」友達はいなかったんですか?

荒木:いなかったですね。当時は人前でまんがを読んでると馬鹿にされるんですよ。あと親と先生は怒るんです。そういう時代だったんですよ。だから隠れてやってました。

当然教えてくれる人もいませんから、『マンガ家入門』だけが頼りでしたね。

---- プロのまんが家になろうと思ったのはいつ頃ですか?

荒木:高校の時に、僕と同い年のゆでたまご先生(『キン肉マン』)がデビューしたんですよ。ショックでしたね、コイツら同じ高校生なのにって。

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将来プロのまんが家になれたらいいなって思ってはいたけれど、とりあえずは目先の高校生としての勉強をするじゃないですか? だから「え! そんなのアリ?」って感じでした(笑)。

それで、これは勉強なんかしている場合じゃないなーとかすごく焦りました。それで自分もすぐに投稿して、最終選考まで残ったんですけど落選して。どこが悪かったのを知りたくてジャンプ編集部まで持ち込んで......編集者にムチャクチャ言われて(笑)。

---- 具体的には?

荒木:基本的に全部独学でここまで来たじゃないですか? だから、僕、「ホワイト」って知らなくて。一般的にまんがでは描き文字の周りを読みやすいように白で抜くんですが、普通は描いた後にホワイトのインクで縁取りするんですよ。

ところが、当時の僕はそれを知らなかったんで、最初からそういうふうに描こうとしていたんです。でも、どうやっても微妙にはみ出しちゃうじゃないですか? そこを編集者に怒られてね。「はみ出しちゃうんですよ」って言うと「ホワイトも知らねぇのか!」って(笑)。

でも最後に、なんか面白いから直して新人賞に回してみようか、って。

---- そこからデビューに繋がっていくんですね!

(次回更新予定: 7/17(火)頃)

荒木飛呂彦プロフィール

荒木飛呂彦(あらきひろひこ) 1960年、宮城県生まれ。

『武装ポーカー』で第20回手塚賞準入選。1983年、週刊少年ジャンプ『魔少年ビーティー』で週刊連載デビュー。その後、『バオー来訪者』を経て、『ジョジョの奇妙な冒険』を連載開始、同誌で15年以上続く長期連載として人気を博した。また、それと平行する形で、歴史上の偉人にスポットを当てた『変人偏屈列伝』の原作も担当(一部は作画も担当)、その独自性のある展開や演出には熱心なファンが多い。現在は、ジョジョシリーズ第7部に相当する続編『スティール・ボール・ラン』をウルトラジャンプで連載中。


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2007年07月09日