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『若杉公徳先生』 その2

今回の「まんがのチカラ」は、若杉先生の連載デビュー作『アマレスけんちゃん』と、ヒット作『デトロイト・メタル・シティ』についての制作秘話をお届けします!

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『デトロイト・メタル・シティ』はお蔵入り作品のはずだった?

――先生の連載デビュー作『アマレスけんちゃん』(ヤングマガジンアッパーズ掲載)について教えてください。ああいった作品を描こうと思ったのはなぜなのでしょうか?

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若杉:高校生のときにアマレスをやってたんですよ。それで、その経験をまんがのネタに使えないかな、って。

――アマレスって、当時もマイナーなスポーツでしたよね。高校生の時、なんでアマレスをやろうと思ったんですか?

若杉:隣の宮崎県がレスリングとか柔道とかが強い県なんですよね。それでアマレスもけっこう盛り上がってて、仲のいい友達から、一緒にやろうって誘われたんです。それで、ひょっとしたら強くなれるかな、なんて軽い気持ちで入ったんですが......いやー、大変でしたね。厳しくてやめるとも言えず、結局卒業までやりましたよ。

――強くはなれましたか?

若杉:いや、もう全然。でも県3位とかにはなりましたよ。まぁ、盛り上がっていたとはいえ、人数が多くない上に階級別なんで、1回勝てば3位なんですけど(笑)。

――『アマレスけんちゃん』にはその当時のエピソードが活きているんですね?

若杉:活きているのかなぁ......まんがの中でほとんどレスリングしてませんからねぇ。それにレスリングって、ルールとかがややこしいんで、まんがにしにくいんですよ。だから実のところ『アマレスけんちゃん』をレスリングまんがにするつもりはありませんでした。最初から、モテない男子の学園生活を描くつもりでいたんです。

――人気はどうでしたか?

若杉:うーん、良くもなく、悪くもなく、って感じでした。

実は『アマレスけんちゃん』は連載ではなくて、不定期掲載の読み切り作品だったんですよ。がんばれば連載になるって話だったんですね。ところが8話までやったところでヤングマガジンアッパーズが廃刊になっちゃって......。

それで当時の担当さんがヤングマガジンに異動になって、ヤンマガの別冊に載せてもらったりしたんですが、「いい機会だから、いろいろな雑誌に持ち込んでみたら?」ってアドバイスをもらって......。

――そこで、現在『デトロイト・メタル・シティ』を連載中のヤングアニマル編集部との出会いがあったと。

若杉:そうですね。応対してくれた編集者がギャグまんが好きで、昔描いた作品を持ち込んだら面白がってくれて、すぐにネームを描くことになりました。

~ここで、ヤングアニマルの『デトロイト・メタル・シティ』担当、永島氏登場~

――若杉先生の第一印象はいかがでしたか?

永島:若杉先生は、会ったときから、でかくなるオーラがでてましたね。目を見ただけでこれはタダモノじゃないぞ、と(笑)。ただ、ちょっとダラダラした内容だったんで、面白い部分だけをピックアップして縮めれば、もっと面白くなるよねって話をした記憶があります。

――それででき上がったのが『デトロイト・メタル・シティ』に?

若杉:いや、最初は大学のサークルの話だったんです。ところが、それを永島さんが編集長に見せたら「全然ダメだ」って。

永島:もうひとひねりっていうか、ふたひねりくらいさせろって言われましたね(苦笑)。

若杉:で、次のヤツを考えましょうっていろいろ話し合った中で、音楽モノのギャグって面白いんじゃないか、って話になって......。まず、デスメタルやってる人が気弱だって設定を作って、そこからいろいろ膨らませていきました。

永島:最初は、主人公がオッサンって設定だったんだよね。

若杉:そうそう。それが、ちょっとずつ変わっていって、主人公の根���が生まれて、だんだん、『デトロイト・メタル・シティ』になっていくんです

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ところがですね、ある程度まとまったところで作ったネームを、ちょうど上京してきた弟に見せたら「全然面白くない」とか言うんですよ。それで、なんか自信なくなっちゃって、永島さんに見せるのもやめちゃったんですね。もういいや、って。

そうしたら、しばらくしてから永島さんから催促の電話があったんです。仕方がないので観念して送ったら「これはイケますよ!」って真逆の反応。

――弟さんが「全然面白くない」って言ったヤツを、そのままを見せたんですよね?

若杉:そうなんですよ。だから、弟の言うことを鵜呑みにしてお蔵入りにしちゃってたら、『デトロイト・メタル・シティ』は存在しなかったかもしれません(笑)。

――永島さんが催促しなかったら本当にそうなっていたかもしれませんね。ところで、そのネームは、編集長としてはどうだったんですか?

永島:爆笑でしたね。もう、大爆笑。こっちが引くくらいゲラゲラ笑ってました。

それで、とりあえず読み切りとして掲載することになったんですが、その結果はともかく、無条件で第3話まで載せてくれたんです。そしたら徐々に人気が上がっていって......その後、何本か描いていく中で、連載に昇格することができました。

若杉:最初のアンケートとか、本当にひどかったんですよ。表紙よりも下だった(笑)。載る前は永島さんと「5位以内を目指したいよね」とか言ってたのに。

――その状況でありながら掲載継続を決定した編集長の見る目もすごいですよね。ちなみに、人気を実感できるようになったのは、どのくらいからですか?

永島:第3話あたりでキャラが固まって、テンションもどんどん上がっていって、それにともなう形で、読者からも「クラウザーさん」を推す声というか、あがめる声っていうかが盛り上がっていったんです。アンケートに関しては、今でもそんなにすごいってほどではないんですが、1巻の後半あたりからは上位陣には食い込むようになりましたね。

――盛り上がりと言えば、ネットでの盛り上がりもすごかったですよね。

永島:「クラウザーさんが降臨したぜ!」とか、みんな、ああいうセリフを面白がって言ってみたいんでしょうね。使いやすいセリフが多いですから。

――そういうのは意図的に盛り込んでいたんですか?

永島:いやー、そこまでは考えてませんでしたよ。

若杉:いや、僕は考えてましたけど?(笑)

――この先、『デトロイト・メタル・シティ』はどういうふうになっていくんですか?

若杉:もちろん、それも考えてますし、そのためにこまごまと伏線張ってますよ。めちゃめちゃ広大なメタル・レジェンドを描ききるつもりです。

――......期待しています(笑)。ちなみに、『デトロイト・メタル・シティ』のほかに描いてみたい作品はありますか?

若杉:今は『デトロイト・メタル・シティ』に全力投球していたいので、ほかの作品については考えていませんが、連載終了後には違うギャグまんがを描いてみたいですね。たとえば、えーと、うーん......とにかく違うものを。

――でも、やっぱり主人公はこれまで通りモテない童貞男子なんですか?

若杉:いや、次は違いますよ! 次はヤリチンのギャグを描きます!

――先生、さっきからけっこう思いつきでしゃべってますよね......。

永島:完全に、思いつきでしゃべってますよ(笑)。

――ところで、若杉先生と言えば、インタビューやイベントレポート、単行本のあとがきなどで、かなり強烈で極悪なキャラクターとして描かれていますが、実際にお会いすると、ずいぶんと違う印象を受けました。

若杉:あれは、漫画賞の募集イラストで調子にのって巨人に描いたら後に引けなくなったというか......(笑)。インタビューなんかも、わざとしゃべり方まで変えてもらったり、イベントにもコスプレして参加したり、どんどんエスカレートしていきましたね。でも、さすがにやり尽くしたんで、そろそろ「普通の人」って認知してもらおうと思ってます。

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――じゃあ、これからは素顔で?

いや、顔は出さない方向で。ヘンなビデオとか借りられなくなっちゃうのは困る(笑)。

――最後に、今、まんが家を目指している若い人になにかメッセージをいただけますか?

若杉:とにかく描く、描き続けることが大事だと思います。ダメでもやめないで描き続けてほしい。描き続けないと出会いもないし、チャンスも生まれません。

――そうですよね。先生も山本先生や永島さんとの出会いがあったからこそ、今の成功があるわけですものね。

若杉:出会わなかったら、もっと良い人生を送れていたかもしれませんけどね!(笑)

[次回予告]
次回(2007年8月30日頃掲載予定)は、若杉先生にまんてんからの質問にお答えいただく「まんてん@知っとコラム」をお届けします。そして最後に耳寄りなお知らせも・・・。お楽しみに!

若杉公徳プロフィール

若杉公徳(わかすぎきみのり) 1975年、大分県生まれ。

1998年、ヤングマガジン月間漫画賞で奨励賞受賞。同年、ヤングマガジン増刊 赤BUTA『僕の右手を知りませんか?』でデビュー。その後、アシスタント経験を経て2004年に『アマレスけんちゃん』をヤングマガジンアッパーズに不定期掲載し、翌年からはヤングアニマルにてヘヴィメタルをモチーフにしたギャグまんが『デトロイト・メタル・シティ』を連載開始(現在も連載中)。過激なセリフや、80年代コミックのパロディなどといった独特のセンスが人気を博し、ネットを中心にカルトな人気を集めている。


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2007年08月23日