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『鬼頭莫宏先生』 その3

今回の「まんがのチカラ」は、いよいよ、あの衝撃作『ぼくらの』の登場です。今後の展開や、アニメ版・小説版への思い、そして最後に、鬼頭先生がまんがを描く上でのスタンスについても語っていただきました。

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ほかの人が描いているものを描いても仕方がないから

――次に現在、IKKIで連載中の『ぼくらの』について教えてください。

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鬼頭:『ぼくらの』は『なるたる』が終わる2年くらい前に、幻冬舎の編集さんから声をかけてもらって考え始めた作品なんですよ。当時、きくち先生が幻冬舎のまんが誌で連載していたので、そのつながりでお話をいただきました。ところが、企画を具体的に煮詰める前に、その編集さんがまんが部門を離れてしまいまして......。結局『ぼくらの』の話も立ち消えになってしまいました。

で、それから1年後くらいに、今度はIKKIの編集さんから声をかけてもらって、じゃあ『ぼくらの』はどうだろう、って流れですね。

――『ぼくらの』はロボットものですが、やっぱり一度はやっておきたかったんですか?

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鬼頭:もちろん、ロボットものをやってみたいという気持ちはありました。なによりネタとして「乗ったら死ぬ」ということを思いついちゃった以上、もうやるしかないですよね。

ロボットものは、本当にほぼ全てのパターンがやり尽くされていると思います。これが最後に残った穴なのかは分からないですけど、見つけた以上「それを埋めてやるぜ」というか、そういう気持ちもありました。

ちなみに、それをIKKIでやろうと思ったのは、アフタヌーンと何かあったわけではなく、単に当時、園田健一先生(『GUNSMITH CATS』など)が、『砲神エグザクソン』を連載していて、ロボットものの企画を出しにくかったという面もあります。

あと、これは言いにくいんですけど、当時のIKKIが比較的マイナー誌だったので、多少変なものをやっても許されるだろうと(笑)。

――連載開始直後の手応えはいかがでしたか?

鬼頭:いや、あんまりないです。それまでの作品も、読者の声や感想が、直接僕のところに届くってことはあんまりなかったんですよ。ただ、そのころからやっと「2ちゃんねる」を見るようになって、そこで、読んでくれている人には多少楽しんでもらえてるのかなというぐらいの感触はもちました。

――『なるたる』までの作品と比べて、『ぼくらの』は、ずいぶん優しくなったというか、救いがあるような印象をうけるのですが、そのあたり、なにか心境の変化があったりしたのでしょうか?

鬼頭:どうなんですかね? あまり「変わった」つもりはありませんね。

実際、今、頭の中にある企画のうちの1つを出したら「あ、やっぱり鬼頭は鬼頭だ。全然変わってない」って思われますよ、絶対。

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それと短編集を見ていただけると分かると思うんですが、僕はべつに残酷な作品を描きたいと思って描いているわけではないんですよ。ただ、展開としてそうするしかなかったので、そうなっただけなんです。

まあ......『なるたる』の頃は、いろいろなことがあって病んでいたので、その精神状態が反映されたのかもしれませんけど(笑)。

『ぼくらの』が変わったように見えるのは、『なるたる』でやったことはやらないようにしているからじゃないでしょうか。『なるたる』のテイストを『ぼくらの』に盛り込めと言われたら盛り込めるんですけど、今回はあえてやらないことにしています。

――なるほど。そうだったんです��。そして、『ぼくらの』もそろそろクライマックス。もう、すでに展開は決まっているんですか?

鬼頭:たぶん後半の方は、そんなにそれぞれのキャラクターにも話数がかからないと今は思っているので、1年か、1年半ぐらい(で最終回を迎えるん)じゃないかと思います。単行本で10巻強くらいですかね。なんにせよ、お話はもうほぼでき上がっているので、そこに向かって進んでいくだけですね。

――期待しています。ところで、この作品もまたアニメ化されましたね。ただ、連載中にアニメ化された関係上、独自の展開になりました。この展開に先生はタッチしておられるんでしょうか?

鬼頭:ストーリーが中盤からオリジナルになるということは、最初から織り込み済みでした。アニメの監督さんには、まだ作中で明かしていない裏設定などを伝えた上で、自由にやってもらっています。

ですから、最近の展開では「そうか、こういう事態もありえるのか」とか、そういう楽しみ方ができていますね(笑)。敵の操縦者が自爆するとかは、考えてなかったですよ。

――完全に一視聴者として楽しめている感じでしょうか?

鬼頭:さすがにそこまでは難しいですね。似た世界で、似たキャラクターが動いてしゃべっているのを見ていると「なんか違うんだよな」というモヤモヤとした違和感があったりもします。

あと、アニメの方で先行してネタバレしている共通の設定に関して、2ちゃんねるとかですこぶる評判が悪かったりして、「どうしよう」とか思ったり(笑)。一応、まんがの方ではきちんと機能するように仕掛けるつもりなので、ちゃんとランディングできると思うのですが......不安は不安ですよね。

ただ、オープニングテーマ(『アンインストール』石川智晶)には全面的に感激しています。素晴らしい歌を提供してくださった石川智晶さんには本当に感謝していますよ。......靴をなめさせていただきます、ぐらい(笑)。

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それと、アニメとは別に小説版も同時展開(小学館ガガガ文庫『ぼくらの ~alternative~』著・大樹連司)しています。こちらもネタ出しには全く絡んでいませんが、まんが版を読むと面白さが増すような、そういう構成になっています。以降の展開も聞いていますが、良い意味でまんが版の右斜め上を行っています。面白いのでぜひ読んでみてください。(第3巻発売中

――最後に、『ぼくらの』完結後のお話を聞かせてください。

鬼頭:さっきちょっと、先に話が出ちゃいましたけれども、今、頭の中に3つくらいのアイディアがあります。『ぼくらの』の後は、それをじょじょに世の中に出していきたいなとは思っているんですけど......やっぱりあんまり一般的じゃないというか(笑)。

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そのうち1つは、「絶対に売れませんから!」っていきなりお墨付きをもらっちゃうくらいの内容なんですが、ほかの人が描けるものを描いても仕方がないと思っているので、僕は自分にしか描けないものを描いていくつもりです。

今後も「隙間」を埋めるような作品を作っていくことになるんだと思います。

鬼頭莫宏プロフィール

鬼頭莫宏(きとうもひろ) 1966年、愛知県生まれ。

1987年、少年サンデーにて読み切り『残暑』でデビュー。1994年に『三丁目交差点 電信柱の上の彼女』が少年チャンピオン新人漫画賞入選。1995年、アフタヌーンで『ヴァンデミエールの右手』が四季賞準入選。同作品はその後、『ヴァンデミエールの翼』としてシリーズ連載化し、2年にわたり不定期掲載される。1998年には同誌において初連載『なるたる』をスタート。2004年からは『ぼくらの』で活動の場をIKKIに移す。『なるたる』『ぼくらの』は共にテレビアニメ化もされた。繊細で残酷な、ある意味で相反する要素を合わせ持つ作風が、コアなまんがファンを中心に高く評価されている。


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「まんがのチカラ」次回予告
次回(2007年10月29日頃掲載予定)は、鬼頭先生にまんてんからの質問にお答えいただく「まんてん@知っとコラム」をお届けします。先生にあんなことや、こんなことを聞いてきました。お楽しみに!

2007年10月15日