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『一条ゆかり先生』 その2

今回は、一条先生のゴージャスな交友関係に大注目!ハードボイルド小説家、北方謙三先生とのマル秘エピソードも飛び出します。さらに一条先生流のキャラクターの作り方にまで話は及んで、まんが好きには見逃せない内容もり沢山でお届けします。

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一条先生のゴージャスな人間関係

――さて、一条先生というと、有閑倶楽部の面々並にゴージャスな交友関係という印象があります。文庫版巻末の推薦文もすごいですよね。各界の著名人がずらりという感じで......あれは、どういうふうに書いてもらったんでしょうか?

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一条:書きたい、って言ってくれる人に頼んでいたら、ああなっちゃったのよね。たとえば千ちゃん(大江千里さん、文庫版1巻に掲載)は「すごいファンだ」っていうので、それで書かせてあげたのよ(笑)。実際に書かれた文章を見たら、炎が見えそうなほど熱い文章でびっくりしちゃった。

恩田陸さん(文庫版7巻に掲載)もそうね。集英社の編集者さんから「恩田さんは一条さんのすごいファンで、ぜひ推薦文を書きたいと言っています」って聞いたのよ。それでせっかくだからお願いしたら、とっても面白い文章を書いてくれました。

――文庫版の推薦文で一番意外な人選だったのは、なんといっても作家の北方謙三さん(文庫版3巻に掲載)なんですが、北方先生も『有閑倶楽部』のファンだったんですか?

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一条:北方さんとは直接面識はなかったんだけど、時宗さん(松竹梅時宗)を描いていると、ハードボイルドつながりで彼を思い出すのよね。それで、これはぜひ推薦文を書いてもらおうと思って、私の方からお願いしました。でも、編集者の段階で断わらちゃったのよ。「彼はそんなことはしない」って。

それで「くそーッ! 何でおまえが断わるんだよッ!」って怒っていたら、ある日、銀座のバーで、泥酔している北方謙三が"落ちている"のを見つけてね、それで、よし直接交渉だって「もしもし、もしもし、北方さん?」って声を書けたら、胸をムギュッってつかまれて。

その後、すぐに正気に返ったみたいなんだけど、こんなことした以上、もう書いてよね、と(笑)。

――ある意味、自業自得です......よね?(笑)。

でも、それで書いてくれた原稿がとっても面白くて! 私、涙流して笑っちゃった。彼もあれでギャグ的な文章を書くのに味を占めちゃったらしいの。「俺ってやるじゃん」とか思っているみたいよ?

――すごいお話ですね(笑)。ところで、意外と言えば、あだち充先生(文庫版9巻に掲載)が、推薦文を書いているのにも驚きました。珍しいというか、見たことがなかったので。

一条:充くんは、後にも先にも生まれて1回しか書いたことがないって言ってたわね。自分の作品にすら書かないとか言ってました。

――そんなあだち先生に書いてもらえるってのは、やっぱりすごいですよね。

一条:充くんはデビューする前からの知り合いなんですよ。武蔵野漫画研究会というサークルに一緒に参加してたのよ。そのあとも、お兄さんと知り合いってこともあって、年に1回くらいたまたま何処かでバッタリなんかしてて、それで、永い付き合いだし、読者も読みたいだろうって思って「ちょっと書いてよ」ってお願いしたの。

そしたらアイツ、「イヤだ」って即答するのよ。「私のためには何もしてくれないのね」って言ったら「うん」だって、感じ悪いわよね!(笑)

あ、でも、本当はけっこう優しいのよ? なんだかんだで結局書いてくれることになったし。あ、そういえばお礼の接待を約束してたんだけど、まだしてないわね(笑)。

――この年末にぜひ(笑)。さて、著名人のファンのお話をいろいろお伺いしましたが、一般のファンからも熱烈な支持を集めてますよね。やっぱりファンレターはたくさん来るんですか?

一条:今は女性誌に連載しているのでそれほどでもないんだけど、『りぼん』に掲載してたころはたくさんもらいましたね。小学生、中学生からいっぱいファンレターが来ましたよ。

――それはやっぱり「美童が好き!」とか、そういうかわいらしい内容なんですか?

一条:そういうのももちろんあるんだけど、中には、隣の席のなんとかちゃんがどうしたとか、まるで私に関係ないことが書いてあるのも多いのよね。しかも誤字脱字だらけで、思わず修正して送り返してやりたくなったり(笑)。

――それって、ちょっと清四郎っぽいですよね。

一条:そうかも。でも、清四郎だけじゃなくて、有閑倶楽部のメンバー全員、わたしの性格なのよ。割ときれいにみんな入ってます。

――それは、キャラクターを作るときに、全員に自分の性格を分けて当てはめていったってことですか?

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一条:そういうことを深く考えたわけじゃないの。そんなことを考えなくても、自分から生まれるものは、全て自分の中にあるのよ。だから、6人だけでなく、それ以外の登場人物も、みんな私の一面なんだと思います。だから、どこかである日、私が万作や時宗のようになっているかもしれないわね。

私は自分の中にあるものか、長い間観察していた人から引っ張り出して、自分の中で消化したもの、自分で納得したものしか描けないのよ。だから、どこか自分に似ちゃうんでしょうね。

――自分が興味を持てないものや人は描けない?

一条:そうです。そういう意味では「普通の人」が描けないのよね。自分としては平凡なキャラクターを作ったつもりなのに、みんなから「違う」って言われちゃうんですよ(笑)。

一条ゆかりプロフィール

一条ゆかり(いちじょうゆかり) 1949年、岡山県生まれ。

1968年、読み切り『雪のセレナーデ』が第1回りぼん新人漫画賞に準入選。1981年、りぼんにて『有閑倶楽部』を連載開始。1986年、同作が第10回講談社漫画賞少女部門を受賞。現在は活躍の場をコーラスに移し、オペラをモチーフにした『プライド』を連載中。『有閑倶楽部』に代表されるコメディタッチ作品と、『砂の城』に代表されるシリアスタッチの作品を描き分ける幅広い作風を誇る。『デザイナー』『プライド』では特に、女性同士の友情や憎悪の描写が高い評価を受けている。


「まんがのチカラ」次回予告
次回(2007年12月3日頃掲載予定)は、今回のキャラクター作りに引き続き、ストーリーの作り方や取材の仕方まで教えていただき、まさに一条先生流まんが術を大公開です。そして最後には、気になる『有閑倶楽部』の今後の展開も・・・。お楽しみに!

2007年11月26日