まんが☆天国 TOP > まんがのチカラ >  『一条ゆかり先生』 その3

『一条ゆかり先生』 その3

今回は、前回のキャラクター作りに引き続き、ストーリーの作り方や取材の仕方まで教えていただき、まさに一条先生流まんが術を大公開です。そして最後には、ファン必見の『有閑倶楽部』の今後の展開も語っていただきました。

<<『一条ゆかり先生』 その2

「体験」が「作品」になる一条先生流まんが術

――前回はキャラクター作りについてお伺いしましたが、ストーリーに関してはどうですか?

一条:どうしても、今ハマっていることがでちゃうのよね。だから、マメに私のまんがを読んでいるファンは、私が今、どんなことをしているか、何に興味を持っているか、どんなことに疑問を持っているかとか、分かるんじゃないかな(笑)。

――興味を持ったことに、積極的な取材をしてストーリーを練り上げていくんでしょうか?

一条:実は今まで、基本的に取材しないで描いてきたんですよ。描きながら必要になったことを、知ってそうな人に電話して訊ねるようなことはあったんですが、きちんと段取りをして、事前に取材するってことはなかったの。

むしろ、取材以外の、ふだんの生活や遊びの中でした体験を元にまんがを描くってことの方が多かったのね。たとえば『有閑倶楽部』香港編なんかは、当時、毎年香港に行ってて、写真も溜まったし、いろいろなものも見たり聞いたりしてきたから、もったいなくて始めたのよ(笑)。

――体験を無駄にせずに、まんがに還元してくというやり方なんですね。

プライド

一条:そうね。でも、今、そのやり方は封印しているのよ。今描いてる『プライド』(コーラスにて連載中)が、そのやり方で描けないまんがなのよね。うっかり、よく知りもしないのにオペラを描こうなんて思っちゃったものだから本当に苦労してます。描いているうちに、なんてマニアックな世界なんだ! って分かってきて、慌てて勉強したけど追いつかなくて......。

いくら創作とはいえ、ウソを描いてはいけないし、ウソを本当を感じさせるためには、細かい正確なデータが必要だから、『プライド』では、これまでとは逆にいろいろなところに取材するようになりました。ウィーンにはもう3回行ったし、ニューヨークでもがっつり取材してます。

でも、本当は「取材のための取材」はしたくないの。描くための取材って、私にとってはとても貧しいやり方なんですよ。どうしても目的のものしか見なくなるじゃない? 本当はその隣に、関係ないけどもっと楽しいものがあるかもしれないのに。

――目的にとらわれすぎて、回りが見えなくなっちゃうんですね。

一条:そう。だから、できれば、仕事とは関係なく面白そうだとおもって飛び込んで、そこで遊んだり、感動したりした、その経験をまんがにするっていう方法で描いていきたいの。その上で足りないところを調べたり、聞いたりするってやり方が私には一番良いんですよ。

――今回、連続テレビドラマ化に関わるという「体験」をされたわけですが、その中で何か面白いと思ったことはありましたか?

一条:テレビってやっぱりすごいのね。みんなドラマ化のことを知ってるんだもん。マンションの管理人さんに「明日から放送だよね」とか言われたり、ごぶさただった友達から電話がかかってきたり......。テレビの威力ってすごい。

――最後に、これからの『有閑倶楽部』がどうなるかを教えてください。いつまで続いて、どういうふうに終わるか気になってる人は多いと思うんですが......。

ichijo0009.jpg

一条:いつ終わるって、事実上ほとんど終わっているような感じもあるんですけど(笑)、これでおしまいですっていうようなことは、全然考えてないですね。

ただ、もしこれでおしまいにするなら、間違いなく6人の恋愛話になるでしょうね。

――6人全員の将来に決着をつける、と。

一条:そうそう。それを描いたらおしまいだなっていう。

――清四郎が悠理と結婚するっていう話(「剣菱家の事情の巻」���庫版6巻に収録)があったじゃないですか。あれが面白くて、ドキドキして読んだんですが、その後、進展がないですよね。先生の中では、誰と誰がくっつくとか決めてあるんですか?

一条:こないだアシスタントとその話をしたんだけど、可能性を考えたら、魅録くんと野梨子ちゃんがくっつく、これ以外の可能性は考えられないなって結論になりました。

――え? それはちょっと意外でした。

一条:だって、それ以外はお互いを異性として意識していないじゃない? そういうピュアなものが残っているのは野梨子と魅録だけなの。

美童と可憐はあんな感じだし、悠理は恋愛より食べ物だし、清四郎は恋愛に興味がないって言われるのが嫌だというだけの理由で彼女を作りますよ、っていうような性格じゃない? そうするとあの2人しか残らないのよ。

でも、むしろ恋愛というより、友情よね。養老院までずっと仲良しってのがあの6人なのよ。たとえ誰かが結婚しても、旦那よりこっちの方が大事とかいうような、そういう永遠の友達グループという形で描いてます。

――それは先生のあこがれでもあったりするんですか?

ichijo0010.jpg

一条:あこがれとまではっきりは言えないけど、こういうような関係性を持って、べったりでもなく離れてもいなく、ちょうどいい距離感を持ち、何をしても相手を受け入れる、そんな感じが良いのよね。しかも、ここまで個性が強くて、相手を思いやる気持ちなんてほとんどない子達が、結果としてなぜか、みんなのために一生懸命になっている。ファンの子に『有閑倶楽部』の何が良いかを聞くと、だいたい、みんなそういうところが好きだって言ってくれますね。

だから、本当は別に派手な事件なんかなくてもいいの。あの6人が毎日くだらないことを言いながら「つまらない、つまらない」って楽しく過ごしている話こそが、『有閑倶楽部』なのよ。

一条ゆかりプロフィール

一条ゆかり(いちじょうゆかり) 1949年、岡山県生まれ。

1968年、読み切り『雪のセレナーデ』が第1回りぼん新人漫画賞に準入選。1981年、りぼんにて『有閑倶楽部』を連載開始。1986年、同作が第10回講談社漫画賞少女部門を受賞。現在は活躍の場をコーラスに移し、オペラをモチーフにした『プライド』を連載中。『有閑倶楽部』に代表されるコメディタッチ作品と、『砂の城』に代表されるシリアスタッチの作品を描き分ける幅広い作風を誇る。『デザイナー』『プライド』では特に、女性同士の友情や憎悪の描写が高い評価を受けている。


「まんがのチカラ」次回予告
次回は、年末特番、なんとあの『ONE PIECE』の尾田栄一郎先生が登場です!連載10周年を迎え、ますます元気な海洋冒険活劇『ONE PIECE』の話はもちろんのこと、まんがへのこだわり、想いも語っていただきました。更新予定は、12月10日(月)。お楽しみに!

2007年12月03日