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まんてんセレクション

第1回 『君はスポーツまんがを読んで泣けるか!?』

木村カナさん(文筆業)

お薦めまんがの紹介コーナー「まんてんセレクション」。
今回まんがをご紹介くださるのは、初登場、木村カナ氏です。
あの名作『スラムダンク』から、近ごろ話題の『おおきく振りかぶって』まで熱く語ってくださいました。

■自己紹介、のようなもの?
 はじめまして、木村カナです。
 30代、文化系女子、まんが大好き!な物書きです。
 芸能人に似ているといわれたことよりも、「あのまんがのこのキャラクターに似ている」といわれた経験の方がやたらと多い私。
 ちなみに、今までに「似てる!」と指摘されたことがあるキャラは......

   ・いがらしみきお『ぼのぼの』(竹書房)のシマリスくん
   ・松本大洋『鉄コン筋クリート』(小学館)のシロ
   ・古谷実『行け!稲中卓球部』(講談社)の前野

ぼのぼの

 うーん、男の子キャラばっかりなんですよね、なぜか。決して嫌ではないのですが、内心、ちょっと複雑。もちろん、ネカマじゃありませんってば。
 「だって、涙が出ちゃう、女の子だもん!!」......そう、私は涙腺がとても弱い。まんがを読みながら本気で泣いてしまうこともあります。だからこそ、「泣ける」という表現が、近頃、安易に使われすぎているように思えるのです。涙が出ちゃう、というのは、特別で大切なことのような気がするから、少なくとも私にとっては。
 ということで、初登場の今回は、私が大いに泣かされたまんがをまずはご紹介したいと思います。思いっきり泣いた! 何度読んでも泣ける! という最高の作品を選ぼうと考えたら......真っ先に思いついたのは、この名作でした、やっぱり。

■『スラムダンク』(井上雄彦・集英社)

スラムダンク

   『スラムダンク』を最初に読んだとき、私はまだ高校生でした。
そして、『スラムダンク』ではじめて涙してしまったのは、三っちゃんこと三井寿が、体育館で大暴れした挙げ句に泣き崩れる、あまりにも有名な、あの名シーンを読んだときです。
 「安西先生......!! バスケがしたいです......」
 教室で授業中に隠れて読んでいたので、素直に泣くわけにはいかない状況、それなのに、涙が止まらなくて、本当に困りました。そして、三っちゃんのことが、大好きになってしまったのでした。
 その後、『スラムダンク』を完結まで読み続けましたが、何度泣かされたことか。最終巻が出たときには、年上だったはずの三っちゃんが、いつのまにか年下になっていましたよ......。
 『スラムダンク』は、主人公の桜木花道が、湘北高校男子バスケットボール部に入部するところから、夏休みの全国大会の結果までを、非常に丹念に描いています。ほぼ全試合がドラマチックな接戦。手に汗握るどころか、本気で鳥肌が立っちゃう。
 まんが史に残るまさに名作。未読のままにしておくのはモッタイナイので、読んでない人はもうとにかく読んで! ぜひ読んでください!

■『おおきく振りかぶって』(ひぐちアサ・講談社)

おおきく振りかぶって

   アニメ化されたこともあり、最近、話題になる機会が増えている、通称『おお振り』なのですが、私、この作品は『スラムダンク』に比肩する名作になるんじゃないか、という予感が早くもしています!
 『おお振り』は高校野球を題材にした作品。一応、主役はピッチャーである三橋であるはずなのですが、この子がトンデモに挙動不審の不思議ちゃん、という設定に意外性があって、いきなりおもしろいのです。新設されたばかりの西浦高校硬式野球部は、1年生だけで構成されたチーム。女性監督のモモカンのもと、エースに三橋を擁して、西浦高校が夏の甲子園を目指す、その熱い物語はまだ、はじまったばかり。
最新の第8巻で、地区大会の第一試合、主人公たちの西浦高校と、前年の優勝��である桐青高校との、雨中の激戦にようやく決着がつきました。いやあ、長い試合だったね......。この試合の終了を描いた見開きページには、目頭がカッと熱くなって、全身が総毛立ちました。
 それぐらいに猛烈な感動が不意に襲ってくる瞬間って、まんがを読んでいて、回数は少ないけれど確実にあるんですね。本当におもしろい、何度読んでも飽きない傑作に出会ってしまった、そのときだけの反応。名作の予感が大いに宿っている『おお振り』、これからの展開も楽しみです。要注目!

■スポーツまんが名作に共通する魅力とは?
 『スラムダンク』と『おお振り』の共通点として指摘できるのは、まず作者が自分が描いているスポーツに対して、深い愛情を持って描いていることではないでしょうか。そうした描き手の情熱が、作品を通じて読者にもひしひしと伝わってくるからこそ、経験や知識がなくても、共感を寄せながら、作品を楽しんで読むことができるのでしょう。
 また主人公が、いわゆるスポーツマンらしくないことも、共通の特徴です。桜木花道は赤髪リーゼントのヤンキーで、三橋はいつもイジイジオドオドしている超ネガティヴ思考のネクラ少年ですから、体育会系の部活動の世界では、あからさまに浮いてしまう存在のはずです。しかし、そんな彼らにこそ、実はとてつもない才能があって、はっきりいってしまえば天才である。努力する天才であると同時に、実戦の一試合ごとに目覚ましく成長を遂げる、進化する天才でもある。そのプロセスの鮮烈さが、作品のこの上ない魅力になっている、と感じます。
 魅力ということでいえば、主人公だけではなく、ほかの登場人物がそれぞれに存在感があることも、両方の作品で重要な要素になっています。バスケも野球もチームスポーツですから、敵味方を問わず、魅力的なキャラクターが割拠する群像劇になっていなければならない。その点について、『スラムダンク』は完璧にクリアしていたし、『おお振り』から例を挙げると、モジモジの三橋とはあまりにも対照的な、しっかりと落ち着いた性格であるキャッチャーの阿部や、明朗快活な四番打者の田島。彼らを含む三橋以外のキャラクターの活躍がすでに存分に光っています。

 こうやって凄い新作が次々と出てくるから、まんがを読むのって、いつまで経ってもやめられないんだなあ......。
 ということで、今後ともどうぞよろしくお願いします!

2007年09月13日