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第3回 『働きマンな彼女は好きですか?』

木村カナさん(文筆業)

 こんにちは、木村カナです。

 突然ですが、故・深作欣二監督によるやくざ映画の傑作、『仁義なき戦い』シリーズをご覧になったことはありますか? 映画についてはまったく知らない、という方でも、あの特徴的なイントロのテーマ曲は、おそらく耳にしたことがあると思います。テレビの効果音としてよく使われているので......。

 わたしはビデオで観たのですが、あまりの面白さに、シリーズ全五部作を観るだけでは飽き足らず、原作も関連書も読み、さらには、同時代の他のやくざ映画にも手を伸ばすほどにまで、あの時代の映画の雰囲気にすっかりのめりこんでしまいました。
 でもみなさん! 安野モヨコの『働きマン』(講談社)の登場人物の名前が、『仁義なき戦い』シリーズのキャストに由来しているって、ご存じでしたか!? 私は人から指摘されるまで、まったく気が付きませんでした。こんなに好きな作品なのに......あれー?

働きマン
週刊『モーニング』連載。
■菅野美穂主演のTVドラマも日本テレビ系列にて毎週水曜22:00から放送中。
>>特集サイト
●安野モヨコ・著
●講談社 既刊4巻
●定価・各540円(税込み)

 『働きマン』の舞台となっているのは週刊『JIDAI』編集部。ヒロインは松方弘子。そう、松方弘樹ですね! 編集部に所属するほかのキャラも、『仁義なき戦い』の主要キャストである、菅原文太・梅宮辰夫・成田三樹夫・田中邦衛......といった、そうそうたるメンツの名前をもじったネーミングが施され、女性キャラには女優の名前が割り振られて、と、松方弘子だけが、男優の名前なのは......?
 そう、その理由は、たぶん、ヒロインである彼女が「働きマン」だからでしょう!

 松方弘子、二十八歳、編集者。仕事モードがオンになると、男スイッチが入って、バリバリ仕事をこなす、とんでもなく有能な女性。結婚を意識しているカレシはちゃんといるけれど現在は独身で一人暮らし。今はとにかく仕事が面白くてしょうがない、「あたしは 仕事したな―――って 思って 死にたい」。物書きのわたしとしては、松方のこの気持ち、すごくよくわかる! わたしの場合は、仕事モードのスイッチが、自分では押せないのが悩ましいのですが(まるで『エアマスター』の坂本ジュリエッタのように......)、一度、スイッチが入ると、仕事が楽しくてたまらなくなります。そして、一仕事終わって、ふっと気が付くと、生活は荒廃、カラダはコリでガッチガチ、と......。
 まあ、松方弘子のように、仕事が週刊ペースじゃないだけ、はるかにマシかなあ。彼女ほど有能でもないし野心的でもないしなあ。でも、大手出版社の社員だから、松方の給料は残業代も含めるとかなり高額のはず! 逆にフリーゆえに自由だけどいつも貧乏な自分が悲しくなる!......などという個人的な煩悩はさておき。

 『働きマン』で描かれているのは、主に松方弘子の周辺であり、出版業界がメインではありますが、他の業界、あるいは、一般の会社でも、ありがちなのでは、と思われる場面を、うまく作中のエピソードにしています。群像劇の傑作として名高い『仁義なき戦い』シリーズをふまえているだけあり、実に見事な作劇。誰が読んでも面白くて楽しめる! リアルであると同時にエンターテイメントな「仕事」まんが、それが『働きマン』です。
 昨年のアニメ化を経て、さらに、10月からは菅野美穂主演でテレビドラマ放映開始!

 松方弘子と同様、仕事に充実感を見出したい。なのに、いつも、失敗ばかり。そして、ラブも捨てがたい。できれば寿退社もしてみたい。でも、それ以前に、カレシが欲しいよー! そんな生々しい心の叫びでいつも空回りしているのが、山田紗依、二十三歳、契約社員。モテるイイ女を目指して、スチュワーデス改め客室乗務員(キャビン・アテンダント)という憧れの職業になれたものの、薄給だし、過酷な肉体労働だし、逆風だよ、人生が!

CAとお呼びっ!

 そんな今ひとつサエないサエ、彼女がヒロインなのが、花津ハナヨ『CAとお呼びっ!』(小学館)です。このまんがも、昨年、観月ありさ主演でテレビドラマ化されました。
 松方弘子ほど有能ではなくて、松方とは違った意味でトラブルメーカー、時には無能呼ばわりされたりもしてしまう、不器用なサエ。しかも、言動がかなり下品なので誤解されやすい......。でも、本当は優しくて真面目で純粋。だから、どんな逆境にも決して負けないし、挫けない! いつも制服、でも、心は錦! そんなサエが、ちゃんと努力を積み重ねて、CAとして頑張って成長していく姿に、思わず共感してしまうし、好感が持てるし、読んでいると実に励まされます!

 このふたつの作品、両方とも、少女まんが出身の女性作家が、真摯に働く女性をヒロインにして、青年誌に発表したまんがです。つまり、仕事の現場における女性の感覚を、主に男性読者に向けて描いています。常日頃、感じることですが、そのあたりの認識って、男女の間でけっこうギャップがありますせんか......? いつも読んでいるまんが雑誌で、こうした作品を読むことで、こっち側(女)の事情を少しは学習してほしいのに、と思うことも。
 仕事と恋愛、どっちも大切にしたい! ファッションにもメイクにも下着にまでも気が抜けない! その上、オンナならではのカラダの弱点もいろいろ! ああ大変だ大変だ! そんなさまざまな苦労を抱えながら働いているのですよ、女の子って。あなたの同僚も、友達も、カノジョも、たぶん......。

 それでは、また次回!

2007年10月15日