まんが☆天国 TOP > まんてんセレクション >  第7回 『オタクは女子の秘かな愉しみ?』

まんてんセレクション

第7回 『オタクは女子の秘かな愉しみ?』

木村カナさん(文筆業)

 こんにちは、木村カナです。

 安野モヨコの『監督不行届』(祥伝社)を読んでいて、思わずハッとさせられた一コマ......
 「マンガでよくあるあの音を 実際に口で言う人達......それがオタクです」

 まんがやアニメの中で感情を表現する擬音、例えば「ぎくっ」「アワアワ」「ガガ~ン!!!」などを、無意識に使用してしまう、現実に発音してしまうのが「オタク」である、という、この定義はあまりにもキラーン!な、鋭い洞察だと思いました!
 そうか。見た目(具体的にはファッションセンス!)や、コミケに行くか行かないかとかの行動パターンとは関係なく、会話をすれば、話した内容とは関係なく、オタクの素養があるかないのかが、お互いにすぐにわかってしまうのは、そのせいだったんだ!
 そして、わたしも、普段の会話の中でそうしたまんが的な表現をしばしば使っている自分に、あらためて気が付いたのでした......。ああ、わたしもオタクなのかやっぱり、と。
 ここ数年、『となりの801ちゃん』(小島アジコ/宙出版)の大ヒットをはじめ、オタク女子、特に男性同士の恋愛を描いた作品(BLあるいはやおいと呼ばれる)を愛好する、いわゆる「腐女子」が描かれているまんがが増えてきたような気がします。たとえば、『週刊少年マガジン』に連載中で、アニメも大人気の『さよなら絶望先生』(久米田康治/講談社)にも、藤吉晴美という腐女子キャラが出てきて、その妄想力をネタにされていますね......。
 今回は、オタク女子が登場するまんがの中から、注目を集めている2作品を取り上げたいと思います。

『妄想少女オタク系』(紺條夏生/双葉社)

妄想少女オタク系
『コミックハイ!』にて連載中
映画公開中
●紺條夏生介・著
●双葉社 既刊3巻
●定価 630円(税込)

 タイトルからおわかりいただけるようにオタク女子がヒロイン!
 主人公の浅井留美は高校1年生。教室の中では地味で目立たない存在です。
 そんな彼女は実はディープなオタク女子。しかも、同じクラスの男子がじゃれあってるのを眺めていて、彼らが愛し合っているという妄想を脳内で爆発させてしまうほどに重度の腐女子!
 ところが、ごく普通の男子・阿部が、自分が彼女の妄想の対象にされていたとも知らず、それどころかその妄想がきっかけになって、いつのまにか留美に恋心を......!?
 松井の友人でイケメンにしてモテキングの千葉、そして実は浅井と同レベルのオタクである腹黒巨乳美少女の松井も絡んで、なんだか混線気味の4人の関係は一体、どうなるの?!というラブコメディです。
 『妄想少女オタク系』の浅井には、『げんしけん』(木尾士目/講談社)の荻上の悲劇や、『アカルイミライ』(きづきあきら/小学館)の平松の狂気のような、オタクゆえの暗黒面がまったくありません。素直を通り越した天然ボケという設定なのです。そのせいか、全体の雰囲気がピュアでポジティブなのでとても読みやすい。
 オタクだからという理由でいじめられた過去を背負う松井が、高校デビューに成功し、さらには、浅井と出会ったことで自分本来のオタク趣味も満喫できるようになる、そんな松井と浅井の女の子同士の友情もしっかり描かれていて、かわいい......。
 さらに、忘れてはならないのが、3巻でクローズアップされる塚本先輩。同性である千葉に想いを寄せつつも、下級生である4人の関係を温かく見守る......その漢らしさがたまらなく切なくてイイ!
 青春ドラマとしてもちゃんと面白いなあ、と楽しく読んでいたら、なんと、実写映画化されて一気に話題作に! 予告編を見ましたが、阿部役の男の子が、ちょっと情けないところのある阿部を演じるにはもったいないぐらいにカッコイイではないですか......と思ったら、ミュージカル「テニスの王子様」に出演している俳優さんだとのこと。なるほどのナイスキャスティングですね!

『フラワー・オブ・ライフ』(よしながふみ/新書館)

フラワー・オブ・ライフ
『ウィングス』にて掲載(連載終了)
●よしながふみ・著
●新書館 全3巻
●定価  546~557円(税込)

 白血病から生還した花園春太郎を主人公に描かれたハイスクール群像劇です。
 2巻以降に登場する武田さんは、真っ黒なロングヘアーでメガネっ子。実は彼女は自作のまんがをこっそりと自分のノートに描き溜めていました。それをたまたま発見したのが、「最終形態オタク」の真島だったために、彼女の生活が一変してしまいます。
 自分の目的のために、古式ゆかしい少女まんがだった武田の作品を、これが今の売れ線だと主張してサラリーマンBLに無理矢理描き直させるサディスト真島! 同じ貞子風の陰気者キャラでも、『君に届け』(椎名軽穂/集英社)の風早×爽子とは、まったく違うとんでもない方向にどんどん暴走していく真島×武田......! こちらはふたりともオタクで、しかも、ふたりともかなりアクの強い性格ですから、まあ、しょうがないか。こっちはこっちでオモシロイから許す!
 武田は、結局、主要キャラである春太郎、真島、それから春太郎と合作でまんがを描くようになる三国が所属している漫画研究会に入ります。『フラワー・オブ・ライフ』の後半には、まんがを描くクリエーターとしての春太郎・三国たちと武田の姿があったり、武田さんが仲良くなった女の子たちと初めて買い物に行くエピソードがあったり......そうして交差・並行するそれぞれのドラマが、何気ないようでいて、ひとつひとつがさりげなく心の琴線に触れてくる。
 『フラワー・オブ・ライフ』という作品の魅力はまさしくそこだと思います。このレビューを書くために全4巻を読み返していたら、ラストシーンで思わず涙がこぼれました......。『このマンガを読め!2008』(フリースタイル)のベストテンで第3位を獲得。その評価に納得の傑作です。

 それでは、また次回!

2008年01月15日