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まんてんセレクション

第8回 『世にも奇妙な吉祥寺』

木村カナさん(文筆業)

 こんにちは、木村カナです。

 東京都内の好きな街・住みたい街ランキングで、必ず上位にランクインしている街と言えば......「吉祥寺」! わたしにとっても、吉祥寺は昔からの憧れの土地です。

グーグーだって猫である
『本の旅人』にて連載中
■映画化決定!
●大島弓子・著
●角川書店 既刊3巻
●定価 1155円(税込)

 大島弓子のエッセイまんがの中に描かれている、吉祥寺の環境と雰囲気の良さ、駅前で何でも買えるという便利さが羨ましかったし、吉祥寺に住んでいたら、井の頭公園でお買い物帰りの大島弓子とすれ違うチャンスがあったりもするのかな? と胸をときめかせていた上京当時。現在のオオシマ先生は、かつてのエッセイまんがに登場していた井の頭公園脇のマンションからは、すでに転居されているそうなのですが......。でも、吉祥寺がわたしにとって憧れの街であることには今も変わりがありません。

「栞と紙魚子」シリーズ(諸星大二郎/朝日新聞社)

栞と紙魚子の生首事件
『ネムキ』にて連載中
TVドラマ放映中
●諸星大二郎・著
●朝日新聞社 既刊5集
●定価 795~800円(税込)
文庫版『栞と紙魚子』も発売中
既刊3巻、各600円(税込)

 現在、放映中のテレビドラマ『栞と紙魚子の怪奇事件簿』の原作、諸星大二郎の「栞と紙魚子」シリーズは、少女向けホラーまんが誌『ネムキ』に連載された作品。
 その舞台となっている「胃の頭町」(いのあたまちょう)には、「胃の頭公園」があったり、「胃の頭」という私鉄の駅があったり、「肝田川」「股川上水」が流れていたり......と、吉祥寺~三鷹周辺がモデルになっています。

 各話のヒロインである女子高校生・栞と紙魚子(しみこ)は、「胃の頭町」に住んでいる仲良し2人組です。好奇心旺盛な美少女・栞の父の店は「書店」、読書好きで博学のメガネ女子・紙魚子の家は古書店「宇論堂」。ちなみに紙魚子の名前の「紙魚」とは、紙を食害して本をボロボロにしてしまう害虫のことなんです。そんな変な名前を娘につける古本屋の親の気が知れない......!
 こうした基本設定が表しているように、「栞と紙魚子」シリーズは、本に関係する不思議かつ不条理な事件に、栞と紙魚子が次々と巻き込まれてしまう短篇集です。

『おろち』(楳図かずお/小学館)

 テレビドラマの第1回『栞と紙魚子とジャックとエミリー』の元になっていたのは、単行本第1集である『栞と紙魚子の生首事件』に収録されている「殺人者の蔵書印」。栞が、偶然に手にとって読み始めた一冊のミステリ古本をきっかけに、殺人事件に巻き込まれてしまう、という、ホラーでオカルトなお話です。
 普通の人々と変人奇人、お化けだの幽霊だのが当たり前のように共存していて、怪異が頻発、クトゥルー神話(ラヴクラフト)やバベルの図書館(ボルヘス)などの怪奇幻想の世界とも地続きで繋がっている――怖いんだけれども、なんだかちょっと面白くて、時々笑い出しそうになっちゃう、マジカルミステリーな「胃の頭町」ツアーを、ぜひぜひ堪能してください......! 「テケリ・リ! テケリ・リ!」

 わたしと諸星大二郎作品の出会いは小学生のとき。
 「西遊記」を大胆に解釈・翻案した『西遊妖猿伝』(潮出版社)から読み始めました。これは諸星大二郎がライフワークとして位置付けている作品ですが、読み始めて以来、かなりの年月が経過したものの、孫悟空たちの一行は、未だに天竺に辿り着いていなかったりします......(第二部河西回廊篇までで連載が中断中)。2回実写映画化された「妖怪ハンター」シリーズやSF長短篇など、個性的で独自な作風に定評があり、近年は小説も執筆・発表されている諸星大二郎先生ですが......諸星先生、『西遊妖猿伝』の続きも、いつかはどうぞよろしくお願いします......!!!

おろち
『週刊少年サンデー』にて掲載(連載終了)
映画化決定!
●楳図かずお・著
●小学館 ベスト版『UMEZZ PERFECTION!』にて全4巻
●定価 1200円(税込)

 吉祥寺、そして、まんが、と言えば、絶対に忘れてはいけない巨匠......それはもちろん、楳図かずお!!!
 吉祥寺を中心とした中央線沿線の各地で、しばしば目撃されることで有名な楳図かずお先生は、トレードマークである原色のボーダーを基調としたファッションとモジャモジャ頭という、その特徴的なルックスが、ファンのみならず、一般の人々の注目も集めるため、目撃情報が非常に多いらしい、とのことですが......残念ながらわたしはまだそのお姿を拝見したことがありません。よっぽど運が悪いのか、あるいは、まるでご縁がないのか。だとしたら、実に寂しく、悲しいことです。

 楳図かずお作品といえば、先日、名作の1つである『おろち』の実写映画化が発表されました。謎の美少女・おろちを主人公とする連作である「おろち」。包帯を巻いた右手に不思議な力を宿したヒロイン・おろちは、運命に翻弄される人間の悲惨な姿を、いつも優しく時に厳しく、傍らからそっとずっと、見守り続けているのです......。

 今年公開予定の映画の原作は、「おろち」シリーズの第1話である「姉妹」。
 おろちが嵐の夜に入り込んだ龍神家。その大きな屋敷にはおろちも驚いたほどに美しい姉妹がたった2人きりで住んでいました。龍神家にはどうやら忌まわしい秘密があり、姉妹はそれを激しく恐れているらしい。おろちがその秘密に接触しようとした途端に、いきなり絶叫、悶え苦しみはじめる姉妹! まさに、楳図かずおならでは、としか形容しようのない、その恐怖の表情自体が、もうめちゃくちゃに怖いのです......!
 姉妹が恐れていたのは自分たちの血筋。龍神家の女は、ある年齢に達すると、その美貌は失われてしまい、まったく別の醜い姿になる......!怯える姉妹の哀れさに同情したおろちは、姉妹の運命を見届けることを決意し、お手伝いとして、龍神家で暮らしはじめます。そして、おろちが目撃した、姉妹の凄惨な末路とは?!
 そこに描かれている、目に見える表情や出来事が怖いのはもちろんなのですが、本物の恐怖、本物の残酷、本物のグロテスクなものとは、決して直接的には描かれておらず、だからこそ、ますます怖さが増す......。
 うわあああ、楳図かずおの絵のインパクトはやっぱり強烈すぎる!
 1度、目に入れてしまったら、もう一生、忘れられないような気がする!
 夢の中にまで出てきそうな気がする!
 実際に、楳図かずおのまんがの1コマを、真夜中にふと思い出してゾーッと総毛立った、そんな経験がありませんか......?
 でも、そんな恐ろしい楳図先生のまんがが好きで、怖がりながらもついつい何度も読んでしまう......そんなわたしに、吉祥寺の街を歩く楳図先生のお姿を目撃するチャンスは、いつになったら巡ってくるのでしょうか?!

 それでは、また次回!

2008年02月04日