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まんてんセレクション

第14回 『まだ間に合う! 君よ、文化部で変われ!!!』

木村カナさん(文筆業)

 こんにちは、木村カナです。

 新入学、新学期、新社会人......そんなみなさんも、4月からはじまった新しい生活にようやく慣れた頃でしょうか?

 新入生のみなさん、所属する部活やサークルはもうお決まりですか? 運動部・体育会系? 羨ましいです! あらら、決まってない? 帰宅部希望ですか? え?文化部にとりあえず入ってみたけれど、つまらないからもう行きたくない?......そんなあ、なんてもったいないことを!
 甲子園に出場する高校球児をはじめ、スポーツで活躍している若者はマスコミに大きく取り上げられますし、彼らの姿はわたしの目にもとても眩しく見えます。でも、スポーツじゃなくても、何かに夢中になっている人、何かに真剣に打ち込んでいる人は、みんなそれぞれ輝いて見える! 文化部には運動部のような見せ場がない?......そんなことはないはずです。まんがには「まんが甲子園」が、クイズには「高校生クイズ」があるじゃないですか! それ以外にも発表の場はいくらでもあります。もしも、そういう場がないのならば、自分たちで作ってしまえばいいのです。
 運動部と同じぐらいに文化部も熱い! その上、部活動での思いがけない出会いが、今までのあなた自身をすっかり変えてしまうかもしれない......。今回はそんな文化部の活動を描いたまんがをご紹介します。

ひとひら(桐原いづみ/双葉社)

ひとひら
『コミックハイ!』にて連載中
●桐原いづみ・著
●双葉社 既刊5巻
●定価 630円(税込)

 ひとりでは何も決められない、極度のあがり症のせいで失敗ばかり、緊張すると声が出なくなってしまう......いつも自信が持てなくて、びくびくしている自分が本当はとても嫌、だけど、自信を持って行動している自分なんて想像もできない。『ひとひら』のヒロインである麻井麦(むぎ)はそんな内気で気弱な女の子です。
  親友にくっついて芸術高校に入学したものの、やりたいことが見つからなかった麦が、突然、演劇研究会からスカウトされます。演劇研究会の個性豊かな3人の先輩たち。実は、彼らは合格発表のときに麦を見出していました。合格の喜びのあまり、思わずその場で叫んでしまった麦の声、その声のはつらつとした魅力に、彼らはすでに惹きつけられていたのです。普段の麦の様子からはわからない、麦自身もまったく気がついてない、その声そのものが、麦の秘められた才能。『ガラスの仮面』(美内すずえ/白泉社)のキャラならば、白目になって「麦......恐ろしい子!」ときっと呟くような。
 なりゆきに押し流されて演劇研究会に入部させられてしまった麦。しかし、演劇研究会の活動を通じて、グズでノロマなドジっ子だったそれまでの麦が、少しずつ変わっていきます。先輩たちが演劇にかけている情熱を知り、どうして自分が選ばれたのかを知ることで、自分も演劇をやりたい、演劇によって今までと違う自分を見つけたい、という思いが麦の中で強くなっていく。ところが、一番大切なはずの文化祭での公演で、初舞台をどうにかこなしたばかりの麦が、主役を演じることに決まって......?!
 「私には無理です!できません!」
 何度でもそう言い続け、さんざん苦しみながらも、一生懸命に頑張っている麦の姿がどうしようもなくけなげでかわいいのです。そして、麦が主役をつとめ、トラブルを乗り越えて、朗々とその魅力的な声を響き渡らせる文化祭の「ひとひら」の上演シーンは本当に感動的! 思わずもらい泣き!!!

とめはねっ! 鈴里高校書道部(河合克敏/小学館)

とめはねっ!
『週刊ヤングサンデー』にて連載中
��河合克敏・著
●小学館 既刊3巻
●定価 530~540円(税込)

 『とめはねっ! 鈴里高校書道部』の舞台は高校の書道部。
 書道まんがを成立させるために必須の「書」ですが、『とめはねっ!』では、「書」をスキャンした画像を、作中に登場させています。つまり、まんがの中で、依頼を受けたプロの書家の手による、あるいは、募集に応じて読者から寄せられた「書」が、登場人物が書いた「書」として、ほとんどそのまま使用されているのです。手書きの「書」が、やはり手描きの部分が多い「画」の中に取り込まれている、その手法を可能にしているのはデジタル処理である、というのは、よく考えてみるとちょっと不思議な感じがしますね。
 『とめはねっ!』の主人公は、新入生男子の大江縁(ゆかり)。小学2年から中学卒業までを、カナダのプリンスエドワード島(『赤毛のアン』の島ですね!)で過ごした縁は、クラブ活動説明会で目にした書道部のデモンストレーションに興味を持ちます。小中学校で習字の授業を受けた経験もない縁には、そこで披露された「書」の世界が、とても新鮮に感じられたのです。
 その興味が書道部強制入部という思いがけない結果に?! さらには、縁がひそかに憧れていたクラスメイトの美少女、望月結希(ゆき)も、行きがかり上、柔道部と書道部を兼部することになって、にわかに賑やかになっていく書道部。個性的な先輩や先生たちを通じて、初めて体験する「書」の世界に、いつのまにか引きこまれていく縁と結希。彼らと一緒に、読者も今まで知らなかった「書」の世界を知ることができる、それが『とめはねっ!』という書道まんがです。
 帰国子女なのになんだかイケてない男子、という周囲の反応に、最初は戸惑っていた縁。でも、書道部の活動をする縁はとっても楽しそうで、ひと安心。経験のない書道に真摯に打ち込む縁が、意外な才能を発揮しはじめる姿に、読者も楽しくなる。しかも、憧れの望月さんと一緒に部活動! このあたりはすっかりラブコメモード。まだ始まったばかりの縁の高校生活、これから一体、どうなっちゃうの......?!

 青春は一度だけ、その一瞬一瞬の大切さを、いつも切り取って表現しているのがまんがというジャンルだと思います。その時期をすでに通り過ぎてしまったわたしのような読者は、それをノスタルジーとしてしか振り返れない。でも、たった今、その時期にいる読者ならば、まんがのような輝かしい青春を、今からでも選び取ることができると思うのです。
 まんがみたいにうまくいくわけがない? まんがのキャラクターみたいな才能なんかない? 
 そうかもしれない、だってまんがはフィクションだもの。でも、現実は、まんがの中みたいにうまくいかないから面白くて、だから、まんがの中よりもきっともっとずっと刺激的!

 それでは、また次回!

2008年05月12日